第5話
不思議だ。
「とっても不思議だ。」
なにが不思議かって?それは当然
「また朝だ。」
そう。朝寝たのに朝なのだ。
原因は分かっている、
そう、布団が気持ち良すぎたのだ。
二度寝、三度寝最高。
人間の七つの大罪とやらに怠惰が存在するが、確実に布団が原因だ。私は悪くない。
「うーむ。いい天気。」
窓を開けて空を仰げば、とても心地よい青空が広がっている。
時間はお昼ごろ・・・と言うわけか。
詰まる所、私は丸一日寝ていたことになる。うん、怠惰。
まだ少しばかり布団に惹かれる思いはあるが、喉も渇いたし、おなかもすいた。
一階へ降りながら今日の予定を考える。
まず、予定日まで残りは五日間。
まずは服を買い換えたい。馬車旅とここまでパンツすら変えてないので、本当に気分が悪い。
不思議かもしれないが、この世界の人は余り風呂に入らない。
そもそもお湯を沸かす事自体がかなり高価なことなので、殆どの人が銭湯などの施設に通うのだが、銭湯自体もそこそこの値段がする。そのため毎日入る人は少ない。
しかし、私は前世は毎日お風呂に入っていた綺麗好きだ。早く風呂に入りたい。
が、替えの下着も替えの服も無いので買い代えるのが先決だろう。
「いらっしゃいませ。お客様。朝食が出来ましたので、いかがでしょうか?」
「ありがとう。貰うわ。あと、新聞を置いてあるかしら?」
「えぇ、置いてある物をご一緒にお持ちしましょう。テーブルでお待ちください。」
1階に下りると、ホテルの従業員に朝食が出来ている事を伝えられ、ついでに新聞を頼む。
この世界の識字率はそこそこだ。全員が読めるわけではないが、大人の半数以上は読める。
「お待たせしました。コーヒーとサンドイッチ。そして新聞です。」
「ありがとう。」
「では、ごゆっくり。」
新聞の内容はいたってシンプル。日付と今後3日間の天気予報。そして最近の王都内で起きた事件などが簡潔に纏められている。
ちなみにテレビは無いのでテレビ欄はない。
新聞のお目当ての欄は、広告だ。
新聞は活版印刷で、大量に作られる。しかし、それなりに値段が高くついてしまう。
その為、いくつかの大企業から出資を募り、お金を徴収して広告を載せる。
何枚か新聞をめくると、目的の広告が載っていた。
(騎士団入団試験。朝0900より受付開始。実技試験を行い、実力を示す。対象年齢12歳以上18歳以下。武器の持ち込み自由。)
騎士団。国の中での犯罪対応や、国の防衛などを行う、前世なら警察と自衛隊を足したような組織。
給料はまぁまぁ、良い。
「あ、コーヒー美味しい。」
貰ったコーヒーを飲むと、しっかりコーヒーだった。
何処で作ってるのだろうか?コーヒーの原材料が出来るのは・・・、ここだとわからない。まぁ、美味しければ問題ない。
サンドイッチも野菜の新鮮さが凄い。うまい。
しかし、どうしても思うのは日本食が食べたい。具体的に言えば、納豆ごはんが食べたい。
無いものをねだっても仕方ないのは分かってる。分かってはいるが・・・。
「はぁ、暖かいお味噌汁と納豆穂反が食べたい。」
「お客様。どうかなされましたか?」
「いや、ごめんなさい。なんでもないわ。」
ため息をついていたら、心配されてしまった。
「美味しかったわ。あと、1つ聞きたいのだけど。ここら辺で洋服を代える場所はある?」
「はい。このホテルから十分ほど歩いた場所に良い服屋があります。簡単な地図をおつくりしましょう。」
「ありがとう。」
とりあえず、今日の予定は服の購入としよう。