第1章 04
「そーいえばミナちゃんって、パパの会社のVRエンジンには慣れてるよね?」
VRギアの起動準備をしながら唐突に質問をする依里。
「そうね。言われるままにVR内で動作テスト?をしていたから…慣れていないと言えば嘘になるわね。大分違和感有るけど。それでも最後の頃には少し改善してたわね。」
バイトの時の事を思い出しながら答える水兎。
「あたしもあのシステム使ってたから言うけどあいかわらずミナちゃんは武芸百般のリアルチートだよ。ふつうの人だったらそんな違和感感じる訳ないって。学校でもいろんな武道系部活から助っ人頼まれてるでしょ?大会とかで。しかもそのすべてで結果を出してるとかやっぱりリアルチートだよ。あたしが数年前ここの道場に通っていたときも、大人が束になってもかなわなかったんだから。」
VRギアにソフトをインストールしながら呆れる様に言う依里。
「リアルチートって。私なんか全然よ。お父様には未だに一本も入れられないし、依里?その時にあなたに杖術で勝てなかったんだけど?」
「自覚がないってこれだから…。小父様は別格というかバケモノでしょ?あと何回も言うけど、今はミナちゃんに絶対に勝てないよ?いまミナちゃん剣術、杖術、合気道、薙刀ぜんぶ師範クラスでいけるよね?小父様が嬉しそうに教えてくれたんだけど、ミナちゃん最近小父様と互角に戦う事が出来る様になってきてるんだって?」
水兎の反論を食い気味に封じ込めながら作業を続ける依里。水兎はそれを聞いてorz状態で項垂れていた。
「ミナちゃん、設定終わったよ?アカウントはパパの会社でバイトしていた時のでよかったよね?」
VRギアの作業を終えた依里が背伸びをしながら立ち上がる。
「ありがとう、依里。…ってあなたが何故そのアカウントを知ってるの?」
そう言って詰め寄る水兎に依里は一枚の紙片を渡す。そこには確かに水兎がバイトしていた時に作ったアカウントが書いてあった。
「あたしへのパパからの手紙。そこに書いてあったの。勝手に使ってごめんなさい。」
しゅんとなって謝る依里。それを見た水兎は表情を和らげる。
「それじゃあ私はこれからキャラクターメイク始めるけど、依里はどうするの?」
「あたしはβテスト参加してたから引継ぎできるよ?これから家に帰ってパパを問い詰めなきゃいけないし帰るね♪」
家に帰る依里を見送った水兎。まだ夕食まで時間があると考え、部屋に戻り早速VRギアを装着。『GPS』の世界へとログインした…。
きりがいいので、ここで一旦切ります。次回やっとキャラクターメイキングです