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お片付けの後はチョコアイス

 鬼の副長・土方にゃんは、源と沖田君とお部屋を見て、数秒、黙り込んだ。

「お千代さんに呼ばれてな。ほんとにお前は昔から手がかかるな」

「いやあ」

「褒めてねえ」

「それで土方さんが掃除のお手伝いに来てくれたのですか? 助かります」

 ところが土方にゃん、ふん、と鼻息も荒く沖田君を睨んだ。

「誰がてめえをそこまで甘やかすか。代わりにこいつを呼んで来たから手伝ってもらえ」


 うん?

 土方にゃんの後ろからもう一人、だんだら羽織が出てきたにゃあ。

 苦み走ったイケメンにゃ!


「斎藤さんじゃないですか!」

 嬉しそうにゃ沖田君。対する斎藤にゃんは無表情で、何を考えてるのかよくわからにゃい。す、と沖田君に何かを差し出す。

「沖田さん。まず、掃除に相応しい恰好に着替えましょうか」

「んじゃ、後は頼んだぞ、斎藤」

「はい」


 斎藤にゃんが沖田君に差し出したのはジャージだった。斎藤にゃんは自分もジャージに着替える。

 ……。

 源、斎藤にゃんの袖をつんつん。


「何だ」

「源の分は?」

「お前はどうせぐうたらして働かないだろう」

「源、貴族猫だしまだ仔猫だから……」

「お気楽なものだ。なら黙って邪魔にならないように見てるんだな」

「源も形だけでも参加したいんにゃ。コスプレしたいんにゃ」

「はい、落第。どいてろ」


 俺はお部屋の隅にちんまり小さくにゃって、斎藤君と沖田君が、お部屋を片付ける様子を見てた。寂しい。コスプレしたっていいじゃにゃい。源はあんまり寂しかったから、お千代さんのところに行って、お千代さんのお膝の上でお昼寝したんにゃあ。お千代さん、源にはとっても優しいから。……今日もお千代さんは派手なピンクのフリルつきワンピースで攻めたファッションだった。


「沖田さん。さんなんさんのことはもう良いので?」

 空き缶を燃えないゴミの袋に入れながら斎藤がぼそりと尋ねる。カン、カン、と空き缶が歌う中、沈黙が落ちる。

「僕にもなぜ、自分がまだ存在してるのか解らないんです、斎藤さん」

 沖田総司はモップで家具の埃を拭いている。その手を休めずに続ける。

「僕は完全に、蒼として生きる筈だった。さんなんさんたちもそう思っているでしょう。きっと、まだ僕がいるとしったらびっくりする。ほんと、どうしてなんでしょうねえ、あ、斎藤さん、その魚のフェルト人形は捨てないで。源ちゃんのお気に入りの玩具なんです」

「…………」

 斎藤は、それこそ燃えるゴミに突っ込みたかったフェルト人形を辛うじて棚に置くに留めた。

「蒼は元気だ。さんなんさんは、沖田さんがまだいると知ったら喜びますよ」

「うん……」

 沖田総司が、嬉しいような切ないような笑顔を見せたので、斎藤はそれ以上、何も言えなかった。



「おおおお。綺麗になってるにゃあああ」

「どれ。大したもんじゃないかい。流石、イケメンだね。やる気を出すと他と違う。うちのじいさんと同じだ」

 そうにゃの?

 源は、抱っこされていたお千代さんの胸から、沖田君の懐にジャンプした。

「さあ、よく頑張ったご褒美だ。チョコアイスだよ、上等の奴だ。心して喰いな」

「うわあい」

「おい、猫。お前は何も働いてないだろう」

「みゅう」

「良いんですよ、斎藤さん。源ちゃんは僕に元気をくれるのです」

 えっへん。

 胸を張る源に対して、斎藤にゃんは憂鬱そうに溜息。

「甘い……」

「うん、このアイスは甘くて美味しいですね」

「チョコが濃厚にゃんよおおおお」


 お千代さんも一緒に、源たちはみんなで、チョコアイスが溶ける前に急いで食べ切った。沖田君が少しだけ寂しそうで、斎藤にゃんが少しだけ苛立って見えたのは、気のせいだったかにゃ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 斎藤さんのジャージ姿、レア過ぎる(ノД`) 土方さん、掃除得意そうなのにー。雑巾の絞り方とか洗い方とか、怒られそう(^^;)
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