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蒼太の事は好きだけど恋愛の『好き』じゃない
だって私は……
「奏……どうしよう」
小さい頃に一緒に撮った写真を机の引き出しから出して見る
私と紅葉、蒼太と奏、いつも4人だったから2人の写真はあまり無くてお母さんが持ってたのをコッソリ盗んだ
写真の中には泣いてる私の頭を優しく撫でてくれる奏
『好きな人の名前は言うな』
琴音……蒼太に言えるわけないよ
ううん、紅葉にも奏にも……
「私が好きなのは奏……蒼太の弟なんだもん」
今は近くに居ないけどきっと夏休みには帰ってくる
密かに楽しみにしてたのに…
蒼太の発言で気が重くなってきた…
「それより明日から学校どうしよう……」
クラスは違うけど、蒼太とは毎朝挨拶してる、今日みたいに学校まで連れてってくれる時もある
「はぁ……ん?」
別途に倒れ込みそうになる直前、携帯が鳴った
一瞬蒼太からかと思いドキッとしたけど取り合えず名前を確認して直ぐに出た
「琴音、どうしよう!」
「どうしようも無いでしょ、私的には九条は今まで我慢したと思うけどね…今は1人なのね?」
「…………」
琴音の冷静な声に固まる
私……まだ何も言ってないのに
「楓、聞いてる?」
「うん……やっぱり琴音は気付いてたんだね…蒼太の事」
「あのねぇ……私じゃなくても皆知ってるわよ、アンタだって九条と付き合ってるって勘違いされてるの知ってるでしょ?」
「うん」
「私は付き合って無いって知ってるけど、否定しても周りは納得しないくらいアンタ達は端からみたら恋人同士に見えるの、その九条が『話が有る』なんて……直ぐに気付くわよ」
「…………」
「そんなアンタ達が明日から口聞かなくなったら周りにもバレバレ…何か有ったって勘づかれるわね」
琴音は、まるで台本が有るみたいに話続ける
「口聞かないって……」
「だって振ったんでしょ?九条の事」
「振ったって……言うか……逃げて来たと言うか……」
「現実逃避したってワケね」
「だって……」
琴音の言葉は矢の様に胸に刺さってくる
現実逃避…………否定出来ない
私は蒼太の気持ちを受け入れたくなった
「それで?名前言ってないわよね?」
「名前?」
「九条によ、アンタの好きな人」
「……言ってないけど」
「何よ?」
名前は言ってない
言えるわけがない!私が好きなのは貴方の弟です……なんて。




