第1章 05
依里を見送った後に自室に戻った水兎。VRギアを装着(ヘッドセット+ゴーグルの形状。PCとはワイアレス接続)して起動した。
「『Dive in』」
音声認証のためのキーワードを口にした水兎の意識は闇に包まれる…。
「…ここは…?」
気が付くと水兎は、闇の中に独り浮かんでいた。周囲を見回すと、一つの光の玉が水兎へと向かって飛んできた。
その光の玉は水兎の目の前で停止すると、光を強くしながら人型へと形を変化させていく。
光が収まると、そこには水兎と瓜二つの人物が立っていた。ちなみに服装は質素な貫頭衣になっていたりする。
「『Grand Plain Saga』の世界へようこそ。私はこの空間にて貴女のアバター作成補助をさせて頂く事になりました…管理AI003710と申します」
貫頭衣水兎…管理AIが一礼しながら自己紹介をする。
「あ、これはどうもご丁寧に。手順とかを教えて欲しいんだけど…その服装って変更できないの?」
困惑しつつも質問する水兎。
「これから『ルーツ』の設定をしていくと見た目も変化していきます。『ルーツ』設定完了後に私の姿、つまりアバターの調整が可能となります。ですので、暫くこの姿の私とお付き合いくださいませ。」
再び一礼する管理AI。
「因みに、『ルーツ』の種類は初期で数百種ございます。成長で変化する先まで含めれば数千種に上ると言われています。『ルーツ』は検索・抽出できますので、自分の好みで選んでみるのがよろしいかと思われます。」
「ちょっと、いきなりそんなこと言われても…やり方を教えてもらえませんか?」
いきなり投げっぱなしにしてくる管理AIへとジト目を向ける水兎。
「失礼致しました。慣れれば思考制御の方が速いのですが、初心者向けに音声操作をお教えいたします。実際にゲーム本編に行かれた時も同じ操作なのですが…人差し指を視線の前に出してください。はい、そうです。その状態で『メニュー』と言って下さい。因みにこの空間内では『ルーツ』取得のコマンドしかありません。」
実際に動作を交えながら水兎に説明していく管理AI。
「『メニュー』。ウィンドウが開きました。本当に『ルーツ』のコマンドしかないですね。…で、そこを指でタッチするとサブウィンドウが開くんですね?そして開いたらスクロールさせて探すか、上のほうに『検索』コマンド…有ります。それで探すんですね?やってみます。」
さらに管理AIから説明を受ける水兎。
「もう一つお教えしておきます。項目は長押しすると内容が見れることがあります。この場においては活用可能です。ゲーム本編では、知らないものは見たまましか表示しません。ご注意ください」
最後に補足説明をしてから気をつけの姿勢になる管理AI。
「有難うございます。...って自分と同じ顔の人から馬鹿丁寧に応対されるって中々無い体験ね。」
水兎は苦笑しながらキャラクターメイキングを開始するのであった。
これからキャラクターメイキング本番です