正義の牛肉
不動産屋のお婆さんは、お千代さんというお名前だったにゃ。お千代さんが住む、おうちとお店を兼ねた建物のすぐ近くのアパートを、源と沖田君に紹介してくれた。お味噌だって分けて貰いに行ける距離にゃ。引っ越しにあたって必要にゃあれこれを準備してくれて、源と沖田君はその日の内にお部屋に入ることが出来た。
「どうせ碌なもの食べてないんだろ、ほら、今日はこれで牛鍋にしな」
「源、こにゃいだ沖田君と松茸ご飯食べたよ!」
「それは豪気だねえ。その調子で家賃のほうも頼んだよ。ほら、これ合鍵。電気も水道ももう使えるからね」
お千代さん、色々ぶつぶつ言いにゃがら、親切なんにゃ。
フローリングの八畳と、六畳と、台所、お風呂、トイレ。どこもピカピカで、新築の良い匂いがする。お千代さんがくれたちゃぶ台に、買ったお鍋、牛鍋の具材を載せて牛鍋にゃあ!
「いつまでいるんですか、土方さん」
「お前が自分の都合で俺を引っ張り出したんだろうが。飯くらい食わせろ」
「そう言えばお千代さん、僕たちが幽霊とご存じなのに、食べ物やら用意してくれましたね。親切です」
「俺もそう思うにゃもぐもぐもぐ牛肉の汁がじゅわああにゃあ」
「俺が美形だからじゃないのか?」
「……」
「……」
ぐつぐつぐつ。
「お米は炊けてますし、鍋の後は雑炊ですね。半熟卵を回しかけてとろりと」
「うにゃあああ」
「悪くねえな」
ぐびぐび。土方にゃん、いつの間にビールにゃんて手に入れたの?
沖田君も不思議そうな目で見てるよ。うううん、それより肉にゃ、肉にゃ。
牛肉は正義なんにゃあ。ぐつぐつぐつ。