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一宮楓 18歳
私は本当に可愛くないらしい
「ねぇ、パパ良いでしょ?」
「うーん、でもなぁ…まだ早いんじゃ…ねぇママ」
「そうねぇ、でも防犯に持たせる家庭も多いからね」
「そうそう!防犯よ、パパは私が危険な出来事に巻き込まれてもいいの?巻き込まれるだけならまだしも…」
「おいおい、怖い事言うなよ……」
「お姉ちゃんも持ってるんだし、ね?」
「そうだな、今度の休みに見に行くか」
「本当!?パパ大好き♪」
ガチャ……!!
「御馳走様」
「あら、楓もう食べたの?」
「無駄話してなければ食べ終わる時間……お父さん、バス間に合わないよ?」
「お!まずいな、紅葉、パパ行くから」
「携帯の件、約束だよ!?」
娘と指切りをして笑顔の父親をチラッと見て私は食器を片付け誰よりも先に家を出る
「……何がパパよ……ママって何よ、此処は外国かっつーの!」
家を出て歩きながらいつもの様に毒を吐く
何が私も持ってるんだし…よ!
私は高校から持ってるのよ!
小学生の時は持ってないんだから!
「あんの、クソガキ!!」
ダンっと地面を片足で強く踏むと、バスに並んでる人達が一斉に私を見る
「……すみません」
「 楓!」
気まずい雰囲気の中、バスの時刻を確認してると後ろから聞き慣れたら声が聞こえて来る……
これはもしや……!
「蒼太っ!あれ?部活は?」
「試験前だから休み、乗ってく?」
「良いの?」
とか言いつつ、その言葉を待ってた
優しい蒼太は私を窮屈なバスに置き去りにしないって知ってるもんね。
返事を聞かないでいつもの様に後ろに乗る
「持つべき物は幼馴染み様っ」
「……楓」
「ん?何?」
走らない蒼太
まさか私が重すぎて動けないとか?
自信がある訳じゃ無いけどそれは確率的に低いと思うんだけど
「立つなよ、ちゃんと横に座れ。危ないだろ?」
「そんな事……大丈夫だよっ!それに彼女座りなんて出来っこないでしょ?間違われたら怖いもん」
「…………」
「蒼太?どした?」
相変わらず言う事を聞かず自転車の後ろに立ってる私は漕ぎ出さない蒼太の肩を叩く
「……良いけど…」
「ん?何?何か言った?」
蒼太の小さな声は、立ってる私には聞こえない
「別に……ちゃんと掴まっとけよ?」
「りょーかい!」




