小話 クリスマスプレゼント 慧維視点
本編更新しようと思ったんですが、ちょうどクリスマスなので、クリスマスの小話を入れてみました★
一年前の、クリスマス・イヴ。
世間は、赤・青・緑・黄色と色とりどりのイルミネーションに彩られ、街には幸せそうなカップルが溢れており、珍しくホワイトクリスマスにもなり、彼らたちは浮足立っていた。
でも俺は、街の幸せそうな人々を見ても、特に羨ましいとは思わない。
慧維は21歳、愛梨は22歳で学生最後のクリスマス。
現在フリーな俺。
彼女が出来ても、彼女の方が、慧維が姉を大切にしているのが気に入らなくなって別れることがほとんどだ。
だから今年は、クリスマスという恋人にとって大イベントでも家にいたりする。
―――しかし、シスコンがそんなにいけないことか?
というか、姉さんにちゃんとした男が現れるまで弟の俺が守るのが普通じゃね?
しかも、家族揃っては最後のクリスマスになるかもしれないしな、と思いつつ、自宅のリビングにいた。
「メリークリスマーーースッ!!」
パンパンパーン!!
盛大に鳴り響くクラッカー。
ご丁寧に、散らばらないクラッカーが世の中出回っているにもかかわらず、わざわざ散らかるクラッカーを仕入れているあたり、ちょっと変わっているんだろう。
その上、姉さんと母さんは女サンタの格好をしているし。
ハッピーメリークリスマース!っと本気ではしゃぐのを見て、少し呆れた顔をした。
自宅かつ家族でこのハイテンションなノリ…
ある意味拍手もんだよ。
ウケる。
呆れた顔をしていたことが姉さんにバレたらしく怒られた。
「けーい!こういうイベントは本気で楽しまなくちゃっ!」
ガッツポーズしながらにぃっこりと笑いながら力説してきた。
そんな姉さんを見て、子供っぽいなと思う反面、とても可愛く見える。
もちろん、そんなことは口には出さない。
はいはい、ソウデスネーと適当に相槌を打っておけばオッケー。
今日は、志保さんや料理人たちには休暇が与えられていて、家にはほんとに4人しかいない。
だから机には、姉さんと母さんが作ったクリスマース料理がたくさん並んでいた。
机に並ぶたくさんの美味しそうな料理を見て、俺も思わずテンションが上がった。
クリスマス特有のチキン、ローストビーフ、クリスマスカラーのお刺身のカルパッチョ、リースをイメージさせるサラダ、パンにスープ。
料理だけじゃなくて、テーブル上もクリスマスな雰囲気を醸し出すようなセッティングをされてあった。
「おぉ、うまそう!毎年豪華だねー。毎日料理してる訳じゃないのに上手いとか、ズルくない?」
「ほんとだな、料理上手な奥さんに娘がいるなんて、お父さんは幸せ者だ」
うふふ~!今年も頑張っちゃったよッ!!と2人はピースをしながら照れていた。
うん、ホントに美味いッ!
いつ料理の練習なんてしてるんだろう?センスがあるのか?
なんて思いながら、家族団欒で会話を楽しみながらどんどんお皿を空けていった。
食事も終わり、次のメインへ差し掛かった。
姉さんは、キッチンから白い物体を持って、パタパタと楽しそうな顔をしながら戻って来て、ジャーンっと言わんばかりに机の上に持ってきたものを披露した。
「見てみて~ッ!今年のケーキのテーマは、“たくさんのサンタクロース”だよッ」
姉さんは、ちょっとほっぺたを赤くして、得意げな顔でケーキのテーマを説明した。
イチゴとホイップクリーム、チョコペンを駆使して、10体のサンタクロースを作り、そのサンタでデコレーションされたショートケーキだった。
姉さんは、家族の誕生日、こういうイベントの時など、毎回ケーキを作ってくれる。
これがまた美味しい!
レシピ通りらしいけど、いつも甘さ控えめになるという不思議なところもあるが、それがまた美味しい。
お店に並ぶようなキレーなケーキではないけど、姉さんらしい可愛いケーキ。
「俺、姉さんのケーキ好きだよー!なんたって、可愛い」
「あら、慧維。可愛いのが良いの?味は?味は?お姉サマが作るんだから美味しに決まってるよね~?」
「味はあの不思議込々で美味いよ。このサンタ、良いじゃんっ」
「でしょでしょーーーッ!イチゴサンタ、自分でも自画自賛しちゃいたいぐらいうまくいったの~♪」
姉さんはケーキ作りが本当に楽しいのだろう。
昔から楽しそうにずっと続けていることはお菓子作りだけだ。
ピアノもダンスも毛筆も、その他いろいろなおけいこ事もしていてすべてだいたい出来るし上手い。
ピアノも家でたまに弾いているけど、楽しそうに弾いてはいるけど、ケーキ作りのように全身で楽しいは現れない。
まぁ、楽しくしてるなら俺はそれでいいと思う。
ケーキ美味しいし。
俺は、切り分けられたケーキをパクパクっと食べ、次に訪れることを避けようと席を立った。
立った瞬間、姉さんに声をかけられた。
「慧維?どこ行くの?まだ大事なのが残っているわよっ」
そしてやってきた、この地獄の時間・・・。
姉さんは椅子の後ろから―――B5サイズ?―――の大きさの包み紙を取り出した。
「はい、慧維っ。クリスマスプレセントっ。」
姉さんは、満面の笑みで楽しそうにしている。
「あ、ありがとう・・・姉さん、毎年ありがとう」
俺はちょっと言葉につまりながら、少し引きつったような笑顔でお礼を言った。
俺と姉さんは毎年クリスマスプレセントの交換をする。
だけど。
だけど俺はもう何年とこのイベントを、止めたいと思ってるんだ。
「今年は何だと思うー?」
いつも自信満々でこう解いてくる。
普段から大きい姉さんの目が、俺の反応を見逃さまいとして、目が落ちそうなぐらい大きな目で見つめて。
話は変わるけど。
姉さんのファッションセンスは良いと思うんだ。
TPOに合わせた服装はもちろん、そこに可愛らしさや自己流アレンジ、流行などを取り入れて、センス良くまとまっていると思ってるし、友人たちからも“慧維の姉さんはオシャレだ”と言われて鼻も高い。
しかし、プレセントになるとその輝くセンスが姿を消してしまう。
ちなみに過去のクリスマスプレゼントはこれだ。
去年は、サングラス。
この年はリクエストを聞かれたので“サングラスが欲しい”と姉さんにお願いしたんだ。
とっても可愛いのが見つかったッ!と自信満々でもらったプレゼントが・・・
おもしろメガネで星型メガネがあるのは知ってるだろうか?
その星の部分が魚になっていて、ブリッジ上でキスしているような感じ―――のサングラスだった。
―――ウケ狙い?俺そんなそこまで魚好きじゃねぇよ。
一昨年は、映画のDVDセット。
俺が好きだと思い込んでる映画で、俺は特段コレが好きってわけじゃなかった。
主人公演じる俳優の別の映画はDVDが欲しいと思っていたのに。
1ヵ月位俺に見つからない様に俺の周りをうろちょろしていたのを、俺は気付かない振りしてたのに。
―――ドジ過ぎる。忍びにはなれないな。
3年前は、マフラー。車のじゃなくて首に巻くやつ。
もう何年も前にテレビで話題になった超ロングマフラー。
その当時はオシャレなんだろうけど、“超”がつく程のロングマフラーとか趣味もなく。
しかも流行り終わったやつとか。
―――嫌がらせかと思った。
4年前は、ぬいぐるみ。
慧維は可愛いから!と巨大なぬいぐるみ。俺が可愛かったらぬいぐるみなのか?
しかも、部屋で場所取るから置き場に困ってる。有名キャラクターではあるが・・・。
―――これは本気の嫌がらせだろう!
思い出しただけでもイヤだ・・・。
姉さんのプレゼントのセンスを疑うわぁ・・・。
今年のプレゼントが何なのか、怖いけど、知りたい。
ここは勇気を持って聞くか・・・開けるか・・・。
「姉さん、今年は何をプレゼントしてくれたの?」
「それは開けてのお楽しみよッ。開けて開けてー」
俺の気持ちも知らないで・・・。
勇気を出して包み紙を破って、中から取り出した。
出てきたのは――――ドローン、だった―――――。
あーもー、どうしてこんなチョイスなんだろう・・・。
姉さんは選んだ経緯を楽しそうに説明してくれた。
「何かと話題になったし、自分で空を飛ばせたり、写真が撮れるんだってー!」
「そ、そうだね。何か使える時があるといいなー・・・」
俺は、ありがとうと言って、姉さんにプレゼントを渡し部屋へ戻った。
・・・今年も予想外なものだったな・・・
写真に興味もないし、ドローン自体興味もないから、絶対使わないな。
ごめん、姉さん。
さて、可愛いケーキを作る姉さんだけど、趣味と言いうか、センスと言うか、何狙いなのかよく分からないプレゼントに、あの人はどういう反応をするんかな?
来年あたり?いや、もう1年かな?
とりあえず近々そういう反応をするのか見ることが出来る。
その時はやはり、俺も傍に居てやろう。
絶対、面白いことが起きそうだ。
しかし、姉さん。
プレゼントを選ぶとき、直観じゃなくて、もっと大事なこと考えてっ!!
今年は、初執筆作品『政略結婚に隠された真実』をお読みになって頂きありがとうございました。
来年も更新していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。