01
「アホォ!何してんだ!お前!あのウサギ角生えてんだぞ!警戒しろよ!」
「だって、可愛かったんだぞ!触りたくなるだろ!」
「アホ、あのウサギ止めてきて、美雪がもう無理そう。」
白城さんはハァハァと既に辛そうに走っている。武道家の俺らとは違い、文化部なのでそこまでの体力は無いらしい。
「元、アホのお前だけじゃ心許ないから、僕も残って時間稼ぎする。白城さんと三雲はそのまま走って逃げて。」
「分かった。行くわよ、美雪。」
僕と元はその場に止まり、ウサギの方を向く。白城さんと三雲はそのまま走って逃げていく。
「元、怪我したら手当してやるから突っ込め。お前のフルスピードならウサギに一発くらいは入れられるだろ。」
「多分な。んじゃ、手当頼むぞ!」
そう言うと、元はグッと地面を強く蹴り、ウサギへと肉薄する。角のあるところを避け顔目掛けて拳を振るう。
べキィ!!
骨の折れるような音と共にウサギが後ろへと飛んでいく。仰向けに倒れるウサギへ元がとどめを刺すように近づき、瓦割りのように腹に拳を叩きつける。
元が仰向けになり、もう動かないウサギへと礼をし、それを掴みこちらへやってくる。
「終わったみたいだな。怪我は?」
「大丈夫だ。問題ない。運動能力は地球のウサギよりかはあったが、言ってもウサギ。大したことなかったぞ。」
「そうか。なら早く三雲達を追いかけないとな。行くぞ。」
「それは、大丈夫よ。」
「三雲!?何でそんな近くに?」
「美雪が既に限界で、走れなかったから茂みに隠れてた。」
「ごめ…んね…体…力無くて…」
「いや、無事ならいいんだけど、大丈夫?白城さん?」
「うん、もう大丈夫。ありがとう、瀧谷君。」
「うっし、全員怪我なく揃ったことだし、そろそろみんなの所に戻るか。この収穫もあるしな。」
元はウサギを掲げ、意気揚々とみんなの元へ歩き出す。
みんなの所へは何事も無く到着し、ウサギを見せるとやはりここは異世界だという結論になった。角の生えたウサギなんて地球にいなかったからね。
他のグループが木の実や水場を見つけ、残ったメンバーは枯れ葉を集め寝床のようなものを作っていた。
ヤンキー君が何故かライターを持っていたので薪に火をつけ、ウサギを焼き、少ないがみんなで分け合って食べた。枯葉の寝床は悪くはなかった。
それから1週間が経った。しかし、一向に助けが来る気配はなく、僕らは毎日、探索を続けていた。
装備も木の棒からウサギの角を蔦で棒に取り付けた槍になったり、石斧になっていた。
僕と元は散歩のため、みんなの所から少し外れたところをぶらぶらと歩いていた。
「なぁ、透。本当に城からの助けなんて来るのか?俺たちで街を探した方がいいんじゃないか?」
「元、それは無理だ。怪しい30人の集団が街に近づいてみろ、殆どが殺されるか捕まって尋問される。」
「それもそうか…」
元と駄べりながら散歩していた。すると遠くから女子の悲鳴が聞こえた。
「「キャーーー!」」
「これは!?三雲と白城さんの声か!?」
「何かあったに違いねぇ!透、行くぞ!」
「あぁ、こっちから聞こえた気がしたな!」
声がした方へ向かうと、白城さんと三雲が服を乱し、その場に座り込んでいた。
「どうした!?由奈!白城!」
「その格好、どうしたんだい?」
「あ、あの、は、はな…」
白城さんは錯乱しているようで、口が回っていない。それほどの恐怖だったんだろう。
「英とその連れよ。私達をレイプしようとしたのよ。」
「何!?」
「でも、どうして気をつけていた英君達について行ったりなんか…」
「透と元が危険だから手伝ってくれって言ってきたのよ。彼ら私達が貴方達の名前を出せば付いてくると踏んでね。」
「それで付いていくと僕達はいなくて…」
「そ、レイプされかけたのよ。」
「その割には大丈夫そうだな。」
「馬鹿じゃないの!怖かったに決まってるじゃない!アンタ達がいなくて本当に怖かったんだから!」
よく見ると三雲は小刻みに震え、涙ぐんでいた。
「元、やっぱお前アホだな。三雲のそばにいてやれ。」
「…おう。由奈、悪かった。」
三雲は元の胸の中で静かに泣いていた。
「白城さん、もう大丈夫だから、ね?」
「あ、ありがとう、瀧谷君…」
暫く、彼女達が落ち着くまでその場にいて、落ち着いてからみんなの所戻った。
戻る途中、白城さんと三雲から英君とその連れの数人が女子を囲い、それに入らず抵抗した者はレイプしているのだということを聞いた。
確かに、数日前から女子の中で泣いている人が見られたが、そう言う理由だったわけか…
僕達が帰ると、英君とその連れ数人、囲った女子、秋山君達やヤンキー君。クラスメイト全員がごっそり居なくなっていた。
「これって……」
「多分、助けが来たんだよ。僕達が居ない間に。英君達はギリギリ間に合ったんじゃないかな。」
「あんな奴が居なくなったのは嬉しいけど、どうする?私達取り残されたわよ。」
「どうするって言われてもな……」
ガサガサッ
茂みから突然音が聞こえた。
「3人とも気をつけて。音からしてウサギ何かより全然大きいよ。」
臨戦態勢を取った僕達の前に現れたのは
「すいませーん、居ますか~?」
黒っぽいローブのような服を着た男の人だった。
「「「「誰?」」」」
「カルム帝国、魔法騎士、副団長のケーロ・マルディストと申します。召喚者様方をお迎えに上がりました。…なんか少なくない?」