第1章 07
仕事の都合で時間が取れませんでした。申し訳ありませんでした。
ルーツに応じた姿に変化した管理AI。
「これからアバターの設定を開始して下さい。今の私の姿は貴女のデータに設定したルーツを加えたものになっています。」
十二単でも着ていれば似合いそうな長い黒髪、抜けるような白い肌のスレンダーな少女である所までは変わらず、耳が尖り、背中から大きな翼が生えているという少しアンバランスな姿になっている。
「リアルを特定されない様に、という事も有りますので、このままというのはお勧めできかねます。身長等の身体データに関しては±5%までの調整は可能となっています。ご留意くださいませ。」
「分かったわ。それじゃ始めてみる。」
水兎はメニューを開いてアバター設定を開始した。
「これでいいのかな?多分これなら一目で分かる人はいない筈。」
フラグになりそうな事を言って、『アバター設定完了』のアイコンをタッチする水兎。
アバターの髪型はセミロングのウルフカットで色はプラチナブロンド。瞳の色は真紅。翼に関しては翼人の小分類が選べたので猛禽類の隼にしていた。密かに胸を可能な限り盛っていたのは秘密な方向性で(爆
設定したアバターの姿で管理AIが
「これで宜しいですか?」
と質問してきたので、
「大丈夫です。」
と水兎が返答する。その瞬間アバターが光り輝き、水兎へと重なる。光が収まった時には水兎の姿が先程設定したアバターに変わっていた。
姿が変わって慌てる水兎。その目の前に再び光の球が浮かび上がり、
「これでアバター設定を終了します。次にキャラクターネームを設定して下さい。」
水兎の目の前にキーボードが出現する。
「環境依存文字を除く全ての文字が使用可能です。」
「こんな所まで自由度高高すぎでしょ。そうね...『finis』にするわね。意味的にはそこまでよく無いけど、音の響きがいいからね。」
キーボードでキャラクターネームを入力し終わった水兎。
「キャラクターメイキングを終了します。フィニス様、『Gland Plain Saga』の世界へようこそ。これより貴女が赴く世界の説明を簡単にさせて頂きます。」
「此処は神々の眠る揺籠。」
足元に映像が表示される。宙空に浮かぶ巨大な平面世界。中心に水が滝の様に流れ落ちている。
「精霊の守護により、人々は豊かな暮らしを享受している。」
平面世界の周囲を精霊達が見守っている。
「だが、その平穏を壊す者が現れた。」
空の彼方から、又は地の底から魔物や悪魔達が現れる様子が描かれ、
「力ある者は悪しき者と戦い、力無き者は必死にその暮らしを守ろうとする。」
異形の者と戦う者の映像が、そして高い壁を持つ都市を築いて閉じこもる者達の映像が流れる。
「そして貴女達は、この世界を救う『来訪者』として降り立つことになります。ですが、貴女達は特別な使命はありません。この世界で立身出世を望むも、悪に堕ちるも、自由です。『あなたが全てを創る』のです。」
光の球の光が強くなる。
「これから貴女が初めて訪れる街は『魔法都市トワイライト』という中立都市です。」
世界地図が表示され、ある一点に光が灯る。次の瞬間には急激なズームが行われて城塞都市の俯瞰映像が表示される。
「それではfinis様、この世界での貴女の旅が実りあるものでありますように。」
そこまで聞こえると光が消え、視界が暗転していった。
やっと此処までこれました。