第13話 死角のない機体
「俺たちの軍が押してるのか・・・」
戦況は月面軍有利。MTの数が多いのが効いていた。
「何とか生きて帰らないと」
ソラツグは呟く。
すると前方に動きがあった。
前線の自軍が次々と撃墜されているのだ。
俺は索敵範囲を広げる。
そして敵の機影を察知する。
「MTヘカトンケイル型か」
MTヘカトンケイル型は二人乗りの機体だ。
二人で前後を索敵するので死角が無い。
俺はケリー中尉とマーダ大尉に相談する。
「へっ月面軍なんて大したことねーな」
「コンス。油断するな。むっ?」
前方からMTより少し大きいくらいのデブリが飛んでくる。
「しゃらくせえ!」
MTヘカトンケイルがデブリを撃ち抜く。
その後ろには――
「何もいない?」
「コンス!上だ!」
マーダ上官の機体がエネルギーを回避する。
「くらいな!」
マーダ機のエネルギー砲がヘカトンケイルを捉える。MTヘカトンケイルの腕が二本吹き飛ぶ。
「うわああ!やばい!ハンスの兄貴!」
「この程度!」
ハンスが反撃に移ろうとした次の瞬間!
真下からMTヘカトンケイルが貫かれる。
「馬鹿な・・・!」
MTヘカトンケイルが爆発する。
「真上と真下、両方の死角から敵を撃つ作戦だ」
とソラツグが告げる。
その後は月面軍有利で進んだがだいたい双方痛み分けで終わった。
月面軍地球軍お互い(特に戦艦宇宙戦闘機に)甚大なダメージを受け、新規生産が必要な次の作戦までに時間が掛かることになった。
「凄いじゃないかソラツグ!」
マーダが俺の髪の毛をくしゃくしゃする。
「MT撃墜3、宇宙戦闘機撃墜15、被弾ゼロ!お前本当に戦争初心者か?」
「戦争初心者は皆同じじゃないですか。たまたまですよ」
「いや、大したものだ」
そこに一人の男が割り入ってくる。月面総督だ。
中隊隊員は敬礼する。
「本来は士気を高める為のお飾り要員であるはずの君が実際に戦果を出した。これは驚くべきことだ」
「有り難うございます!」
「次回からは中隊の配置を再検討する。頑張ってくれたまえ」
「はい!」
そう言って月面総督は去っていく。
「ソラツグ。責任重大よ?」
「プレッシャーを掛けないで下さい」
そして俺は格納庫に向かう。
「ようソラツグ。聞いたぜ、大金星だったってな」
「おやっさん・・・」
「浮かねえ顔だな。どうした?」
「俺・・・人を殺してしまいました」
そして急激に吐き気を催す。
「うげえぇぇぇ!」
「緊張の糸が切れたか。無理もない。覚悟も決まらないうちから戦場に引きずり出されたんだからな。・・・吐き終わったら部屋に帰ってゆっくり寝ろ」
「うぇぇ・・・は、はい」
ミツハシはソラツグの両親を思い起こし、
「すまねえ。お前らの子を人殺しにしちまった」
心の中で謝る。
そしてソラツグは部屋で涙と鼻水と吐き気を繰り返しながら夜中まで泣いた。
ここまで読んでいただき有り難うございます。
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