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腐海の清浄化計画

 朝日が燦燦(さんさん)と射すフローリングに、だんだら羽織の沖田総司と、仔猫の源九郎が転がっている。彼らには仕事がない。求職してもいない。沖田総司は幽霊で、源九郎は仔猫だからである。金はかかるが、源九郎の口座には毎日、自堕落しても困らないだけの貯えがあり、尚且つ、いよいよ金に困れば父親を頼れば良いという、見事なドラ息子ぶりである。

 ころんころんころん、と源九郎が寝返りを続け、その内、壁にぶち当たる。にゃあ、と鳴いて、また眠る。

 寝て、起きて、食べて、また寝る。

 この怠惰の極みを繰り返して、一週間後には、部屋は腐海と化していた。

 これを見た千代は口をあんぐり開けた。きっ、と眼差し鋭く沖田総司を睨み、床を指さす。

「ちょっとあんた。そこに座りな」

「はい」

「あんた、集団生活してたんだろう。衛生面の重要性とか学ばなかったのかい」

「面目次第もなく……」

「源ちゃんの手も借りて、この部屋を綺麗にしないとおん出すからね! ほら、里芋の煮っ転がし! ちょっと、作り過ぎただけなんだからね」

 千代は、最後は目を泳がせながら言うと、ついでとばかり源九郎の頭をぐりぐり撫でて、荒々しく汚部屋を出て行った。沖田総司は頭をぽりぽり掻く。源九郎も真似してぽりぽり。

「怒られてしまいました」

「にゃあ。まずは里芋を食べるにゃあ」

「そうですね! 腹が減っては掃除も出来ない、池田屋にも行けない」

「そうにゃそうにゃ!」


 数分後。

 里芋の煮っ転がしの美味を堪能した青年と仔猫は、床に転がっていた。はっ、と沖田総司が飛び起きる。

「いけない。掃除をしなくては。源ちゃん、起きてください」

「にゃあ? ……俺は貴族猫だから、お掃除は沖田君に任せるにゃあ」

「そんなんだから革命が起きるのです。さあ、まずは大きなごみから片づけて行きましょう」

 沖田総司、やる気である。道楽息子でドラ息子の源九郎にはっぱをかけ、さあさあと掃除を敢行する。


 五分後。


 沖田総司と源九郎が床に転がっていた。


「……続きは明日にしましょうか。何事も、やり過ぎはいけません」

「源もそう思う~」


 腐海と化した部屋に清浄の地となる日は来るのか。

 翌日、様子を見に来た千代は頭を抱えた。

 清浄の地となるまでの道のりは遠そうである。


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