1.運もうんも良くも悪くも
「ぎゃーーーーー!!!!」
僕は情け無いが今起こった出来事につい叫んでしまった。
まあ、キャーー!!って叫ばなかっただけ良かったと思おう。
否、現状は良くないけど。
「うわ〜…南雲、災難だな。」
「うぅ…新しく買った靴即ダメにした…」
先日買ったばかりの靴に茶色の臭いあれ。
そう、犬のうんこを今さっき踏んでしまった。
夜ご飯何にしようかなーって考えながらぼんやり歩いていたから思いっきりグニュって…!!
「…ついてない。」
「いや、ついてるだろ、うん(こ)が。」
フォローしてくれている友人の桜井翔也に背中をポンポンと優しく叩かれて沈んだ心を持ち上げるように視線をうんこ付きの靴から顔を上げると見たことのない世界が広がっていた。
「………は?…え????」
さっきまでいた場所は散歩中の犬とすれ違うし、田んぼだって少し先に見えるような場所だったはず。
確かに都会というより田舎寄りの場所だけど森の中に踏み入れた記憶は無い。
それに桜井はどこ行った?
「にしてもここはどこなんだよ…」
ぐるっと周りを見渡すと見覚えのある顔。
先程背中を優しく叩いてくれた友人に似た羽根の生えた小人が頭の上を飛んでいた。
見た目は大分縮んでるし羽根はあるけど本人だと直感で思った僕は恐る恐る声を掛ける。
「……桜井だよな?なんつー格好してんの?」
「そうだよ…にしても南雲、うんこの時と違って冷静なんだな。」
桜井は楽しそうに目を細めて笑うので少しつられて笑い、そして僕はまた足元を見る。
うん、まだ靴にうんこはついたままだ。
「どう?この場所なかなか良いだろ??」
「ん?え、桜井がしたの?その…場所交換。」
「そうだよ!良い場所だろ!!」
「えぇ…場所よりも靴のうんこどうにかして欲しかったんだけど…」
「あれだよ、あれ!うんこある靴目立たなくさせるなら森の方が目立たないだろ!!」
なんだか間抜けに見える会話をしつつ僕の周りをくるくる飛び回る桜井を見る。
羽根とサイズも気になるけど今夜はハンバーグのつもりだったから夜ご飯前に帰れるかの方が僕的には重要かな。
姿違えど桜井に変わりないし会話出来るし…ま、いっかなって。
「…んで、帰れるの?」
「え…帰るつもりなのか?」
目の前にずいっと来た桜井は少し嫌そうな顔をした。
例えるなら隣のクラスの可愛い女の子、たしか…馬場さん?に猛烈アプローチされてた時みたいな顔。
または苦手な梅干し食べて顔を歪ませた時みたいな顔だ。
「そりゃあ帰るよ。夜ご飯食べないといけないし、靴だって綺麗に洗わないと明日の学校にも行けないし。」
最近は伸びてないけどまだまだ成長期のつもりだししっかりご飯は食べたい。
それにうんこ付きの靴のままは嫌だ。
家や学校の靴入れがうんこ臭で残念な場所になるし、そんな靴のままだと僕のテンションもガタ落ちだからね。
「だから桜井、元の場所に連れてって。」
「南雲は元の場所だと運気がイマイチなんだから暫くここに居なよ!!」
「はー??ついてるって言ったの、桜井だろ??」
「それはうんこが!!うん違いだろ!!」
「運気はともかくうんこはついてなくていいんだよなぁ…」
「仕方ねぇなぁ〜…ほら、クリーン」
人差し指をくるくる回し靴を指差す桜井に釣られ靴を見ると淡く光って先程までのうんこ臭が消え、新品同等のうんこがついてない靴になる。
「え、まじで??…ありがとう、桜井」
「いいってことよ!まあうんこ踏むように南雲誘導したの俺だしな!!」
「はぁ!?お前そんなことやったの??」
「ぼーとしてるお前が悪いんだよ!俺が話してるのに聞き流しやがって!」
そっと桜井の頬をツンツン触れば頬を膨らます。
女の子がしたら可愛いだろうが桜井がしたところで可愛くはない。
頬をつついていた人差し指を両手で掴まれぐいぐい引っ張られ仕方なく桜井が引っ張る方へ歩く。
「そんなぐいぐい引っ張らなくてもついて行くから落ち着けって。」
だってそうするしかないだろ?
僕は目の前にいる羽根の生えた小人が桜井ってことと先程までとは違う場所にいるってことぐらいしか分からないのだから。
あまり長めの話を書くのは慣れてないので少しずつマイペース更新予定です。
小さい兄弟がやいのやいのわちゃわちゃしてるイメージで2人のことを書いていけたらなと思ってます。
どうぞよろしくお願いします。
次の話も南雲視点です。
キーワードは『南雲から見た桜井』
ちなみにこの話のキーワードは『うんこ』