第2話 覚醒の域を超えている
「あぁ、もう覚悟は決めてある。その薬を俺に飲ませてくれ。」
って言ったのだが、、俺は早速迷い始めている。
俺は錠剤や粉薬を想像していた。いや、それしか想像できないだろう。
だが目の前にあるものはなんだ。紫色のドロドロした飲み物だ。
これを飲んで無事で済むとは思えない。
というかなんだか顔の形に浮きでて変な声が聞こえるんですけど、
「オオオオオオオ………オオオ………」
「…じいちゃん…これでほんとに筋肉が増量するの?」
見た目的にはもうアウトに達していて覚悟を決めたばかりの俺は正直気の迷いを感じていた…
決して俺が気弱な訳では無いのだ。決して…
「おぉ!これで筋肉が増量して、力がパワーアップするはずじゃ!!実験はまだしたことないがワシの勘がビリビリしておる!!フォフォフォフォ!」
…ん?今このじいちゃんはなんと言った?実験をしたことがない…だと?!
「…じいちゃんそれ本気?まだ実験もしたことがないって保証がないんじゃ…」
いや、わかる。言っていることはわかるさ、時間制限じゃない以上、人間に試すなんてことはさすがに出来ない。が、せめてマウス実験とかはしようよ。俺が実験体ってことじゃねーか!
「大丈夫じゃ!!ワシの勘を信じればきっと成功するじゃろう!」
…そんなもんか??まぁ確かにじいちゃんは優秀な博士だが…信じてもいいのか??
「…じいちゃんのことを信じてもいいのか??」
俺は最後の確認をとった。じいちゃんがこれで保証をしてくれるのならば俺は信じられる気がする、、この薬の味は信じられないが……
「あぁ!わしを信じてくれ!男に二言はなしじゃ!!」
…決まりか。
俺はじいちゃんを信じてこの怪しい薬を飲むことにした。この博士なら大丈夫だと、俺は強くなれるんだと、期待と不安を入り交じりながらも、俺は薬に口をつけた。
…味は正直分からなかった。美味しいとは言えないが壊滅的な味ではなかったのが救いだった。俺は息を止め、目をギュッとつぶりながらそれを飲み干した
…目を開けたらどうなってるんだろうな。父さんみたいに筋肉ムキムキマッチョは少し嫌だなと思いながら俺は恐る恐る目を開けた。
以外にも俺の見た目に変化はなかった。何かが劇的に変化したということもない…これは失敗か??
「…じいちゃん、あんまり見た目に変化は出てないけど俺は本当に強くなったのか??」
俺は見た目は変わっていないと安堵しつつも唯一の頼みが無くなるのかもしれないととても不安になった。
「…あぁ、見た目に変化はないからどうなってるのかもイマイチ分からないのぅ…試しにジャンプしてみてはどうじゃ?薬が成功していれば凄まじいジャンプ力になるだろう。」
…物は試し、か。俺は人生で今までにないほどの力を込めてジャンプをした。
結果は凄まじいジャンプ力だった…本気のジャンプとはいえ、天井に頭が突き刺さるほどにジャンプ力が増していたのだ。
最初は正直何が起こっているのかわからなかった。いや、これだけの力があるのは嬉しいのだが、、力が強すぎて思った感想は「頭が痛てぇ…」
じいちゃんが大慌てで空飛ぶ機械を持ってきて俺を引っこ抜いてくれた。いや、ここまで威力があるのなら最初に言ってくれよ…
「俺…力が随分増したようだな……まだ実感わかないよ。」
これは本音だった。実感がわかないというかじいちゃんはここまですごい博士だったのかと改めて思った。
「いや、、ここまでの威力はワシも想定外じゃった…が、まぁ、良かったじゃないか!フォフォ!これで魔法学園の中でも最大の威力が出せるのではないか?」
なんとも楽観的な…でも、ふむ、確かにこの威力なら魔法学園でも通用はすると思う。が…それでも魔法とゆうものは特別だ。それだけで未来が決定するし、才能の何十倍もの威力が発揮される。せいぜい俺は魔法学園のモブキャラだろう。
「うーん…魔法学園ではやっぱり下っ端だろうけどギリギリ試験合格は出来ると思う!ありがとうじいちゃん!」
これで何とかなるだろう。まだ油断は禁物だし、せっかく筋肉が強くなったんだから筋トレをしなければ宝の持ち腐れだ。
これからが本番だと俺は思った。父さんと一緒に筋トレをすれば中々凄まじい力にはなるのではないか、「キッついなぁ…」とボヤきながらも俺の覚悟は決まっていた。
そこからは気合いの特訓練習だった。1日100キロのマラソンは死んでいるのかもしれないと錯覚を起こしていた。その後も腹筋背筋ダンベルを100キロ持ち上げたりと、とてもキツかった。
3ヶ月の猛特訓により、俺の腹はシックスパックで筋肉ムキムキマッチョ。 とはいかず、何故か3ヶ月前と同じ体型だった。日々の変化が見られないこの虚しさ…いや、ムキムキマッチョにはなりたくないが、、
もしかしてこれはあの薬のせいなのかと思い博士に聞いてみた。そしたらなんと、
「あるひとつの仮説があるんじゃ。坊の才能は筋肉密度だろう?正直言ってしまえばあの薬はあんな壮大な力はないはずなんじゃ。だが、坊の才能とあの薬の化学変化により何十倍もの力が生まれたのだとわしは思う。」
…なるほど。
確かにそれなら辻褄があうな、、
父さんは「お前の根性がたりないんだ!根性で腹筋は割れる!フン!!」
と言って腹筋をシックスパックからエイトパックに分裂させた時は本当に俺の根性の問題なのかと思ってしまったが、どうやらそうでは無いらしい。
久しぶりにジャンプ力を試してみることにした俺は誰もいない広場に出た。深呼吸をして、酸素を身体中に張り巡らせる。来る!と思った瞬間に俺は全身の力を足に集中させて思いっきり飛んだ!
結果は上々…いや、上々すぎる。
3ヶ月前せいぜい跳べても20mだった。が、今はざっと300メートルを超えている。東京スカイツリーを一瞬で跳躍した感じ。不思議な感じだ。何故かこの結果をすんなりと受け入れられる。
じいちゃんも見ていたが、…かなり驚いていた。
目ん玉が飛び出しそうになるくらいに驚き、その後に「さすがは我が孫じゃ!フォフォフォフォ!!」といつもの笑い方で喜んでくれた。何よりだ。
試験は三日後。この調子なら俺は受かるかもしれない…そんな高揚を抑え、俺は日課になっているマラソン100キロを走り出した。
次はいよいよ実力テスト!皆さんお楽しみに!!