3話 MRBの出撃
「村長と皆さんはここで待機していてください。自分は外の様子を見てきます」
と言って深龍は階段を上っていった。
階段の途中で避難を呼びかけていた狩矢さんと会った。
「狩矢さん、大丈夫ですか!?」
狩矢さんの頭と肩に雪が積もっていた。
さっき行ったばかりなのに帰ってくるのが早いと感じる。
「あぁ、大丈夫だ、外は凄い吹雪で全部は回りきれなかった。それと、チラッと見たが敵はかなりの重武装だったぞ」
「ありがとございます、皆さん地下にいます」
「あとは頼んだ」
「まかせてください」
そう言って深龍は狩矢さんとすれ違い階段を上っていった。
玄関に向かいドアを開けた深龍は驚愕した。
「マジかよ」
と思わず口にした。
そこは、一面雪に覆われた銀世界だった。
今は吹雪いてはいないが雪が降り続いている。
「少し寒いな」
深龍は上下黒で統一された服装を着ている。上は袖に灰色の二重線が入って胸ポッケとなどが着いたワイシャツのよう服に、下はポケットなどが多めについているズボンを履ている。
そして深龍は新たに魔法で、ロングコートを出した。
それと同時に背中にいろいろな形をした杖を5本ほど装着し装備を整えた。
「さぁ、急ごう」
と口走りそのまま雪の中に走り出した深龍、現場に近づくのにつれ吹雪へと変わる。
深龍は現場に着いたが、地面をみて首を傾げた。
「穴がない、確かここのはず」
雪は積もっているがそこには穴が無かった。
深龍は、スキャニングを使用し周辺を見渡した。
すると、その場所は魔法で穴が塞がれている事が分かった。
(これだけの穴を塞ぐとは、凄腕だな)
すると深龍は、ハッ!?となにか気が付いたが、反応が間に合わなかった。
「おわっ」
深龍は足を掴まれ、ズゴッと鈍い音をたてて雪と地面に埋もれてしまった。
スキャニングで魔法の解析に集中していた為に、敵の接近に気がつかなかったからだ。
だが、敵があっさり出てきてくれた。
深龍にとっては好都合だ、敵の戦力がわかる上に探す手間が省ける。
そして、吹雪のなかから出てきたのは、とても大柄なゴツゴツとした感じの男性だった。
服装は黒地に謎の絵柄が描かれている半袖のポロシャツ、それに青いジーンズ。
筋肉ではち切れんばかりにピチピチな服。
服の上からでもわかるぐらいに、とても鍛え上げられた筋肉。そしてその肌は、柔らかさは無く、岩のような硬い感じの皮膚。
深龍はすぐさまスキャニングを発動して見た。
「はぁ、ちっちぇなぁ。こんなんがたった一人か」
深龍が今スキャニングで行った行為は《 魔法値測量 》というものだ。
その対象となる人の魔法能力を数値化したもので軍や、教育機関、魔導士のランク付けなどに使われる。
現在はいろいろな測定方法があり、かなり正確に数値を出すことが出来る。ある意味、怖い
スキャニングや観測魔法等で測れる。現在は機械により測定するのが主流。
魔力保有量 QMP:7503 平均5800
魔法が使える魔力量、魔法の保有量≒体力とされている
魔法発動速度 MMS:0.990 平均0.760
魔法の発動速度である。魔法元素が起動式を読みとって魔法として発動するまでの時間。
魔法干渉力 MIP:1450 平均780
魔法が物に対する干渉力≒魔法の威力
魔法種類で若干変化する
魔法干渉力の数値が高いと発動速度が遅くても魔法の相打ちとなった際に上書きが出き、相手の魔法を退き発動する事ができる。
この結果からこの大柄な男は、魔法の発動は遅いがそれを干渉力でカバーし後出しで相手を退けることができる。干渉力が平均の倍近くあるので魔法の攻撃も強い。
(クッソ、意識が……遠のいていく。寒さの……せいか……。いや、この雪……何かおかしいぞ)
「まぁ、魔導士は見かけで判断してはいけないって、女王が言ってたか?」すかさず、横に黒い服を着た人が現れ、
「ロット様、早く次の場所へ」
彼は深龍が来た次の日にフーぜと共に観察していた、魔導士のロット・グロークスだ。
ロットの周辺には、顔を覆うぐらいに大きなマスクにフードの被った、黒字に赤のラインが入った服装の敵の魔導士部隊がぞろぞろといる。
その肩にはⅢと書かれている。
「まぁ待て。お前そこで聞いてな! この街が崩壊する音をな!!!」
そして振り返り、
「ゲハハハハ!!!!」
と大きな声をだしながら笑い立ち去った。
「いっ……たか。ヘッ……ド……ギ……ア、転……そ……う」
深龍はロットが去ったの確認するや、白いヘルメットが深龍の頭を覆った。
目の前のディスプレイには赤文字で ー WARNING ー と点目している。
深龍は意識を失いそのまま、
ドサッ――。
顔が雪の中に埋まった。
――警告、警告、体温が著しく低下、体温が著しく低下。直ちに回復処置を施してください。でなければ人口冬眠に入ります――
と男性の機械的な音声が流れる。
「意識、リン……ク……」
――意識リンクしました。一時的に意識をジャンプします。体を人口冬眠に移行します――
深龍の顔が雪の中に埋もれた。
その上に雪が積もり、心拍が下がり、体温が下がり人口冬眠に入る。
――スターズネットワークに意識をリンクしました――
「よし、なんとか間に合った。
さて、ジャックMRB - TpΑ 01・02 MRB - TpB 11・12、出撃」
――出撃確認。到着までおよそ25分――
「25分かぁ――。ジャック、一応軍にも出動要請を頼む。それとADR - 0X を地点Bに転送、そこに意識をダイブする」
――了解――
場所は現実空間に戻る。
場所は村の入り口とは逆で森のなか、この場所は雪の影響は受けていないようだ。
そこに、魔法陣が展開され右膝を地面につき左足を立てて下を向いたままの状態で深龍に似た人の模倣物が黒いスーツに身を包んで現れた。
――ダイブ完了。起動システムをダウンロードします――
「おっと、ダウンロードまだっだたか……」
深龍の目の前は真っ暗。そこに黄色い横長の枠が現れ、それと同時に文字と数字が動き出す。
1% 残り99%
ロード完了まであと22分11秒、10秒、9秒...。
[4]
ここは光和国にあるとある軍の基地施、場所は中央指令室。
部屋の中は少し暗く、モニターが沢山設置されておりその前には人が座っている。
突如として赤いランプが光りだし、それを知った隊員がチェック作業に入る。
「将軍! 緊急回線からの援護要請です」
「緊急回線だと!? 何番だ?」
「それが、88番なのですが、わかりますか?」
「88! 本当か!? 内容は?」
番号を聞くと将軍の顔色が替っわた。
このご時世、他国との戦闘はほとんど起きない。他国の謎の船の接近や航空機が領空内に侵入した時のスクランブルは少なくはないもの、緊急回線が使われる事はほとんど無い。
それも普段の隊員では聞いたことのない回線番号。
しかもその番号はある人物しか使わない緊急回線。
「内容は――――、」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
――特88小隊、緊急招集、緊急招集。ブリーフィングルームに集まってください。繰り返します。特88小隊、緊急――、――
アナウンスが建物全体に広がりざわざわし始める。
「特88って対魔導士特殊部隊じゃね」
「なにかあったのか?」
その辺りの一般兵たちが少しざわつき始め、そのなかを何人かが走り去る。
第80対魔導士戦闘師団のなかある10小隊のうちの一つ特88小隊。
特が付くのは対魔導士戦闘を得意とする部隊に付き、他の部隊との混同を区別する為に用いている。
ある部屋に30人近くの兵士が椅子に座っている。
皆顔が引き締まり、鍛錬をよくしているように伺える。
兵士の座る椅子の目の前にはスクリーンがあり、グレントウ村の全体図が出ている。
少し歳のとった男の軍人が現れ、少し騒ついている。
「なぜ、司令がきているんだ?」
騒ついた中に太く重たい声が響く。
「全員集まったな。今からブリーフィングを始める。大柳中佐説明を頼む」
野太い声がある人物に話を振った。
背の高い、少し濃い目顔立ちの大柳中佐に変わる。
「はい! 時間がないので手短に言う。
先ほど10分ほど前に緊急回線による救援要請が入った。
内容はこのグレントウ村に、闇ギルド《ブッラドスコーピオン》のメンバーがおよそ100名出現したとのことだ。
防衛にあたっている魔導士からは『7、8割は対応が可能と言っており、残りの2、3割が対応できないため援護を求む』だそうだ」
つづいて別の隊員が話をはじめる
「部隊編成は端末に送信しているから確認をしてくれ。
第1から第4分隊各5名、計20名は大柳中佐小隊長の指示のもと行動。残りの第5、6分隊各4名、計8名は桑野副小隊長と回収地点で待機」
司令長官が話始める。
「今回の闇ギルドでは我が同胞もやられている。が、今回はこのチームなら勝てる踏んで承諾した。
至急、対魔導士装備を装備し10分後、13:00に出撃する。
あとの詳しいことは機内で説明する一刻の猶予もない至急準備して出撃せよ以上だ!」
全員が起立し敬礼をした。
場面が兵士の待機場に変わり各隊員が準備を滞りなく進めている。
――魔抗弾の使用を許可します。繰り返すます。魔抗弾の……、――
アナウスが何回も流れている。
黒いボディーアーマーを着用し、自分が使用する銃の弾倉を後ろの箱の中から取り出し、マガジンポーチにセットする。
他にもグレネードや、医療キットなどを装着し手早く準備を進めている。
「魔抗弾かぁ、敵は殺せないのか」
「なぁ」
「なんだ?」
「救援要請をした魔導士って何人ぐらいだ?」
「100人に対して7、8割だから2、30人はいるんじゃないか?」
二人の兵士が話をしながら別の作業に移っていた。
カチャ、カチャ、カチャと。
腕に何かディスプレイが付いたプロテクター的なものを装着し操作を始める。
ピッ、ピッ、ピッ、ボタンを押す。
ヒュイーン。
プロテクターの周りに輪っかが出現し、すぐに霧散する。
そう、この装備が魔導士と戦闘を可能にしている。
「展開、セットよし! 異常なし! 弾薬よし! 準備完了!」
「展開、セットよし! 異常なし! 弾薬よし! 準備完了!」
と次々と同じ声が聞こえてるくる。
場所が変わって外の駐機場に続々と隊員が機体に近づく。
「時間ないぞ、急げ!!」
そこには、ティルトローター機(VTOL機)が2機と護衛の戦闘ヘリがプロペラを回して待機していた。
そこに次々と兵士が乗り込んでいく。
兵士の乗り込みが終わり、後ろのハッチが閉まる。
プロペラの回転数が上がり、戦闘ヘリが離陸、そしてその後をティルトローター機が離陸する。
「目的地到着まで、25分です」
「よし、全分隊員に通達。目的地到着後、第1、第2分隊は村の北側から侵入。第3、第4分隊は村の南側から侵入し行動開始。
第5、第6分隊はのちにくる輸送部隊のために着地地点で確保し待機。
敵は武装している模様だ、敵さんはこちらを見て容赦なく攻撃をしてくるであろう。だが、手を引く事はない。全力でこれを排除せよ!
以上だ!!」
大柳中佐がいった。これを皆静かに聞いていた。
各々、どんな心境であるかはわからないが、皆同じ思いである。
これ以上闇ギルドに好き勝手はさせない、と。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
村は闇ギルドの進行で殆どの建物が半壊、全壊していた。
そういろいろな、多種多彩な魔法により、壊されているのだ。
ある者は風の魔法で家を薙ぎ倒し、ある者は炎の魔法で燃やし、ある者は爆弾で壊しなど。
ピッ
51%。残り49%
ロード完了まであと11分
だが、妙な事にここの戦闘では血痕や血しぶき、血生臭い匂いはなく。
人の喚き声や涙、悲鳴もなかった。
そして、時間が経つにつれ、物が壊れる音がだんだん小さくなる。
システムダウンロード完了。
インストールに移行します。
また黄色いゲージが出る。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
上空。
2機の戦闘ヘリと2機のティルトローター機が静かに飛行していた。
魔法により音を遮断している。この魔法は隠密行動などをするときに使用され遮音性が高い。
音を遮断をしているが、機内には空気を割く音は聞こえている。
そしてコックピットに視線がいく。
丸い緑色のレーダー、三角で青く示される4機。
「ん? レーダーに微弱だがなにか反応があるぞ」
後方から来る、薄く赤く映る細長いもの。
「高速でこちらに接近する反応あり! このままでは回避行動」
後ろからもの凄い速さで迫ってくる。
それは、灰色の飛行物体。
早くて物体は目で捕らえられないが、深龍が呼んだMRBである。
その数は4。4機は編隊組んで飛行している。
――前方に軍の航空機を確認。回避します――
後ろから接近し軍隊の航空機4機を追い抜いていくMRB達。
「行ったか、なんだったんだ」
――目的地まであと3分――
――地形データリンク……、リンク完了。 敵情報受信――
『各機に通達、識別不能は回避し、行動せよ。敵と遭遇したら戦闘開始以上』
深龍がそう言った。
――了解――
すると4機は2機づつに分かれ散開した。
そろそろ戦闘が始まります!
お楽しみに〜