17話 冒険者ギルドで2
ーーーリツカーーー
「どうぞ掃き溜めへ。フェテシア様何かご用でしょうか?」
「サリファさん止めてください。さっきのはからかっただけですから。」
「は、はい。了解しました。」
「それで、用件というのは報酬と報告をしに来ただけです。えぇ~とどちらにお持ちすれば?」
「あっ、こちらにお願いします。」
超絶美人のフェテシアさん?をこちらに招く。
護衛依頼も含め多くの依頼は基本的に依頼人からしてみれば冒険者の質を心配するし、反対に冒険者からすれば依頼主に支払い能力があるかを不安視する。
そこで、前金として半分頂き、依頼成功後に更に半分頂くという制度があります。
ですが見栄を張ることにこだわる貴族の多くは一括でギルドに払っておき、後日ギルドが報酬を出すというのが貴族では一般的だ。
「すみません。手持ちが少なくて向こうで前金しか渡せなかったんです。実家に取りに行ってました。」
報酬金を受け取り、依頼票と照らし合わせ規定金額か確認する。
「構いませんよ。ルールの範囲での自由が依頼主様には有りますからね。」
にしても美人だなぁ………。
名前はフェテシア……か…………ミフェル家ね。
そう言えば15年前に行方不明になった当主の娘がフェテシアって名前だって聞いたことがあるような………。
行方不明のわりには一切捜索の似顔絵とかが回ってこなくて当時のギルドマスターが不思議に思ったって聞いたことがある気がする
曰く、貴族の夜会ではミフェル家の高潔な薔薇という名で有名だったとか?
今回の護衛は王直轄領の端っこ、帝国との干渉地帯ギリギリの小さな村からですか………。
ミフェル領とは位置的に真反対ですか………………。
う~ん。
あっ、そう言えば…………あの辺も15年前に何か………………。
確かギルド保管庫資料で見たような………そう!確か国境を接するミルガ帝国よるレルモンド王国民の奴隷狩りがあった時期でもあったような。
時を同じくして反対のミフェル家では都市封鎖があった頃ですね。
その後代官はその事を長期間気付くことが出来なかったとして、罷免され新たな代官を立てたと聞きます。
何か関連性があるんでしょうか?
素人では分からないわね。
男爵貴族の友人に聞いてみようかしら?
「あの………先程から依頼内容の所で止まってますが…………報酬金の確認でしたら別ページでは?」
「あっ、すいませんでした。考え事を少々。」
いけない、いけない。
考え事も程々にしておかないとお客様を待たせてしまう。
「すいません。確認終わりました。35シルバーお預かりします。責任もって冒険者様にお渡ししますね。」
まぁ、隣にいるけど。
「よろしくお願いします。」
フェテシアさんはそう言うと軽く会釈をする。
流石上級貴族……気品が違うなぁ。
笑うところも含め全ての所作が上品に見えてくる。
そして頭を下げた瞬間私の耳元に口を寄せてきて………。
「好奇心は人を育てますし大変結構ですが、何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しですよ。詮索も結構ですが程々に。……………好奇心は猫を殺すとも言いますしね。」
小声でそっと告げてきた。
「ひっ!」
背筋がゾッとする。
なるほど………気品だけでなくこういうところも上級貴族と言うわけですねぇ!!
もう詮索も、何もしないですからそんなニッコリした笑顔で見ないで。
「どうしたんですか?フェテシアさん。」
「あぁ。彼女素敵なイヤリングして気になってしまいました。すいません。あんなに不躾に見て…つい、好奇心に勝てず。」
そんな目で見ないで!
好奇心に負けませんから!
こちとら命一番でやってますんで!
「へぇー。やっぱり貴族の方って貴金属とか………凄いんですか?」
「まあ、一端の貴族程度には物が分かるつもりですよ。そのうち見に来ますかマリアさん?同じ女性として私は美を求める気持ちには理解があるつもりですよ?」
「え、いや。フェテシアさんのご自宅ですか………。」
「まあ、王都にあるのは我が家の別邸ですが、奥にそれなりにあったはずです。」
流石の冒険者界の天使マリアさんも本物の貴族オーラには勝てないか………。
というよりは貴族ではなく、ミフェル家そのものに怯えてるだけなんだろうけど。
「回復魔術補助効果のある装飾品もいくらか眠ってた気がしますねぇ。別に使用用途も無いものなので…場所も取りますしこの際処分してしまうのも良いかもしれませんね。」
「………………是非そのうちお伺いします。」
あっ、天使が買収されてる。
「フフ、では、茶会での冒険譚、楽しみにしています。ではこれをお渡ししておきますね」
フェテシアさんはその場で紙に一筆書いた後マリアさんに渡しています。
「今回の依頼についてなんですが、今更ですがなるべく内密に。他の貴族に要らぬ探りを入れられるのも面倒なので。」
「あっ、はい。」
「さて、最後に男性の方々を含め四人の皆さん。娘共々大牙狼より守っていただいてありがとうございます。ミフェル家を代表して礼を。」
「い、いえ、あれは結局師匠が………。」
「そうですね。………さて、侯爵様の長居は皆さんの精神に良くないようですし、お暇することといたしましょう。………では、…失礼しました。」
そう告げると美人貴族フェテシアさんは去っていった。
というか。
「大牙狼ってどういうことですか?」
「そう!そうだよ。リツカちゃ~ん。アルミレア渓谷で大牙狼を含む砂漠狼の群れに襲われたんだけど!そこんとこギルドの情報網になんか無いわけ!?」
「砂漠狼は分かりますが、基本的に湿地や森に住む大牙狼があの乾燥地帯に出現するなんて………俄には信じられません。その個体は撃退出来たわけですね。」
「いや、てか討伐した。まあ、殆ど師匠のお陰なんだけどね。私達だけだったら確実に全滅してたよ!」
「ですね。私なんてもう…………。」
討伐!討伐難度は単体ではC上位クラスでも、群れを含めればB中位クラスですよ。
護衛をしながらの討伐となればギルドでの評価もかなり上方修正しなければなりません。
「それでその死体は?」
「ナサムのアイテムバッグよ。」
アイテムバッグ。
上位冒険者の多くが活用する古代級魔導具の1つ。
鞄内の空間をどうやってか拡げていて、実際のサイズの数倍から数百倍が入り、質量も変わらないという優れものだ。
物により質も異なり値段も天井知らずに上がっていく。
内部体積が50立法mのアイテムバッグが過去に30万ゴールドで落札されたことがある。
王都の東区貴族街に土地を買い、家を建てれるような金額だ。
「はぁ。えっと裏の解体所に置いてくればいいかリツカちゃん?」
「あっ、そうですね。ご案内しますよ。」
解体所に案内してナサムさんが出したのは随分立派なサイズの大牙狼だ。本当に出たんだ。
………………大牙狼………何か最近その言葉を聞いたような?
「あっ!」
「リツカちゃんどしたの?」
「いや、なんでも。」
………大牙狼と言えば思い出した。
数日前に後輩のレテアが、「聞いてくださいよリツカさん!アルミレア渓谷で大牙狼を見たって通報があったんですよ!多湿を好む大牙狼があんな乾燥地にいるわけないのに!はぁ、大方砂漠狼辺りと間違えたんでしょうけど、こちらも忙しいので勘弁してほしいですよ。」って愚痴ってきた。
その時は話し半分で聞いてたけど……もしかしてあの娘ろくに精査せずに嘘だと断定したんじゃ………。
「ちょっとお待ち下さい!」
解体所の扉を出てレテアのいる受付まで戻る。
「レテア。この前言ってた大牙狼の件てどうなったの?」
「どうなったも何もあれで終わりですが………。」
この娘は………………。
「出たわよ。大牙狼。しかも、詳しくはまだ分からないけど。通常種より強い変異個体かもね。」
「えっ、………被害は………?」
被害を一番に気にするところは良い所なんだけど。
「無いわよ。<アルグ>の人達が討伐してくれたわ。」
「良かった………。」
「そうですね。でも危うく全滅しかかったとの事です。さぁ、謝りにいきますよ。」
「……………はい。」
レテアと共に四人に事情を説明してから謝る。
「すいません。」
「マリアなんか本当に死ぬ寸前だったし、正直思うところが無いかって言われると嘘になるけど、まあ許すよ。」
「今回の事は偶然俺らが大牙狼と遭遇したから良かったが、Aランク冒険者以下の他の連中ならまず死んでた。………まあ、俺らというよりはフェル嬢ちゃんが居たことが良かったが。」
ごもっともですね。
ただ1つ気になることがある。
「まあ、私達自身もフェルさん先生のおかけで助かっただけですしね。」
「皆さんの言ってるフェルさんというのは?先程もサリファさんが師匠とも言ってましたけど、その人は一体?」
「おっ、よく聞いてくれました。」
そのまま、どんなことがあったがサリファさんが自分の事の様に自慢しながら教えてくれました。
話を聞き終わりましたが、とてもじゃないですが本当の事と思えないです。
「さっきのフェテシアさんの娘さんで14歳の絶世の美少女。それがサリファさん以上の魔術と、ナサムさん以上の剣術を使い大牙狼と砂漠狼をほぼ単独で倒した………ですか。」
レテアと顔を見合わせる。
レテアも同意見のようだ。
「幾らなんでもそんなの信じれませんよ。」
「ほんとなんですよ!フェルさん先生は実戦環境下で平然と10句以上の魔術を使うレベルの凄い人なんですよ。」
いくらマリアさんの言葉でも信じられません。
マリアさんもサリファさんもBランク冒険者としてはトップクラスの魔術の使い手、そのお二人でも10句以上の魔術を使うことが出来ないのにそれを実戦でって。
おまけにナサムさん以上の剣術。
それなら最低でもAランク以上、もしかしたらSランク冒険者級の実力ってことじゃないですか。




