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白銀の世界で  作者: シャチホコ
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未知との遭遇

息を切らしながら着いたその場所には畑や古い民家が点在する村の景観にはそぐわないほど真っ新で乳白色の巨大な教会が悠然と佇んでいた。


その教会の横には白い巨塔が天に届きそうなほど高く聳え、頂上にはこの村のシンボルとして知られるこれもまた巨大な金色の鐘が吊るされていた。


それを下から茫然と眺めていたサリッサとアリシアは通りかかった黒いローブ姿の女性に声をかけられる。


「まさか、あなたたち今日からこの教会に通う子?」


呆気に取られていたサリッサ達は突然の質問に驚いてしまい、上ずった声で返事をする。


そんなサリッサ達に女性は微笑し、教会の中を案内した。


中は窓の少ない閉鎖的な空間だったが、輝々と発光する照明ランプの光が壁の色彩を顕にしていた。


幅の広い廊下をしばらく歩くと、奥に重厚な両扉があり女性は澄顔でその重々しい扉を開く。


扉が開くと、部屋の最奥が見えてくる。

中央には祭壇の様なものがあり、その前にこの教会の神父が立っていた。


「やぁ、初めまして。僕はこの教会の神父のローランだ。話は聞いてるよ。早速だけど、この水晶に手をかざしてくれないかな?」


そう言うと、神父はにこやかに祭壇の上に祀っていた塵や傷一つない透明な丸い水晶を指す。


そんな彼の物言いにサリッサは戸惑いを見せるも、言われた通りその水晶に恐る恐る右手を伸ばす。


手をかざすと、水晶が幻想的な虹色に光だし、サリッサの顔に反射した。

目を開けられないほど眩しいというわけではなく、どこか温かみを感じる優しい輝きにサリッサは目を離さずにはいられなかった。


やがてその幻想は徐々に消え、サリッサを現実へと引き戻す。


先の不思議な現象は何だったのだろうか?

これも魔法の類の物なのだろうか?


そういった疑問がサリッサの脳内を駆け巡っていた。

気になって、脇目も振らず神父に堂々と訊ねる。


「ローランさん、この水晶は一体何?何で光ったの?」


サリッサの好奇の目を一心に向けられた神父は朗らかな顔で優しく答える。


「あぁ、これは何でもないんだよ。ちょっとした余興みたいなものだから」


先程の光景に呆気を取られていたアリシアだったが正気に戻り、ローランに尋ねる。


「わたしもここに手をかざせばいいんですか?」


まだやや戸惑い気味なその声にローランは即答する。


「いや、君は大丈夫だよ。」


「そうですか…」


元々、声量の低い声がアリシアの落ち込みから今にも消え入りそうになる。


そんなアリシアを見兼ねたのか横で彼女たちを静観していたローブ姿の女性が「そうだ!」と言わんばかりの溌剌とした声で彼女を慰めようとする。


「本当は教えてないんだけど、今日は特別に魔術の授業を教えるから、あなた達も一緒に来るでしょ?」


その突然の誘いにアリシアは内心、驚きつつも顔は嬉しそうだった。しかし、サリッサだけは高揚するどころか困惑してしまった。


なぜなら、サリッサには母のいいつけがあるからである。


「15歳になるまでは魔術の勉強は我慢する」という制約をたてられ、自身も了解を得たはずだったのだが、早々に魔術を学ぶ機会にまさか数字と文字を学ぶためだけに来た教会で出会うとは思いもしなかったからである。


サリッサはこれを絶好の機会と考えたが、やはり母との約束を蔑ろにするべきではないと思い、誘いを断ろうとする。


「ごめんなさい。わたし魔術はまだ…」


申し訳なさそうにして、断りを入れようとするサリッサだったが、それに対するアリシアの寂しそうな表情と声がサリッサを躊躇させた。


「サリッサはわたしと来てくないの?」


アリシアの悲痛な声が沈黙とした部屋に響き渡る。


イジメの事といい先から見ていて、彼女があまりにも哀れに思えてしまいサリッサは母に心の中で「ごめんなさい」と謝り、仕方なく特別授業を受けることにした。


サリッサ達は女性の案内の元、祭壇室を出て右側の広い廊下をしばらく歩く。

やがて、突き当たりに荘厳な大理石で出来た2本の柱が見えてきてサリッサ達はその前で待たされる。


2本の柱の間で女性は懐から歪な形をした銀色の鍵をとりだし、何やら呪文を唱える。


すると、女性の前の何も無い壁から錠前が現れる。

截然と女性はそのガキ穴に右手に持っていた銀色の鍵を挿し込み、捻るとガチャっと何かが解錠した音と共に壁が軋み始め、ゴゴゴッと横に開き人二人分の幅台の隙間が現れる。


そんな光景に驚きを隠さないでいる2人だったが、女性の案内に従いその隙間の中へと入っていく。

隙間の中は奥まで続く小さな光のお陰で、少しボヤけているが通路が伸びていることと、上へと登る階段が少しだけ続いていることがわかった。


通路を進み、奥の階段を登りきると通路を照らしていた光よりも明らかに異質の光射がサリッサたちの視界を奪おうとする。


次第に目が慣れてくる。

サリッサ達は恐る恐る塞いだ目を開く。



すると、そこには今までの驚きを隠すほど信じられない光景があった。






















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