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16話 冒険者ギルドで

ーーーリツカーーー


ある日の昼。


「ういーす。」


「はぁー。やっと一息付けるよ」


あれは………冒険者パーティー<アルグ>の方々ですね。

優秀な方々でギルド内の評価かなり高く、リーダーのナサムさんと回復魔術に優れるマリアさんは近々Aランクに昇格させてはどうかと言う話もギルド内ではありましたね。

今は確か護衛任務中だったでしょうか?

一番真っ先に入ってきた魔術師サリファさんが堪えきれないと言った感じで私のカウンターの所に飛び付いてきました。


「もう!大変だったんだからねリツカちゃん!」


「どうされたんですか?護衛中何か問題でも?」


「そうなのよ!依頼主がぁ!!」


依頼主?………はて?

そう言えばあの依頼の依頼主って………ただの農民だったのに異様に報酬が高かったような。


「報酬について揉め事でも?」


「違うのよ!依頼主が!依頼主がミフェル家の人間だったのよ!」


「えっ!!」


ミフェル家と言えば国内有数の名家にして侯爵家、家格で比べれば公爵家には劣るがその影響力は計り知れない。

今代の当主を含め、歴代の当主が外務大臣を引き継ぎ、有効諸外国や周辺属国まで、ミフェル家の影響力は留まるところを知りません。

国内においてもミフェル家が流通を止めれば王都が三日で干上がるということわざがあるほどの商業都市を持っています。

実際に15年ほど前にミフェル領地で都市封鎖が起こり、王都の物価が5倍まで上がるという事態もありました。

幸い直ぐに解消され大事には至らなかったですが、あれも王家に対するミフェル家の警告だ。とか世間では色んな噂があります。

そして噂が噂を呼び今では政敵を暗殺してるとか、王を国を裏から操ってるとか、諸外国と手を組みレルモンド王国を滅ぼす気だとか凄いことになってる。

ただ実際怖いのは、15年前の都市封鎖前後位にミフェル家の当主の娘が行方不明になっており、当主も自ら外務大臣を退いている。

それと同時に第一王が王位継承権を放棄したり、公爵から男爵までの数多くの貴族が降格や取り潰しになったりとミフェル家の暗躍なのではないかと噂を否定しきれないのも事実だ。

それらも含めミフェル家は平民からしても貴族からしてもタブーの存在として世に知れ渡っている。


「そんなヤバい依頼主だったんですか!だ、大丈夫ですか!?」


「はは。一応ね。大丈夫だよ。」


そんな中、ナサムさんが言いづらそうにサリファさんに話しかける。


「おまえ。それ………迂闊にペラペラ話しても大丈夫なのかよ?」


「えっ………もしかして私……話しちゃいけない秘密を話しちゃった……?」


サリファさんの顔から血の気が引いていきます。


「いや、だって………そうだ!リツカが聞いてきたのが悪い!尋問された。私悪くない。」


テンパった末にこっちに爆弾を押し付けてきた。


「ちょ!なんて事言うんですか!私関係ないです。何で私が売られるんですか!大人しくサリファさんが殺されてください。」


「いやよ!まだ死にたくない!」


半狂乱になりながらサリファさんが叫ぶ。

そんなサリファさんにマリアさんが落ち着くように促す。


「お、落ち着いて下さいサリファさん!」


「おちついてられるわけないでしょぉ!!!ならマリアが変わってよぉぉ!」


「私だって死にたくはありません!……ではなくて!別に秘密にしろと言われたわけでは無かったですし、あんな道の真ん中場所で正体を明かしてくれたということは少なくとも秘密にしろってことでは無い筈です。」


「…………ほんと?」


「はい。」


「………………いや~マリアもリツカも親友だよ。身代わりにしたりするわけ無いじゃん。さっきのはウソウソ。冗談だよ。だまされてんの!」


驚くべき早さで変わり身したし、さっきのをなかったことにしようとしている。

これには冒険者の間で天使との呼び声高いマリアさんの額にも青筋が浮かぶ。


「…………………あっ、サリファさん。後ろにフェテシアさんが!」


「ひぃ!すいません。私は話しちゃダメだよって言ったのに、全部マリアがゲロりました。…………………………ん?……あれ?」


サリファさんが再びマリアさんを生け贄に自分だけ助かろうと出任せを言った。

しかし、なんの反応もないのでゆっくり顔をあげていき、そこでニッコリ般若状態のマリアさんと目が合う。


「あっ………。」


「私達は親友……なんでしたっけ?……………そしてその親友を身代わりに使う………と。つまりはサリファさんにとって親友は身代わりに使うもの。じゃあ親友の私が困ったときはサリファさんが身代わりになってくれるんですね!嬉しい♪」


「そ、それは………その。」


「何ですか?はい。が聞こえませんよ?もう一回行って貰えますか?」


「いや…………ごめんねマリア。サリファちゃん………ちょっと茶目っ気出してみました。キラリん!」


嫌な流れを絶ちきるためにサリファさんが普段のキャラでは絶対に言わないような事を言ったが、それに対してマリアさんは一切表情を変えることなく笑顔を貫いている。

無言の圧力だ。笑顔の裏に「はい!って言え!」という圧力が見てとれる。


「…………すいませんでした。」


「はぁー。冗談だとしてもやりすぎです。次は許しませんから。」


ふぅ。

お許しが出たようです。

一件落着ですね。


「それで結局のところ私に話したいことというのは依頼主が怖い貴族でサリファさんがチビったからクレームを入れにきたと言うことで良いですか?」


「チビってないし違うってば!…………さっきの冗談はさておき、実際のところ、貴族がなんぼのもんじゃい!ってやつだよ。魔物を倒す仕事をしてる冒険者が貴族怖くちゃやってけないよ。それこそそうだ!今回の………」


「サリファさん。」


話の途中でマリアさんがサリファさんの肩を叩き後ろを指差す。


「はぁー。いい加減私も学習するわよ。マリアも存外しつこいのね。ハイハイ侯爵様こわーいマリアちゃん助けてぇ~。……これでいい?」


うん……………。

何か………サリファさんの後ろに超絶美人の気品オーラ化物級の人が立ってるんだけど。

どぉー見てもそんじょそこらの貴族とは次元が違うくらいヤバそうなんだけど…………。

普段なら喧騒に包まれている冒険者ギルドも今は雑音1つとしてない。

知性ゼロのバカ冒険者共も格上の存在を悟ったか。

聴こえるのはサリファさんの得意気に話す言葉だけだ。

奴らめ普段私が依頼主への態度を注意しても聞かないのにこう言うときだけ利口になりやがって。


「サリファさん。後ろです。」


「はぁー!?リツカまで?あのね侯爵様みたいな上級貴族がこんな掃き溜めみたいな所に直接来るわけ無いでしょ。」


そう言いながらサリファさんは振り向き、超絶美人さんとご対面する。

うん。ニッコリしてる笑顔を素敵だ。でも奥になにか見える気がしてなら無い。


「噂の侯爵様です。………では、掃き溜めのご案内をお願いしますサリファさん。」


「すいません。マリアとこっちの変な受付嬢の悪ふざけに巻き込まれました!」


「「おまえ!」」


こいつまじでやりやがった!

ふざけんなよ!おまえクソ●●●野郎!●ね!

冒険者ギルドの一職員ごときに何してくれちゃってんの!

この人に目付けられたら人生を終わりかねないんだけど!

あのマリアさんが恐怖に顔を歪めてるもん!まじでヤバい。


「あら、何を謝ってるのかは分かりませんが直ぐに人のせいにするのは良くありませんね。………う~ん。……反省できるように我が家にご招待しましょうか?」


「す、すいません。フェテシアさん。まじで勘弁してください。」


うん。サリファさんの土下座は綺麗だった。

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