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放課後、何故か話しかけてきた女の子と帰ることになった。
男女が一緒に歩くことが普通に出来る現代って素晴らしい。
嗚呼、生まれ変わって良かった。
その途中、コンビニで買い食いすることになり二人して肉まんを買った。
肉まん、いわゆる饅頭で思い出すのが・・・
何曾殿だ。面識は無いのだが、食道楽で有名であったらしい。ついでに言うと贅沢三昧の生活だった
とかなんとか。はぐはぐ饅頭を食べている女の子って可愛いよな。
「そういえば饅頭って諸葛亮が作ったって言われてるよね?本当かな」
そうなのか?何やってんだ、大軍師。
あ、当時の事思い出した。
友人から聞いた話なのだが、
「おい、知ってるか?司隷校尉の何殿は宮中の食事すらまずいと言って食べなかったそうだ。
一日の食事に一万銭もかけていたのだから凄いよな。それなのに好物は蒸餅で表面が十文字に割れて
いないと「この蒸餅を作ったのは誰だあ!」と厨房に殴り込みに行ったこともあるそうで、作った奴は
首になったそうだ。怖いよな。」
当時は「饅頭」ではなく「餅」と言ってたんだよな。
小麦粉で作ったものは全部、「餅」。
呉では米のほうが多かったので俺はあまり食べたことはないが呉が滅んだ後は良く食べていた。
俺も市に出ている「胡餅」を買ってよく食べたもんだ。胡麻がのっているのがいいんだ。
後漢の霊帝も胡餅を食べたらしいな。ああ、食いたくなってきた。
「帰ったらさ、俺もちょっと三国志のゲームやってみるよ」
「あれ?三国志のゲーム持ってるの?さっき詳しくないとか言ってたよね」
「じいちゃんがさ、TVゲーム好きなんだよ。もしかしたら持ってるかな~と」
「ふうん?おじいちゃんゲームするんだ」
「昔~~大昔のゲームとか未だに残ってるらしいんだ。親父がそろそろ処分しろって言ってる」
「そこまでなんだ・・・」
その後彼女と別れ、家に帰りついた俺は祖父の書斎に行った。
祖父は若い頃TVゲームが好きだったそうで(今も好きだが)色んなハードを持っている。
俺は・・・ちょっとああゆうのが苦手だったのであんまりやったことがない。
「じいちゃん、あの三国志を題材にしたゲームって持ってない?」
「帰るなりいきなりなんだ、お帰り。挨拶くらいしなさい」
「ただいま、じいちゃん。んで、もってんの?」
「あるにはあるが・・・何だ、興味持ったのか?」
「ああ、うん・・・ちょっと今日、学校で同級生の女の子と三国志のゲームの話で盛り上がってさあ~。んで、もっと仲良くなるにはゲームの知識を身に着けたいと思って」
「このエロ餓鬼・・・まあ、いいが・・・どれ、ちょっと待ってろ」
本当は前世の父親の顔が現代ではどんな描き方なのか知りたいんだがな。
思わずもう一つの目的のほうを言ってしまった。年頃だから、俺。
数分して戻ってきた祖父はでかいキーボードを持ってきた。なんかごついな。
「よっと、待たせたな。ほれ、これがゲームだ」
そういって何かを投げてきた。手に取ってみるとプラスチック製で下部が空いていて金属部分が見える。なんだこれ?
「じいちゃん、これナニ?」
「ゲームカセット」
「は?」
「んじゃ接続すっか。ビデオ端子はっと・・・ああ、あった。部屋のTVが古くてよかった。
最新のはビデオ端子とか無いからな。ケーブルケーブル~」
何故か機嫌が良い祖父。鼻歌まで飛び出している。
「よっし、じゃあそのカセットここに差し込め」
「え、刺すの?」
「いや、刺すんじゃなくて差し込むんだよ。貸してみろ」
そういってキーボードにカセットを差し込む祖父。何でキーボードに穴空いてんだ?
「電源ONっと、ほら立ち上がった。凄いなMSX未だに動くか」
「MSX?」
何だろう、車かな?そう思っていると、TV画面にでかでかと「MSX」と表示され、
間抜けなメロディと共に「三国志」と妙にカクカクした文字で表示された。
何だこれ?
「じいちゃん・・・なにこれ・・・なんか凄くレトロチックなんだけど!それにこの音!
いつの時代のゲームだよ!」
「じいちゃんの青春時代が詰まったパソコンだぞ?30年以上前だな」
「古っ!」
道理で古いわけだよ。「スペースキーをおしてください」だと?ほれ、押したぞ。
「らんすうをけいさんしています すこしじかんをおいてなにかキーをおしてください」
・・・・・・ひらがなばっか。
「じいちゃん何でこれひらがなばかりなんだ?読みづらくない?」
「ハードの限界だな。当時は最先端だったんだがな」
そりゃどんなものでも出た当時は最先端だろうさ。でもこのご時世にこれはないだろ?
それにしても古い・・・キーボードだと思ってたけどこれがパソコンの本体なのか。
アナログ感が凄いな。
何か思ってたのと違うけれど一応、三国志のゲームだしやってみるか。と思った俺が馬鹿だった。
目的である父上、周魴のキャラクターデザインを見る為に呉を選んで何故か君主である孫権様の
ステータスをスペースキー連打で決定させてゲームを開始した。
コマンドは1から13までの番号を入力させて行動するらしい・・・。
すっげえ面倒なんですけど。コントローラとかないのか?
「賈詡引き抜け、賈詡」
外野が煩いので無視することにした。
「賈詡引き抜くのは定番なんだぞ?」
知るか。
ちょうどでコマンド武将を見ることができるようなので見てみたんだが・・・。
父上が居ない・・・。呉に居ない・・・。何故・・・?
「じいちゃん周魴って呉に居ないんだけど?」
「なぜに周魴?在野にいるんじゃね?もしくはもっと後の年代にならないと出てこないとか?」
「まじかよ・・・」
その後1時間位過ぎた・・・。
「じいちゃん疲れたからもうセーブしたいんだけど」
「セーブか。無理」
「え、何で?」
「ケーブルが無い。カセットテープもないしな。さらに録音できるカセットデッキもないからな。
お手上げだな」
「言ってることが全く分からないんだけど」
「だろうな、昔は磁気テープにデータを「録音」してセーブしてたんだよ。すげえだろ?
たまに失敗してデータ消えるんだぞ?あれは泣ける」
「なにそれ怖い」
セーブは諦めた。ゲームの操作にも疲れた。二度とやらない。
その後父上がどんな顔してたか祖父に聞いた。
「覚えてないな。モブの使い回しのキャラ顔じゃないか?出てくるならだけど」
切ない。
餅という表現は漢の宣帝の時代からあったそうです。
後漢の呂布も胡餅を振舞われたという話があります。