10話 お母さんの前で戦います
う~ん。これはどうすべきかな?
私は目の前にいる砂漠狼の群れを見ながら考える。
さっきのデカい奴は居ないけど、群れ総数35程度かな?
「フェル下がってなさい。この杖で………ふん!」
あっ!
考え事しているうちにフェテシアお母さんが魔導具使っちゃった!
あれ使い捨てだから結構高いはずなのに……多分。そもそも店で見たことないし分かんないけど。てかそもそも魔導具自体店で見たことない。
フェテシアお母さんが発動させた【ウィンドカッター】が杖の先から砂漠狼に向かって飛んでいき、三匹ほど巻き込んで死んだ。
おお!結構凄い。魔法構築速度はかなり速い。
威力はそこまでだけど、そこは使用者依存だから仕方ないし、まあ、あくまでも人が発動させてるわけじゃなく、全部魔導具がやってくれてるわけだから、かなりの物じゃない?
とはいえ、使いきりだからなぁ。
ガァルルル!!
仲間を殺された砂漠狼はかなり怒っている。
フェテシアお母さんの魔術を警戒してはいるようで一気に襲っては来ないけど、確実に近寄ってきている。
「ぁ、………もう終わり…ね。フェルせめて貴女ぐらいはなんとか………。」
フェテシアお母さんが私に覆い被さる様に手を回してくる。
お母さんは魔法も剣もからっきしだがら本当は怖い筈なのに……やっぱりお母さんは凄いな。
「フェテシアお母さん大丈夫だから。」
お母さんの手を抜けて立ち上がる。
「フェ、フェル?」
「[土-五つに-圧縮し-回転し-射ろ]」
私は右手を開きながら前方に翳し、術句を唱える。
私の右手を開きながら前方に翳すという動作は、発動する魔法の形状を槍状にするというイメージを固定化している動作。
そして、[土]で魔力を土に変換、[五つに]で土の塊を五つ精製、[圧縮し]で圧縮して硬度を上昇させ、[回転し]で回転させることで威力強化・軌道方向の安定、[射ろ]は打つだけ。
魔力の消費量は私の感覚で適当に詰め込んどいた。
そして発動するのは【アーススピアー】五連撃だ。
五本の槍は回転しながら近くまで忍び寄っていた五匹の砂漠狼を貫く。
「フェル?」
フェテシアお母さんが困惑したような表情で見てくる。
これは………何て言ったら良いんだろ?
実際は聞いたことないんだけど、私の年齢から考えて最低でも30才位の年齢な筈なのに……可愛い。
ポカンとしてる表情の可愛さと言ったら………娘ながら惚れちゃいそう。
ディルお父さんが羨ましくなってくる。
「安心してフェテシアお母さん。このくらいわけないから。………[ガスよ-酸素よ-圧縮し-混合し-小さき-火で-扇状に-照射せよ]!」
今さっきの五匹を倒したお陰で狼が少し引き目になってる。
逃げられてまた応援を呼ばれても厄介だから一気に仕留める。
だからこそ8句の実戦にしては詠唱の長い魔術を発動する。
[ガスよ][酸素よ]で可燃性ガスと酸素を精製、[圧縮し][混合し]で圧縮して混合させて可燃性ガスを燃焼範囲にし、[小さき]でほんの僅かな魔力を注ぎ、[火で]で[小さき]で注いだ魔力を火に変換し着火準備、[扇状に]で前方60°に魔術方向を指定、[照射せよ]で炎の爆発を撃ち出す。
ダァンンン!!
可燃性ガスと酸素を混合させた状態で発動させたから、火炎放射というよりは、爆発って感じ。
普通、爆発魔法なら[爆風]とか[爆発]とかの術句で発動させるんだけど、それをガスと酸素を作り、混合し圧縮、そして点火という6個の術句を使って、より鮮明にし可燃性ガスと酸素による高威力魔術に昇華できるわけだ。
その衝撃は凄まじく、前方の大地を砕き、石片を飛ばしながら砂漠狼達を消し飛ばす。
因みに[酸素よ]という術句は酸素という概念を知らないからライシュお父さんですら使えない術句。
理系の頃しっかり勉強してたお陰で、時間は掛かったもののようやく使えるようになった。
最初は魔法としてでさえ発動できなかったもん。
というか、イメージだけで発動する魔法じゃ、安定した酸素は精製できないからね。やっぱり魔術はいいね。
「フェル。貴女がやった……の?」
お母さんが困惑しながら聞いてくる。
「うん。…………そりゃ本職には劣るかもだけも私も結構やるんだからね。」
そう告げるとフェテシアお母さんは立ち上がり、私を抱き締めてくれる。
「良かった!フェルが無事で本当に良かった。もう。危ないことはしないで欲しいわ。心臓が止まるかと思ったもの。」
「う、うん。」
お母さん。泣いてる。
そりゃ、魔法も剣も知らないフェテシアお母さんからしてみれば心配するよね。
………暖かい。
もうお母さんに無駄に心配かけないようにしないとな。
でも、何か忘れてるような?
「って!そうじゃなくて、ナサムさん達の所に行かなきゃ!」
そうだよ!向こうは何かデカいボス狼と戦闘中なんだった!
あっ、でも………危ないことはしないで。と言われた直後にこんなこと言ったらフェテシアお母さんが怒る………。
でも、もう反射的に口に出してしまった。
怯えるようにフェテシアお陰での様子を伺う。
「はぁ~。」
私の予想に反してフェテシアお母さんは呆れるように嘆息すると話し出す。
「今の襲撃で馬車は壊されてしまいましたし、また襲われる可能性を考えれば合流するというのも悪くない気がします。それに………剣や魔法を知らない私には分からない世界があるようですからね。」
良く見てみれば豪華な馬車は狼達に破壊されてボロボロ。少なくとももう使えそうにない。
それにフェテシアお母さんの口振りはまるで?
「フェルが戦うことに口は挟みません。………ですが、先程も言ったように危ないことはしないように。…………フェル……分かった?」
「う、うん!……自分に出来る範囲でしかしない。」
「じゃあフェル。戻りましょうか。」




