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深い溜め息を吐いて琴音は昇降口に入って行く
「ちょっとっ、奴って誰よ?」
「そう言えば…」
「話聞いてる?」
私の話題に触れられたくないのか琴音は靴を履き替えながら大袈裟に話題を変えた
「王子様、今度いつ帰ってくるの?」
「……っ……」
琴音の口から出た『王子様』に話題をすり替えられた事はどうでも良くなる。
一気に頭の中は彼だけになる
「……解りやすいわね、楓って」
「煩い…」
私には好きな人が居る
普段から口が悪くて男子にキツいけど、彼の前では強気になれない
琴音は鋭くてバレちゃったけど……絶対他には知られたくない!
特に妹には……。
「全寮制だからね、帰ってくるなら今度の夏休みかな?……あっ、それよりさ、さっき蒼太に話があるみたいな事言われた………琴音?大丈夫?」
教室で、席も前後の私達は下駄箱から話はずっと続いてる
王子繋がり……と言うわけじゃないけど、朝の出来事を話そうとしたら琴音が椅子から落ちた
まるでコントのお約束みたい……
「平気平気っ!大丈夫……で?九条が話って?」
椅子に戻る姿は大丈夫に見えないけど
「埃ついてるよ?」
「大丈夫だからっ!で?」
声を潜めて話す琴音、聞かれたくないのかな?
私は別に良いし蒼大は隣のクラスだから居ないんだけど
「うん……朝ね、蒼太が珍しく予約するみたいに言ってきたの」
釣られて同じ様に声を潜めて話す
駐輪場での出来事を琴音に話すと顔がドンドン曇っていくのが解った
こんな顔をする琴音は私が喜ぶ事を発しない
「遂に動いたか」
「……何が?」
「いやいや、九条もかなり我慢したと言うか…待った方だよ」
何?
琴音は私には何も言わないで頷いたりしてる
自分にとってプラスじゃなくても目の前で勝手に話が進んでると凄く気になる
「……琴音?」
「只、これから面倒くさいなぁ……」
「琴音ってば!ちゃんと解るように言ってよ」
話が見えずイライラし机を叩いて声を潜める事なんて忘れていつもより……否、少し大きな声で琴音に催促した
「……楓」
「…………」
「1つ確めておくけど、九条は楓の好きな相手って知らないんだよね?」




