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タイトルは決まってない

なろう初めてで機能よくわかってません。すみません。

設定とか後から直せそうなら直します。目指せ週一更新目指します。

「おーい、兄ちゃんもう疲れたよ~」

 両手いっぱいに荷物を抱える、少年と青年の境の年頃にいる男が一人、ガヤガヤと賑わう往来のド真ん中で、情けない声を出して嘆いている。身長は平均程度だが、手足はすらりとして見栄えが良く、薄ら紅みがかった長い髪を高めの位置で一つに結った、あかい眼を持つ整った顔立ちだ。彼は名をホンといい、この広い世界で冒険者という職業に勤しんでいる一人の男だった。

 ホンの前方には、僅かに梅紫の混じる牡丹色の髪を一風変わった二つ結びにした、小柄で華奢というのがよく似合う少女が歩いていた。ホンは少女を見つめながら、色よい返事を待つ。しかし、くるりと振り返った彼女はニコリと笑うだけだった。 

「まだ日用品しか買い足せてないアルヨ! 兄さま、貧弱」

 クリリとしてぱっちり大きめのツリ目が、ジッとホンを見つめた。物言いた気な視線に耐えられず、ホンは口を開く。

「そうは言ってもなぁ、ユエ……我が妹よ、お前と一緒にしないでくれ……荷物だって持ってやってるだろ?」

 グッタリと脱力する仕草をすれば、ユエと呼ばれた少女は片眉を上げて抗議する。あ、これは聞き入れてもらえないな。そう悟ったホンは、ギュッと口を引き結んで黙ることにした。可愛い妹の頼みと疲労からくる苛立ちを天秤に掛け、グッと拳を握り込んで後者を飲み込もうと耐えていると、俄に往来が騒がしさを増す。

「うわああああああ! 引ったくりだぁ!」

 瞬間、聞こえてきた悲鳴にピクリと反応した二人は、サッと臨戦態勢に入る。人混みを押し退けながら迫り来る乱暴な足音と、避けようと圧し合う人々の悲鳴。ただの引ったくりにしては、周りが混乱しすぎている。逃走犯は刃物を振り回しているのかもしれない。ホンは考えながら、人混みが割れた中から飛び出してきた男を見た。

―――ビンゴ。

 男の手に握られたショートソードがビュンビュンと音を立てて空を切っている。その勢いから筋力には多少自信がありそうだが、武器を扱う者としては初心者同然であることが見て取れた。なんだ、その程度か。

「どけぇッ!!」

 大声を上げながら突っ込んでくる男のことを、ホンはあまり気に止めていなかった。冒険者としてそれなりの腕を持っているホンにとって、彼は敵ではない。そして、ユエもまた、ホンと共に旅をする冒険者であり、ホンと同様の心持ちだった。

 そんなことは全く知らない男は、二人の間を通り抜けようとすれ違った瞬間に、彼らの餌食と化した。ホンはその長い足を振り上げ、ユエは腰を低くして拳を突き出す。ぐえ。哀れ、男はその見事な胴体に二発の攻撃を受け、撃沈した。

 ピクピクと痙攣している男の傍にしゃがみ込んで武器やら鞄やらを回収しながら、ホンは呟く。

「セコい方法で稼ごうとするからだぜ、オッサン」

 ユエが自分の荷物の中から、テントの一部である縄を取り出して、男を縛り上げる。なんだか、普通の縛り方じゃなくて、ちょっと恥ずかしい縛り方だ。どうしてその縛り方なんだ。というかなんで知ってるんだ。ユエ、お前の趣味なのか? ホンは今年十四になる妹のことを心の中で心配したが、口に出せば面倒なことになると知っているため、触れはしなかった。

 二人の周りは、ワッと歓声で盛り上がった。

「兄ちゃん達、やるな! 冒険者か?!」

「二人とも若いのにすごいわねぇ」

「いいもん見せてもらったよ! コレもらってくれ!」

 事態が収まったことに気が付いた人々が、ホンとユエを囲んで盛り上がる。大道芸人に投げ銭する通行人よろしく、二人の手には果物や屋台の出来合いなどが積まれていく。どうやらこの街の人間は気前が良いらしい。

「み、みなさん! すみ、すみませ……道をあけてください~!」

 どうしたものかと考える二人に、野次馬にもみくちゃにされながら近寄ってくる青年がいた。彼は体力がないのか、ゼエゼエと肩で息をして二人の前に立つ。膝に手をついて。辛うじて立っている。

「ぜぇ……こ、このたびは……ぜぇぜぇ……あ、あり…………ゲホゴホッ」

「お、おう……落ち着いてからで大丈夫だぜ」

「ずみば、ぜん……」

 青年の呼吸が落ち着くのを待った。大きく息を吸って、整えるためにゆっくり吐く。やっと正常を取り戻した青年は、気を取り直して二人に声を掛けた。

「本当にありがとう、助かったよ。キミが奪い返してくれたその鞄は、僕のなんだ」

 騒ぎを聞きつけた衛兵に男が引き渡されるのを眺めながら、ホンが持ったままになっていた鞄を指して青年が言う。

「僕は―――」

「お、そうなのか? ほい、じゃあこれ返すよ」

 言いかける青年を遮って、ホンは彼が差し出した(青年としては握手のために差し出していた)手に鞄の紐を持たせた。

「オニーサンに何事もなさそうでよかったよ。それじゃあこれで」

「あ、え?! ちょ、まって!?」

 青年を放って歩き出そうとする二人。思いも寄らない反応に、青年はホンの腰にしがみついた。

「待って待って! お礼をさせてくれない!?」

「いや別に大した事はしてないし……」

「そう言わず! 助けられたのに恩も返せないなんて商人の恥だ! 頼む、これも人助けだと思って!」

「ええー……助けたのにさらに助けを要求されんの……?」

 渋い顔で進もうとするホンと、ズルズルと引き摺られる青年に、ユエはそっと距離を取る。そんな三人のやりとりに、近くで屋台を営んでいる店主が寄ってきた。

「良いじゃないか! お礼してもらえよ兄ちゃん達。そいつぁ、ここいらじゃ有名な商会の息子だぜ。遠慮する方が損ってもんよ!」

「そうそう、店主さんの言うとおり、ご遠慮なく。改めて、僕はテオドール・アグマティー。この街一番のアグマティー商会の代表代理をさせてもらってるんだ」

 鞄を肩に掛けて、再度手が差し伸べられた。ホンはぐぐっと迷う顔をしたが、一つ溜め息を吐くと、その手を取った。

「オレはホン。こっちは妹のユエ。見ての通り、冒険者をやってる」

「やっぱり! 強いみたいだから、そうかなとは思ったよ」

「んで? オレたちにどうしろって?」

 問いかけに、青年―――テオドールは微笑んで答えた。

「一先ず、ゆっくり出来るとこに移動しよう!」

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