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2話 偵察と襲撃



 深龍が村に訪れてから次の日の夜、静寂に包まれた林の中。

 場所は村の外れ、外周の塀から少し離れた、小高い山の頂上付近。

 ここからは村が一望できる。そこに一人、細身の男が音を立てずに村を見つめていた。


「フーゼ、こんなところで何してんだ?」


 低く渋い声。

 体重は100キロは超えているだろう、大柄なゴツゴツとした外見の男。彼がフーゼという男に声をかけていた。フーゼはすらっとした長身の少し目つきが悪く吊り上がった、キッリとした顔つきのハット被っている男だ。フーゼが声のする方に向く。


「ロットか、俺は次に耕す村の偵察をしている。少しかがめ、見つかるだろ」

「お、おう……」


 フーゼ・バードス、闇ギルド《ブラッドスコーピオン》のメンバーの一人、得意魔法は『風』系統。

 ロット・グロークス、闇ギルド《ブラッドスコーピオン》のメンバーの一人、得意魔法は『ロックムード』岩を扱う魔法。

 ロットはフーゼの隣に座り込み大きな体を小さく丸めた。


「へー、次はあの村ですか?」

「あぁそうだ。まだ軍隊の連中は来てないが、多分もう把握していると考えた方がいい」

「そうですか。でもなぜこの村を?」

(しょ)に書かれていたのと、それにあの村は希少な鉱石も手に入る。それはギルドの強化にも繋がる」

「俺は、(しょ)ってのが気になるがな」

「あっ、それとだ。

 魔導士が一人、大荷物を持ってこの村に来たようだ」

「ほ~ぉ、魔導士かぁ。まぁ軍人相手よりかは、楽しめそうだな」


 ニヤニヤしながらロットが言う。

 ここ最近の戦闘では軍隊しか相手していなくて、歯ごたえがない相手としか戦っていなかったからだ。

 二人は静かに会話しながら、村を観察していた。そこに、後ろから迫る影があった。


「フーゼ、ロット!」


 突然後ろから二人の名を呼ぶ、聞き覚えのある女性の声。その声は冷徹が似合うだろう。

 それと同時にひんやりとした冷気が辺りに漂う。


「女王っ!?」


 声と冷気に気がつき振り向いたロットがそういうと、フーゼも振り向いた。

 そこには、黒く丈の長いダッフルコートに身を包んだ、腰までの長い髪に大人びた顔つきの美女が立っていた。身長は170cmほどで細く長い。

 驚く声をだすロットに比べて、フーゼは冷静な口調でその名を呼んだ。


「スフィアどうした?」

「どうやらこちらの動きに気づかれたようだ、帰るぞ」

「えっ!? そうなんですか女王っ!?」


 スフィアという女性もこの周辺を調査していようだ。

 スフィア、闇ギルド《ブラッドスコーピオン》の幹部メンバーの一人、ほとんど情報が出ていない。

 ロットがそう言うと、スフィアは辺りに冷気をただよせながら、ロットの頭をワシ掴みして――。


「次にその名で呼んだら、氷漬けにするぞ」


 と上から目線で冷気が混じりながら言い放つ。殺意は出ていないが、その声からは殺意を感じる。


「す、すすすみまへん」


 そう言うと、3人は足速にその場所を退避していった。




 3人が去った十数秒後にある男が同じ場所に来た。


「くっ――。

 逃げられたか……」


 到着したのは深龍だった。ここには人がいた形跡があえり、辺りの空気がひんやりとしている。

 そのまま深龍はその周辺を見渡した。そうすると複数の足跡と、少し冷んやりし一部地面が凍っているのが確認できた。


「んっ!!」 


 よく観察すると少しではあるが、地面が凍っているのを確認できた。すると深龍の両目が少し変化し、薄緑色に変色する。《スキャニング》を使用したのだ。

 スキャニングとは技能士が使用する特殊能力である。スキャニング中は脳内に、周囲の情報をデータ化、数値化してその場の状況を知ることが出来る高等技法である。基本的に技能士が使用する能力のことを技法と言う。

 また、別の使用の仕方としてレーダーの様に使用することも可能である。※ただしスキャニングを使用中は他の能力が低下します。


 ―― 分析結果 ――

 異なる足跡:5

 新規足跡:3


(3人組か足の大きさや踏み跡の圧などの計算結果から推測するに、1人が大型な男性、もう1人も男性で細身。残りの1人は女性と……。こんなところか)


 辺りの残留魔法から推測できるに、この場所で使用されたのは系統魔法『水』、その中で氷又は雪の魔法。


「襲撃してくる相手が氷か雪だと、少し厄介だな」


 深龍はここにも監視用の魔法陣が組み込まれた杖を地面に突き刺した。それと同様の物が村を囲むように何十個も設置した。

 これにより、不意に近づいてくる者を感知する事が可能となる。




 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  





 不信な足跡を見つけてから二週間が過ぎた。その後は特に目立った出来事は起きていない。

 この2週間は平凡な日々を深龍は過ごしていた。朝7時に起きると、毎日用意してくれる朝食を食べ、その後は朝の運動を村の子供らとし、魔法を教えたりしている。 昼を食べ終わると、地下室に行き自分の研究と村の監視をして夜を迎える。 夜にまた外に出て村を少し離れ、村の男たちと組手をして村長の家に帰り寝る。

 そのような充実した1日を毎日過ごしている。日記を付けながら。


 今日も深龍(しんかみ)は村長の家の地下室に居た。

 机の上に直径6mもある大きな円、この街の立体地図としてホログラムで映し出されている。

 建物は青色で、この村の人は緑色の雫の様な形で、あちらこちらで動いている。

 この村の人以外だと、黄色く表示され、なおかつ魔導士だと赤くなる。

 そんなものを深龍(しんかみ)は眺めていた。


(これってプライバシー侵害だよな……)


「ジャック! 監視モードをバックグラウンドに移行。なにか異常があれば連絡してくれ。俺は少し外で作業をしてくる」

『了解しました』


 深龍は違う机の上に置いてあった、銀色のヘルメットみたいな物と、アタッシュケースを持って少し長い階段を上って行った。

 この地下室は避難シェルターを兼ねて作られているため地下深くにできている。

 家から外に出ると人が行き交っていた。動物も複数いる。空は太陽がサンサンと輝いて

 深龍は一緒に持ってあがってきたケースを開け、パーソナルコンピュータなる者を取り出し、ヘルメットにコードを繋げ、キーボードを使い打ち込み始めた。

 このヘルメットみたいなのは、《ヘッドギア》と呼ばれるもので、人間の意識を仮想世界に送り込む装置である。

 軍事的においてヘッドギアの使いかたは、ヘッドギアを装着した人間《兵士》が無人機などの機械と接続し操作することに用いる。

 もちろん、これは科学側の装置である。


「これはなんですか?」


 深龍が操作していの不思議な目で見ながら、声をかけてきた男性が一人いた。

 体型は180cmで体重は80kgは超えているだろう、筋肉が凄い。

 忝赤 狩矢(てんせき かりや)と言い彼は村長の息子でこの村の副村長の任されており、村の警護班班長でもある。深龍にとってはこの村の中で一番と言えるほど頼もしい人だ。それにここの住人にも人気が高い。


「パソコンとヘッドギアですよ。初めて見ますか?」

「現物は初めてです。そういやこの前のニュースで取り上げていましてね」

「よくご存知で!」

「村の警護のなにか役に立たないかと思ってたり……」


 少し笑気味に言った。


「ところで何をなされているのですか?」

「このパソコンでヘッドギアにプログラムを書いているんですよ、魔法式も込みで」

「プログラムですか?宴会とかの?」

「いえいえ、魔法式を01と文字に変えて発動の仕方などを打ち込んでいるんですよ」

「……。わからない。こんなに難しいのか……。買うのを考えるな」


 少し落ち込んでいる狩矢。

 狩矢にはわからない事だらけで、本当にどうしようか迷っているようだ。

 深龍はそれ見て、言葉を続けた。


「これは自分で作ってるからですよ。出来上がった物だと誰でも使えるようになりますよ」


 深龍はそう言った。実際にはまだ研究段階で一般販売されていない。

 もし完成すれば、いろいろな使い道があるだろう、戦闘以外にも。


「しん兄ちゃん!魔法教えて~~」


 深龍と狩矢が話していると、村の子供達がぞろぞろと集まってきた。

 いつもこの村の子供達に魔法を教えているのだ。

 本来深龍はあまり周りの人とは関わりを持たない。最初からそのつもりでこの村に訪れていたのだが、そう言うわけにはいかなく護衛するのであれば、ある程度住人との仲を深めておく必要があると思い村長の意向もあり、このように稽古をつけている。


「まてよ、これが終わってからな」


 と、深龍が言った。




  [3]




 この村で護衛を任されているのは1ヶ月の間、その後は交代で他のギルドのメンバーが護衛をする事となっている。

 そして何事もなく、たまには不審な影を目撃したものの、特に何もなく1ヶ月が過ぎた。


 深龍は最終日に村長の家でお別れ会をしていた。


「いやぁ、何事もなくてよかった」


 村長は手に酒を持ち、それを飲みながら言う。

 村長の家族が皆集まっていた。


「お義父さん、まだ安心できませんよ」


 忝赤 典子(てんせき のりこ)狩矢の妻である。

 確かにその通りである。


「そうだよ、お爺っ――!!」


 その時だった!


 

 ドゴオオォォォォン!!!!

 



 大きく重たい地響きと共に地面が激しく、村長達は椅子から落ちて、床に伏せ頭を抱えている。

 揺れは、縦にも横にも20秒ほど続いた。



 「一体何が起こったんだ!?」


 村長が叫ぶように言った。

 深龍(しんかみ)は揺れがおさまると、直ぐに立ちあがり周りを見渡した。

 先ほどの揺れにより机の上にあったお茶やお菓子は地面に落ち、無残にも粉々に砕けていた。


狩矢(かりや)さん! 村の人に緊急避難指示をお願いします。練習通りに、落ちついてと」



 深龍は机にしがみついて辛うじて立てている男、狩矢に声をかけた。


「おう! 任せろ!」


 と言うと狩矢は玄関の方に駆けて行った。


「皆さん地下へ、あそこはシェルターもかねていますから」


 忝赤 典子(てんせき のりこ)、狩矢の妻が深龍の言葉に続いた。


「急ぎましょう」


 深龍と村長たちは、地下の監視室に行った。

 地下に全員が入ると深龍は扉を閉めて、大きなテーブルの前に立った。


「ジャック! フィールドオープン! スキャン開始!」

『了解しました』


 すると、直径6mの机の上に村全体の魔法を用いてフォログラムが現れ、被害状況が写し出される。

 緑に赤に。



 ―― 被害状況 ――


 半壊家屋:25

 全壊家屋:9

 死傷者不明


 と表示されている。

 そして、村の中心から少し外れた所にある噴水広場に大きな穴らしきものが写っている。その穴は不自然なほどに丸く綺麗な穴だ。



「ジャック、敵の進行度をスキャン」

『スキャン開始』


 マップに波が生じる。

 スキャンをしている最中だ。


『敵性勢力未確認、進行度0%。

 地上に敵と認識できる、人物または生き物は確認できません』


 そう言った直後だ。


『魔力反応を確認!』


 徐々に噴水広場の近くの大きな円の中が赤く染まり始める。

 そして――


『敵勢力出現! およそ四方向にむけて展開中。敵勢力数200、』

「ジャック、危険度識別!」


 識別が開始され、マップの端に棒グラフが出現しそれぞれ色別された棒が伸びていく。

これは敵と思われる魔導師の危険度をグラフ別で識別している。


『危険度ランクD:120 ランクC:50 ランクB:25 ランクA:4 識別不能:1 です』


 グラフが上がりきると深龍の顔が曇った。

 予想以上の敵の数と、高ランクの魔導師の存在。

 ランクはD、C、B、A、Sの五段表示される仕組みになっている。だがS以上の実力をもつ魔導師は識別できない。

 もしくはD以下の可能性がある。だが今回は場合は前者だと思われる。


「識別不能か、少しやばいかもな。

 ――ジャック、M R B(モロバ)を、対魔導士戦闘用で出撃待機」


『了解』




  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  





 街から少し離れた住宅外の片隅の小山にある大きく、白が基調としている壁の外観の家。

 その家のリビングで、天翔 星那(てんしょうせいな)、深龍の妹がベージュ色のソファーに座って、本を読みながら(ファッション誌)紅茶を飲んでいた。

 机にはちょっとしたお菓子も置いてあって、ちょうどティータイムのようだ。

 するといきなり、


 ウィーン! ウィーン! ウィーン!


 と警報が鳴った。

 星那は慌てて手に持っていた紅茶を机に置いた。


「な、何事!?」


 星那は顔を左右に振りながら言った。


M R B(エムアールビー)、コード、 - M 2 2 0 0 1 - B W 9 、認証。マニュアルコード、 - F R 0 4 』


 女性声のアナウンスが入る、いきなりで星那がびっくりしたようだ。


「えっと、

 あ、ロックを解除しないと、マニュアルコードだっけ?」


『マニュアルコード、 - F R 0 4』

「了解ですお兄ちゃん!」


 星那は立って、足を揃えて、五指を揃えて敬礼をした。



襲われた村、深龍が呼ぶMRB、

敵の魔導士との戦闘が始まる!!


お楽しみに〜


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