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カルテット狂想曲  作者: 本庄梓
ファーストキスの相手
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『楓ちゃん…楓ちゃんのファーストキスは俺だって覚えてる?』


何度メールを見ても文章の読み間違いじゃないみたい…


何でいきなり…しかもファーストキスって!!



「やっぱり……っ…」



思わず奏での部屋の方向を見てしまう


さっきは消えてた電気も今は点いてるけど、人影は見えない



このタイミングでこの話って奏…さっきの見てたのかな?


…どうしよう…?



「そうだ…返事っ……それもどうしよう!」



最初のメールだけなら頑張って返せたかも知れないけど…このメールの内容含めての返信は私にはハードルが高すぎる



飛べない…飛べないよ、琴音…


思わず琴音に相談しようとして首を振る


こんな事どうやって…


アド交換をした事は報告したいけど…



ファーストキス…



それは私も覚えてるよ、奏





まだ仲良く遊んでた子供の時


私は7歳で、奏が4歳



「かえでちゃん、キスしよ?」


「え?」


学校から帰ってきた私には奏は天使の笑顔で言った


キスって事は知ってた、小学校にもなると女の子はやっぱりオマセさんたから。


だから奏の言ってる『キス』は私のと同じなのか首を傾ける


奏はまだ4歳だ、幼稚園でそんな事は習わないと思う…現に私も習ってない。



「好きな人とするんだってキス、ぼく好きだからしたい」



…どうやら同じキスで合ってるらしいけど…



「私も奏が好きだよ?でもキスって好きだけじゃ駄目なのよ」



親愛のキス

尊敬のキス

そんな物はいくらオマセさんでも知らない時



「じゃあ、どーすればキスできるの?」



首を傾けて見上げて来る奏は本当に天使そのもの


思わずギュと抱き締めてしまう



「すっごくすっごくお互いがスキって気持ちと…後は恋人になるとかな」



「……」



「恋人ってのは大人になって……っ…!!」



恋愛も知らない私が奏に目線を合わせて話すと奏は私の唇にキスをした


本当に触れるだけのキス



「ぼくはかえでちゃんが大好き!こいびとは…大きくなったら約束ね?」



そう言うと私の小指に自分の指を絡めて約束の証として指切りをする奏を私はただ見つめてるしか無かった





「あの時の事…奏は覚えてたんだ…」



勿論私も忘れるわけが無かったし、今考えると相手が奏で良かった…


さっきは大丈夫だったけど、もし蒼太にされてたら…と思うと身体に悪寒が走る



奏にとって何でも知りたい、実行したいの年頃のただの好奇心だと今では思ってるけど…その相手に私を選んでくれて嬉しかった




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