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白銀の世界で  作者: シャチホコ
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サリッサの夢

この世界のお話というか、過去にあった事象を叙事的に表した童話のお話です。

真っ暗な部屋、サリッサは右手に持っていた手燭を机の上に置く。


蝋燭に火を付けると、濃紺色に染まっていた部屋に明かりが灯る。

そして、左手に抱えていた1冊の本を開く。


それは1人の魔法使いの話…


はるか昔、とある王国で不気味な噂が広まる。

それは人々が突然、発作を起こしたり、身体が酷く熱くなり咳が止まらなくなったり、肌に湿疹が出来たり等死に至った者もいるという恐ろしい話しであった。


それに対し、国民の中には迷信だと切り捨てるものも入れば、悪魔の呪いだと恐れて外出を拒む者もいた。


やがて、その噂が決定的な事実になる。


それは第一皇子と元老院や貴族の謎の死であった。


彼等の死因は国内で騒がれている症状と同じようなものもあれば、全く異なる症状を示した者もいたという。その報を受けた国王は息子の死から立ち直れずショック状態に陥ってしまった。


そんな国王を補佐したのがその国の宰相である。


貴族の間や国内で流行る突然死に対して教会の助言を貰い、お触れを出そうとしたが、

王妃は「ここで国民の不安を煽るべきではない」として、あくまでも現状を維持することにした。


政府のこの対応に国民の上層部に対する不信感は増幅していった。

その間にも、増え続ける犠牲者に国民は今にもその怒りを爆発させようとした。


その矢先の事だった。


漆黒のローブを深く被り、長く捻れた杖を持った者が突如として現れ、皆の前でこう言った。


「あなた達を助けてあげる」


それは女神のように艶と気品を感じさせる美しい声だった。

そのローブの者は何やら呪文を唱え、人々の前にその杖を振りかざすと…


「ちゃんと、安静にしていれば心配はないわ」と言って苦しむ人々に優しく言葉をかけた。


そんな突拍子もない言動と所作に周りの人々は唖然と見ているだけだったが、我に返ると、自身の変化に気づく。


ある者は焼けるように痛かった喉が徐々に楽になったり、またある者は睡眠中も容赦の無かった発作が治まったりと地獄のような苦しみから逃れることが出来たその奇跡に人々は感激し、その恩恵を与えたローブの者に周りは誰何した。


すると、名を問われとその者は深く被っていたローブを外す。


闇に隠れていたその相貌が明らかになる。


すると、光に晒されたその白銀の長髪が艶を増しその美しさ人々の目を奪った。


髪の美しさもさることながら、またその容姿も白雪のように白く透き通った肌を持った見目麗しい女性だった。


人々はその美貌に気を取られて言葉が出なかった。


しかし、その反応に美麗な女はこれから発する言葉に意識を向けるようにして口を開ける。


「私の名前はサリッサよ暫くこの国にいるから宜しくね」


そう答えた彼女に、周りは感極まり、

「救世主様だ」

「天界から悪魔を滅しに来てくださった天使様だ」等と彼女を勝手に称揚する。

その冷めやらぬ黄色い声が上がり続ける群衆の中を掻き分けるようにして現れた少女が1人。


その少女は目の前の彼女に請うた。


「わたしのお母さんを助けて下さい」と、


その請いに彼女は快く承諾し、少女の手を握り、彼女は苦しむ母親の元まで案内するよう尋ねる。


少女に連れてこられたのはホコリが漂うボロい民家だった。


中に入ると、これまたボロボロのベッドに倒れ込み悶える少女の母親がいた。


すぐに目の前の女性を苦痛から解き放つため彼女は先程と同じように呪文を唱え、杖を振りかざす。


すると、苦しみに悶えていたその表情が徐々に穏やかになる。


母親の回復を悟った少女は慈悲深いその女に激しく、感謝の念を送る。



やがて、そういった彼女の奇跡の施しが忽ちに、国民に希望を抱かせた。


そうして、厄災が終息を迎えようとしていたその頃、彼女は政府から謂れのない罪を被せられ断罪される。

安寧が終焉に変わり、人々は忘れかけていた悪夢に脅かされその理不尽に抗う術すらなく、遂に国は滅んでしまった…

という物語だった。


そんな度し難い御伽噺に7歳の無垢な少女サリッサは非情さを感じるもその反面、一時は民を救った魔法使いの女性に憧れを抱く。


わたしもいつか、彼女のように沢山の人を救えるような魔法使いになりたいと

そして、何よりも母を独力で支えられるほどの力が欲しいと


そんな童心からの憧れが後に、悲劇を生むとは想像すらしていなかったのだが…



ある日、サリッサは納屋の掃除を母に任せれて正午はホコリ漂う小室のなかで竹箒を掃いていた。


そんな折の事である、丈夫な樫で作られた精巧な杖を見つけたのは、


それを見つけるや否や、サリッサは手に取りその肌触りとフォルムを恍惚とした目でみつめる。


彼女はふと、御伽噺に出てくる魔法使いの杖を想像する。


その魔法使いが振りかざすと、悪災を払い除けて安寧をもたすというその杖。


今手に持っているこの杖があれば、わたしも魔法を使えるようになれるのでは無いかと錯覚してしまう。


暫く、夢想していた自分に母の声が覚醒を呼び起こさせる。


「サリッサ、雑巾とバケツを持ってきたわよー。」


母はサリッサに向かってそう呼びかけると、納屋の方まで向かう。


掃除を忘れて杖に気が向いていたサリッサはその後ろめたさから慌てて杖を隠そうとするが、箒が足に引っかかり転んでしまう。


どんがらがっしゃーん!そんなコミカルな音を立てて納屋の物を倒してしまう。


何かが崩れるような大きな音を聞き、クレアは青ざめた顔で娘がいる所に急行する。


「納屋で生き埋めになっているのではないか」そんな心配が脳裏によぎる。


しかし、そんなクレアの懸念が嘘であったかのように娘はえへへとぎこち無い笑い方で自身の無事を示す。


改めてクレアは娘の無事を確認し、特に何もなくてほっとするが、娘が何かを隠すようにして両手を後ろに回しているのを見て少し訝しむ。


その事について問いただすが、娘ははぐらかして答えようとしない。


今まで、隠し事をしてこなかった娘が何か後ろめたさを感じているのが何となく分かった。

しかし、そんな娘だからこそ私には言えない事でもあるのだろうと思い不介入をきめる事にした。


それを悟られないように私は娘が散らかしてしまった物を片付けようとする。


その時、突然娘が声を荒げて私に向き直りこう言った。


「お母さん嘘ついてごめんなさい。本当はこの杖に夢中になっちゃって掃除を忘れてたの。そしたら、お母さんが来て慌てて杖を隠そうとしてそれで…」


そんな拙い娘の事情説明をこくこくと頷き一心に聞いてあげるが内心では娘が正直に隠し事を打ち明けえくれたことに感心していた。


そんな勇気を振り絞った娘に配慮して、私は叱責するのではなく、娘を称賛する。


そんな母の対応に困惑していたサリッサだったが、次の母の言葉に愛らしく素直に答える。


「サリッサは魔法使いになりたいの?」


そんな娘の純真無垢な反応にクレアは逡巡した後、今の答えを出す。


「魔法は危険だから、サリッサが15になったら私が教えてあげるわ」


この世界の成人年齢である15歳になったらという条件をつけて娘に勧める。


すると、娘はその条件に「どうしたものか」逡巡した後、承諾をする。


この時、サリッサは15歳の自分の姿を想像し、期待に胸を膨らませる。


そんな嬉々とした感情が思わず、顔にでてしまっていた。


そんな娘に優しく微笑みかけるクレアだった。





































そろそろシリアス回に突入します。

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