検索弐
さあ、子隠の正体とは?
いやいやいやいや、アルミニウムってあれでしょ?空き缶。
あと、紙みたいにうっすいアルミホイル。・・・そのくらいしか思いつかない。
いまの時代は凄いな。あんなに金属を薄く出来るのだから。
しかし1700年以上前にアルミニウムがあったとは知らなんだ。
流石です、中国大陸。伊達に四千年の歴史を誇っていない。
おっと、感心してばかりはいられない。
なぜそんなものが俺の墓に副葬品として入れられてたのだろう。
当時は銀細工のものが多く俺も多く使用していた。
だが、知らずにそんな貴重そうなのを俺は使用していたのだろうか?
それとも息子達が気を使って珍奇なものとして墓にいれたのだろうか?
うーむ解らぬ。
このとき俺はまだ幼く(この当時はいまだ元服すらできぬ年齢だった)それ以上を考えることは出来なかった。
そして年月が経ち学校という所に通うようになった頃、俺は中学生になっていた。
その頃にはベルトのバックルの事も忘れ。日々を送っていた。
しかし現代は面白いな。色々な物語が本として存在する上に電子書籍なるものまであったりする。
とてもとても興味深い。
勿論、三国志演義も読んだ。俺の父上、周子魚が出ているからな。
石亭の戦いで曹文烈を計略で陥れ呉を勝利に導いた、
そう、あの姓は周、名は魴、字は子魚だ。
凄いなあ父上。
しかし出番すくねえ・・・。
ま、仕方ないか。呉だし。
演義は蜀が主人公だからな。
おっと自分の事を紹介し忘れた。
今更ながら、俺の名前は姓は周、名は処、字は子隠と言う。
演義には出てこないが、三国志呉書の周魴伝の末尾に「息子の周処にも、文事武事を兼ねた才能あり」と書かれているんだ。
うむ、ちゃんと正史も読んだのだ。
そして知った。
息子の三男、周札が悪事を働いて王(敦)処仲に誅殺されている事を。
愚かな事をしたものだと思う。しかも一族まで殺されておる。
せめてもの救いはもう一人の息子である次男、周玘は栄達し、揚州の豪族になっているそうだ。
そういった事柄を知れるというのは実に凄い事だと思う。
普通ならば死後の事など知る術などありはしないだろう。あるとすれば神仙の世界での事だろう。
そんな感じで歴史を調べるついでにあるジャンルに行き着いた。
ラノベである。
唐突だが気にしないでもらえると有難い。
いや、このジャンルは面白いな。己の空想を最大限に表現する手法。
いや、とても興味深い。怪力乱神を語らずなどと言ってられない。
多種多様な設定、個性豊かな人物。その中でも俺の興味をもっとも引いたのが、
、タイムスリップや過去に生まれ変わる話だ。
も、もしかして現代の誰かが俺が生きていた時代にタイムスリップする、または過去に生まれ変わる
。そんな事が現実に起きたのではないのか!?
そしてアルミニウム製のベルトのバックルを持って行った、または製作した。とか?
そんな愚にもつかないことを想像してしまった。
俺、ちょうどそのとき中学2年生だったんだ。
ありえない、ありえない。と思いながら、いやでも実際にアルミニウムが墓から出てるんだから
ありない話でもないだろう。と思い込むようになってしまっていた。
その根拠になる自分の体験。そう、生まれ変わりだ。
記憶を持ったまま新しい生を受け生きている自分こそがその証拠だと。
そうして妄想の翼を大きく広げていたある時、真実を知ってしまった。
両親から遂にスマホを所持する事を許されたあの日。
これで自由に検索できるぜ、ひゃっほう!などと喜び勇んでまずは前世の自分を検索した。
・・・自分の知名度は現在どのくらいあるのかを、な!
そうして検索した結果が600万超えの結果だった。
・・・ほほほう・・・知名度あるじゃないか。父上よりも上じゃないか。
もしやこれは俺の墓からアルミニウムが出てきたお蔭ではないか?
アルミニウム万歳だな。
そう思いながら色々なサイトを見ていたのだが、あるHPで衝撃の事実を知った。
『ああ、周処と一族の墓のアルミニウムな?あれ墓泥棒が売るときに現代の物を混入させてたんだよ。一括して売ったら偽物でもばれないんじゃね?多分』そんな風な事が書かれていた・・・。
・・・つまりアルミニウムは元々墓には入ってなかった、と。
あ、あは・・・あはは・・・。うちの墓に墓泥棒。
はあああああああ・・・・・・・・。
検索するんじゃなかった。
いやああああ!恥ずかしいいいいいいい!
な~にが記憶を持ったまま新しい生を受け生きている自分こそがその証拠だと。だよ。
酷い中二病だわ。
周処さんの明日から使ってはいけない墓泥棒豆知識のコーナー。
雷が鳴り始めたらチャンスターイム。
君が立っている場所の地下に墓があるなら雷が落ちた時の振動を感じろ!地下の空洞が振動している
はずだ。
当たるも八卦当たらぬも八卦。
中国では古代から風水で子孫繁栄を占って墓を作った。なので風水で検索!
ついでにその土地に名士がいるかどうか聞いてみよう!いたとすればでっかい墓がある可能性大!
まだまだあるけれどそれはまたの機会に!
ちなみに中国では
重要文化財を盗んで、情状が悪いと
死刑。
三級文化財を盗んだ者は三年以下の懲役刑および罰金
二級文化財を盗んだ者は三年以上十年以下の懲役刑および罰金
一級文化財を盗んだ者は十年以上もしくは無期懲役および罰金もしくは財産没収。
怖いね!
・・・現在の中国でも盗掘は行われてしまっています、悲しい現状ですね。