亡命貴族猫の松茸ご飯
ちゃおっす。
俺、源九郎。沖田君と、旅をしている美猫にゃん。気軽に源ちゃんって呼んでね。俺は自分のこと、源、って言う時あるから、そのへんよろしくね。
今日はお空が綺麗な青ね。昔も今もお空は変わらにゃいのね。
源はね。亡命貴族にゃの。
ロシア革命が起きた時、お父上とお母上から、ゆかりのある日本に逃がされたんにゃ。お父上は昔から日本びいきで、だからほら、俺も源九郎っていう名前だし。日本に知り合いもいたんだよ。
怖い夜。怖い旅だったにゃ。お父上とお母上は、今はドバイに旅行してる。源の現・保護者の沖田君を信頼してのことにゃ。幽霊だけど、沖田君は、とっても良い奴にゃ。
源は猫っかわいがりされてる。
まあほら。俺って可愛い仔猫だから。百歳超えてるけど、この間まで赤ちゃんだったみたいにゃものだから。可愛がりつつ敬ってね。
「源ちゃん。塩豆大福ですよ」
「うにゃあああ」
かぶりつく。うんまいにゃあ。
ほら、沖田君は良い奴なんにゃ。源に似て美形だしね!
「今夜は松茸ご飯にしましょうね」
「松茸えええええ」
「近くの料亭を予約しておきました。源ちゃんは、僕の懐に忍んで入店してください。後は座敷ですから大丈夫です。ちゃんと二人前、予約しましたからね」
「源が沖田君のお着物に入ったら、沖田君、ちょっとお腹が膨れるんじゃにゃあい?」
「はい。でも大丈夫。堂々としていれば良いのです」
「俺の得意技!」
「はい」
沖田君、にっこり。今日のお空みたいにゃ、澄み切った笑顔にゃあ。俺はグラマーにゃ美女が好き。でも、沖田君は全然そうじゃにゃいけど、大好きにゃ。
「松茸ご飯、松茸ご飯」
そわそわ。
沖田君にくすくす笑われちゃった。




