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異世界でタイムトリップ実践したけど過去は変えられなかった

作者: ゆー

普段は読んでばかりですが、気になることがあったので、投稿にも挑戦してみました。

異世界ファンタジー小説では、瞬間転移とか転移ゲートとかが良く出て来ますね。

あれって光速を超えて移動してるとも読み取れて、相対性理論では光速を超えるとタイムトリップして過去へ行けるとか何とか。

過去へ行けるとなると、「過去の自分を殺したらどうなるんだ」といったパラドックスが満載なので、言い訳が面倒ですね。

ということで、光速を超えてタイムトリップしても過去は変えられない、という言い訳を小説風に書いてみました。


--


僕の名前は悠といいます。

今、目の前の神様から異世界への転生を勧められています。

狙ってやっていた訳ですが、正直こんなに上手くいくとは思っていませんでした。

そもそもの始まりは、1週間ほど前に友人と話した、何気ない話題でした。


--


「なあ、悠よ。」

「何ですか?」


「タイムマシンってさ、理論上は作れるらしいぜ。」

「相対性理論ですか。光速を超えたら過去へ行けるらしいですが、光速を超えるなんて手段が無いですね。」


「映画とか漫画なら、ワープ航法やら瞬間転移なんかで出来そうなんだがな。」


!!!


異世界ファンタジー物の定番、瞬間転移で過去に行けそうじゃありませんか!

別段、過去に戻ってやり直したいことがある訳ではありません。

ただ、過去の自分に会えるとしたら、一体何をしようかと考えると、居ても立っても居られません。


それから1週間、頭上から木鉢が落ちてこないか期待したり、通行人の足元に変な魔方陣が出現しないか目を凝らしたり、トラックに轢かれそうな幼女が居ないか警戒したりと、必死にフラグを探し回りました。

そして、ついにその時が来たのです。


挙動不審な僕に職質しようと後ろから警官が声を掛けてきて、それに驚き足を滑らせて頭から転倒し、お亡くなりのようです。

うん、自業自得ですね。

そして冒頭に戻る。


--


あまりに斜め下すぎる人生の終焉に呆れ、哀れに思われた神様が、願いを叶えて下さることとなりました。

もちろん、異世界転生の特典は瞬間転移でお願いしました!


--


気が付いたら、赤ちゃんになっていました。

ユゥ・トワイライン、それが異世界ラナガルに生まれた新しい僕の名前です。

さあ、ここからはタイムトリップ実現に全振りの人生で参りましょう!


幸いなことに、地方貴族トワイライン子爵の三男坊という微妙な立場だったため、

やりたい放題させて戴きます!


とはいえ、まだ赤ちゃんなので言葉を覚える位しかやることはありません。

子供のために順応能力が高いのか、何とか人並みには言葉を覚えて行くことができました。


言葉を覚えたら、次は魔法ですよ、ま・ほ・う!

まだ小さい子供なので、書庫での勉強や訓練はさせてもらえません。

なので、メイドのクラフィーさんに内緒で教えてもらうことにしました。

口調は荒い所のあるメイドさんですが、本当に面倒見の良い方です。

練習を始めて1ヶ月目、ほんのそよ風ですが、魔法で風を生み出せました。

やったね!


それからはひたすら魔法の練習です。

もちろん、タイムトリップに必要な魔法を全力で訓練しました。


風魔法Lv10 … 空気抵抗を0にする。

重力魔法Lv5 … 無重力状態を作り出す。

物理魔法Lv10… 物質の重量(質量)を0にする。

光魔法Lv5  … 大強度のレーザー攻撃を放つ。(攻撃の反動で加速する)


12歳でここまで覚えました、頑張りました!

これで光速宇宙船を作れるようになりましたね。


この12年間でわかりましたが、どうやらこの世界は、魔法が使える以外は物理法則から何まで地球と瓜二つのようです。

ご都合主義万歳です。


さて、次はトワイライン領内の荒れ地で宇宙船作りですね。

領民から奇異の目で見られるのはもう慣れっこです・・・ぐすん。


物理魔法を駆使して宇宙船を作り、そして幾度かの試運転を重ねて完成しました。

さぁ、ここからが人生の本番ですよ。


--


まずは光速宇宙船を月まで往復させ、時間を計測してみましょう。

もちろん、各種自動操縦機能を実装しているので、自動運転です。


結果は2.6秒。

光速宇宙船は、確かに光速で移動している様です。


--


次は、瞬間転移で月へと往復してみましょう。

月へ行った証拠に、反射鏡でも置いて来ることにします。

もちろん、宇宙服着てます。

結果は0秒で往復。

帰ってきてから1.3秒後に、反射鏡からの光が届きました。

どうやら、光速を超えた移動に成功したようです。


…ん?

特にタイムトリップしたとかそんな感じはしない様ですが…


--


気を取り直して、第三の実験です。

光速宇宙船と僕が同時にラナガルの荒れ地を出発し、月へ移動します。

僕が月へ到着して1.3秒後に、光速宇宙船が月へ到着しました。

うん、まあ、これまでの実験結果からすると当然ですね。


ここで、とあることに気が付きます。

光速宇宙船の時計が1.3秒遅れているのです!

どういうことでしょうか???


--


ちょっと混乱してきたので、メイドのクラフィーさんに実験へ協力してもらうことにしました。


「ユゥ様、これ大丈夫か?」


うん、心配だよね。

僕は低速運転で何度も乗ってるし、光速運転時も船内は何ともなかったし大丈夫なはずです。


「もちろん、大丈夫ですよ。僕も何度も乗ってるし、全自動で動くから何もしなくていいですよ。」


この世界に光速で動く宇宙船とかオーパーツ過ぎだったかもしれません。

とりあえず、宇宙服を着てもらって実験を開始です。


第三の実験と同じように、光速宇宙船と僕が同時に星を出発して、月へ移動します。

僕が月へ到着して1.3秒後、光速宇宙船が月へ到着しました。


「クラフィーさん、どんな感じでした?」

「荒れ地を出発?した瞬間、ここに居たよ」


「荒れ地を出てから、ここに来るまで1秒位はかかりましたよね?」

「いや、もうほんと一瞬だったよ」


謎は深まるばかりなので、帰りは僕も光速宇宙船に乗ることにしました。


そして結果は、0秒でラナガルの荒れ地に到着です。


あ、そういうことですか…


--


そう、確かにタイムトリップは発生していて、僕はわずか1.3秒ですが過去へ移動していました。

しかし、僕にとってはとても絶望的な結果だったのです。


そもそも、なぜ光速を超えると過去にタイムトリップできるのかを思い出さなければいけません。

相対性理論によると、物体が加速すると時間の進みが遅くなります。

そして、光の速度まで加速すると時間の進みが止まってしまい、光の速度を超えると、時間の進みが逆戻りするというのです。

だからこそ、光の速度を超えると過去に戻れるということになります。


そう、月からラナガルに光速宇宙船で戻った時、光速宇宙船の時は止まっていたのです。

だから、0秒で帰還したのです。


第三の実験の時、光速宇宙船からはどう見えたのかというと、次の様になります。

・ユゥと光速宇宙船は同時にラナガルを出発した。

・光速宇宙船は0秒で瞬時に月へ到着した。

・ユゥは光速宇宙船より1.3秒前に月へ到着していた。

・ユゥは1.3秒だけ過去にタイムトリップしている。


結局は、光の速度以下の存在にはタイムトリップしているように見えますが、光の速度を超えた存在からすると、特に過去に戻った訳ではありません。


例えば、第三の実験の時にユゥが次のような行動を取ったとしましょう。

・ユゥと光速宇宙船は同時にラナガルを出発した。

・ユゥは月に到着して0.6秒後に光速宇宙船の場所へ瞬間転移し、イタズラ書きをした。

・ユゥはイタズラ書きをした後、再度月へ瞬間転移した。


自由すぎる行動ですね。

これを光速宇宙船からみると、こんな感じになることでしょう。


・ユゥと光速宇宙船は同時にラナガルを出発した。

・ユゥは1.3秒過去にタイムトリップした。

・ユゥは0.6秒過去から現在にタイムトリップして光速宇宙船へイタズラ書きした挙句、0.6秒過去へタイムトリップして行った。

・光速宇宙船からすると瞬時の出来事なので、そのまま気づかずに月へ到着した。

・その間0秒。気づいたらイタズラ書きされてる。


はぁ、人生を掛けてタイムトリップしてみたものの、過去を変えるどころか、結局過去の自分に会う事すらできませんでした。

そう思うと、気が遠くなって…


「ユゥ様、大丈夫k・・」


--


ああ、神様が見えます。

二度目の人生も終えたということでしょうか。


「悠よ、満足したか?」


ああ神様、悲しい出来事で終わりましたが、納得のいく人生でした。


「では、残りの人生はまっとうに生きるのだぞ」


残りって何でしょう?


--


「おい君、大丈夫か」


気づくと警官に抱えられながら、声を掛けられていた。


「驚かせてすまない。頭を打ったようだから、病院でみてもらうといい。」


どうやら、死んだと思ったのは勘違いだったようです。

それとも、神様に生き返らせて頂いたのでしょうか。

どちらにしても、神様ありがとうございました。


ああ、そうですね。

もし、1週間前の自分に会えるとしたら、「よく考えたら無理だから、バカな真似はよせ」と言い聞かせたいですね。



相対性理論が出て来ますが、正確な解釈ではないので、理論の矛盾には目をつむって頂ければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 興味深かったです。(よくわかってない。)
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