表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士(仮)  作者: 黒犬神
3/10

第3話

 王都の中心街へ向かう馬車。通常なら人があふれるほど乗る馬車も、今回は例外。


 そう。貸しきり馬車に乗っているのだ。


 通常の馬車料金は、1回3000円。貸切はなんと3万円だ。おぉ、高い高い。

 

 しかし、この時間帯に走る馬車の数は少なく、十倍の値段で貸切が出来るのであれば、いまはそこそこの金があるので良しとしよう。


 ちなみに暖房や冷房なんて物は無いため、少しばかり馬車の中は熱いが、窓を開けておけばそこそこ涼しい。


 貸切の馬車は、通常の馬車の旅と比べてかなり快適だ。

 


 疲れた体に心地よい馬車の振動。眠い。



 疲れた。






 ・・・眠い。




 

 


















 耳につけたヘッドホンから無線が入った。

 

 「(シズ。こっちはもう無理臭い。)」


 「分かった。こっちも、もうもたない。」


 「(そっか。じゃあ、7階の拠点で待ってる。)」


 「うん。」


 相棒の声は、何時ものような気楽さは無い。


 彼が守っていたのは屋上。私が守っていたのは、1階のメイン入り口だったのだが、今は5階まで下がる羽目になっていた


 持てるだけの武器、弾薬を駆使し、様々な場所にトラップを相棒が仕掛けていなければ、早々に攻め落とされていただろう。


 しかし、それも既に過去の話。


 1階は4時間前に、2階は3時間前に、3階は2時間前に、4階は1時間前に、5階は今、落とされた。


 残るのは彼が守っていた屋上と、今居る6階、そして拠点にしていた7階だけ。


 移動手段のエレベーターはワイヤーを切ったので、使えないし、仮に登ってきてもクレイモアを仕掛けてある。


 残るのは西階段と東階段、外に取り付けられた非常階段の三種類も、崩れていたり、罠があったり、簡単には通る事が出来ない。


 私達自身も、自分達で仕掛けた罠に引っかかるので通ることが出来ないが、もちろんそこは考えてる。


 天井に開けられた穴からたらされた消防用ロープをよじ登り、上の階へ登る。登った後はロープを落とせば相手は登ってはこれない。

 

 穴の上に置いておいた新しい武器を一応手に入れ、今まで使っていた武器は弾切れなので穴の下に放り捨てる。


 ガシャンっ!っという音を立てて落ちた武器を尻目に、7階へ通じる穴に向かう。


 「(なぁ。シズちゃん。)」


 「なに?クロ。」


 「(あーーっ。いや、直接話すわ。)」


 相棒のクロの方の意味ありげな台詞。


 告白でもされるのだろうか。


 確かに長い間コンビを組んで、戦い歩いてきた男女だ。恋に落ちないわけが無い。


 というか、体の関係は既に持っているわけだし、今更感もある。


 それに、お互いもうすぐ死ぬだろう。


 孤立無援。助けだったはずの飼い主からの抹殺命令。悲しみをもったまま消えるくらいなら・・・っと始めた逃亡生活もそろそろ終点だ。


 またしても穴をのぼり、7階へ。


 目的だった部屋の扉を開けると、既に会い方は到着していた。



 「おまたせ。」


 「おかえり。」

  

 相棒もかなりの激戦だったようで、肩で息をしていた。いや、良く見ると左手を動かしてない。


 「いやぁ、肩に一発貰っちゃったよ。」


 「痛くない?」


 「うん。痛み止め打ったから平気。」


 長年連れ添った相棒だが、偶に被弾した所は見た事が無い。平気といっているが、相当しんどいはずだ。


 彼もすぐに壁に背中を押し付けるように倒れこむ。



 「なぁ、シズ。」


 「なに?」


 「あぁ・・・。いや、巻き込んで悪かった。」


 「今更ね。」


 肩に担いだ武器は、一発も撃つことなく役目を終えるだろう。


 そう判断した私は、武器を放り捨てて、防弾チョッキも脱いで放り捨てる。


 残るのは白いシャツのみ。汗で若干透けてるが、見るのは相棒だけなので気にする必要は無い。


 「ヒュー!セクシー!」


 「はいはい。貴方も脱いだら?」


 「いや、肩がね・・・。」


 そう言いながら軽く両肩を上げた相棒。どうやら痛み止めを飲んでも痛いものは痛いらしい。


 彼の防弾チョッキを外してあげると、防弾チョッキにも幾つか弾を食らっていたらしい。この分だと内臓にもダメージを食らっている事だろう。

 

 「おお。楽になった。ありがとう。」


 「どういたしまして。」


 防弾チョッキをはずすと、楽になったらしく、大きくため息をついた。


 「巻き込んで悪かった。」


 「さっきも聞いたよ。まぁ、私も原因だったでしょ。お互い様よ。」


 「そっか。」


 少し離れた場所で爆発音が聞こえた。どうやら階段に設置したクレイモアが爆発したらしい。


 「なぁ。ジズ。」


 「なに?」


 「胸当たってる。」


 「当ててんのよ。」


 爆乳、というほどでもないが、まぁまぁ大きい私の胸を押し付ける。


 そっとお互いの腰に手を伸ばし、互いに触れ合う。


 まだ、あたたかい。




 爆発や怒号がだんだんと近くになり、敵が近くに来るのを感じる


 互いにまわされた腕が腰から離され、お互いに向き合う


 「楽しかったか・・・?」


 「まぁまぁ・・・ね。貴方は?」


 「俺は楽しかったな。来世もお前と同じように遊びたいもんだ。」


 「私もよ。」


  互いに相手の顔を見返し、にっこりと笑いあった。


 あぁ、惚れた相手の顔だ。なんてカッコ良いのだろう。







 互いの腰から引き抜いた拳銃で、互いに向き合い、同時に放たれた弾丸は二人の頭に命中し、この世から強制的に退場させた。












 「お客さん。到着しました。・・・。」


 「・・・。えぇ、ごめんなさい。寝てしまってたみたい。ありがとう。」


 あぁ、懐かしい夢だ。















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ