18 愛梨と大翔の攻防戦?
お久しぶりでございます。
更新は何か月ぶりでしょうか…。
まだまだ落ち着きませんが、とりあえず、1話UPしました(>_<)
静かに火花を散らしていた大翔と新。
その様子に気づくこともなく、さっきから一人納得している愛梨。
さて、最後に一言言って愛梨を連れて帰ろうか。
「新」
名前を呼ばれた新は大翔の方へ、愛梨は大翔と新の方を見た。
大翔はスッと新たに歩み寄り、顔を近付け、愛梨に聞こえないように囁くように忠告した。
そして、低く、背筋を凍らすような、有無を言わせない声で。
「今後、俺の愛梨に触れるな。―――――次はないよ?」
「――――!」
「さすがの俺も、自分の婚約者の周りに男が居て、にっこりほほ笑む様な男ではないんだよ」
愛梨の友達だから近付くなとは言わないが、愛梨に触れることは許さない。
愛梨に触れられることが出来るのは俺だけだ。
そう言葉に込めた。
「それじゃあ、またね。新」
大翔は、何も言わせないよ?という意味を込めた笑顔で、にっこりと笑った。
新はピクリとも動かない。
そして、愛梨に体を向け、愛しいものを見る優しい笑顔をした。
「さぁ愛梨、行こうか。」
スッと愛梨の手を取り、繋いだ手を愛梨の目の前に持ってきた。
「え?どこに?」
「どこが良い?」
大翔はくすくす笑いながら聞いてきた。
「え~!そんな急に言われてもッ!!」
「ん~、じゃぁ俺のうち行く?」
「え?何で?」
きょとんとした顔をした。
碓氷さんの家?
いやいや、つい先日出会ったばかりなのに、家!?
ムリムリムリムリムリムリ
碓氷さん、何言っちゃってるわけ!?
“家”というワードにえらく反応してしまった私はプチパニック?
「いえ!本屋で!!」
相変わらず、勢いで答えてしまった。
わーッ!なんで私、本屋とか言っちゃってるの!?
帰るって言えばよかったのにー!!
頭抱えて、一人ワーワーと脳内お祭り騒ぎになっていた。
そんな様子を見ていた大翔は、手を口に当てくすくすと笑い、愛梨と手をつないだまま歩き出した。
手を引っ張られたので慌てて振り返り、新に手を振った。
「新、ごめんねッ!また今度!また連絡するね~!!じゃぁねー!!」
愛梨は大翔に手をひかれて車へと向かった。
新は、手をひかれながら帰って行く愛梨の後姿を見つめていた。
愛梨が大翔に手を繋がれても、頭や髪、肩、腰などをふれられても全く嫌がっていないことと、俺といることじゃなくて大翔と行ってしまったことに、心臓が破裂しそうなくらい悔しく思った。
*****
大翔の車の助手席に乗った愛梨は、なんとなく気まずい雰囲気でいた。
理由は分からないけど、大翔の機嫌が良いとは言えないからだ。
新といる時はにっこり笑っていたから、機嫌が良いのかと思ったらそうじゃぁなかったみたい。
碓氷さんは碓氷さんでどうして機嫌悪くなっちゃったのかしら?
って!慧維にしろ、新にしろ、何で知ってることを教えてくれなかったのかしら?
いや、新は碓氷さんが婚約者だってこと知らなかったから仕方ないかな?
でも、今日の感じじゃ、私の婚約者が誰だったかなんか知ってた風だったわ。
そのあたり、新に聞かないといけないわね。
慧維は、今日帰ったら問い詰めなくちゃッ!
黙って運転している大翔の横で、愛梨も黙ったままいろいろ頭で考え事をしていた。
考え事は、さっき起こったことから、今日朝送ってもらったところまでさかのぼっていた。
そこで、あることを思い出した。
お、そうだ!と言う感じでポンと手を叩き、運転中の大翔の方を見た。
「碓氷さん。あの・・・」
「う~ん、愛梨。お願いがあるんだけど?」
何で機嫌が悪いのか聞こうと思ったら、先に碓氷さんの方から何やらお願い事をされた。
予想外な展開でびっくりしたのでおどおどしたような返事をしてしまった。
「なっなんでしょうかっ」
膝の上で両手をグーにして握り、背筋をピンッと伸ばし軽く大翔の方へ体を向けた。
愛梨の表情は何を言われるのかという緊張で、表情が硬かった。
キリッとした顔だけど、不安が隠し切れていない顔。
ちょうど信号で停まったので、大翔は愛梨の方へ向いた。
緊張しきった顔をしている愛梨を見て、そんなに緊張しなくてもいいのにとふっと大翔は笑った。
その顔を見て、そんなに緊張することじゃないのかもしれないと思った愛梨は少しだけ緊張が解けた。
その瞬間、大翔は少し真面目な顔をして、愛梨の手を包み込むようにふんわりと握った。
「愛梨。―――“大翔”と呼んでほしい。
それと、“碓氷さん”って呼ばれると壁を感じるんだ。愛梨も感じない?
だから、これからは敬語をやめてほしい。」
じっと見つめられてドキッとする。
ちょっとだけ頬が赤くなった気がする。
大翔に見つめられるといつもドキッとするのはなんでかな。
視線を下に逸らして、少しだけ俯いた。目が右、左と往復したのち視線を上げた。
「え?・・・えぇ・・・っと・・・無理です?」
その瞬間、少し沈黙の時間が訪れた。
・・・沈黙が怖い・・・碓氷さん、怒っちゃったかな?
大翔の表情を読み取ろうと、もう一度大翔の方を見た。
「・・・なぜ?」
大翔はスッと目を細め、低い声で聞いた。
コワッ!
・・・コレが俗に言う、蛇に睨まれた蛙って状況ね・・・。
「・・・あ、青ですよ。」
おどおどしながら信号機が変わったのを伝えると、車がゆっくりと発車した。
碓氷さん、怒ってるよね・・・。でも、やっぱり、私は気になるし・・・。
「碓氷さんは年上ですし、呼び捨てには出来ませんっ。それに、いきなりタメ口とか無理ですよっ!」
「・・・それだけの理由? と言うか、そっち!?」
大翔がきょとんとしたような顔としたかと思うと、爆笑し始めた。
そっちって?どっち? はぁ?わけわからんわッ!
愛梨は眉間にしわを寄せ、もう、どっちでもいいわッ!とひねた。
「それだけって!私は気にするところですから!」
「そんなもの? でも、呼び捨てとかタメ口にしたがる人多くない?」
「・・・・多いんですか?」
「・・・・いや・・・・知らないな。」
逆に聞いてみたら、妙な返事が返ってきた。
「新は呼び捨てだよね?なんで?」
「新は同級生だし、友達だから?高校の時、なぜか苗字というより名前で呼ぶことが多かったので。」
「なんで疑問形なの?」
大翔は笑っていた。
さっきも爆笑してたし、今も声を出して笑っている大翔。
機嫌が直ったみたいでよかった~。
だけど、借りに結婚するとしても、こんなに機嫌が良かったり悪かったりとアップダウンが激しい人は嫌だわ。
完璧御曹司と噂で聞いていたけど、噂なんてあてにならないわね。
*****
途中、本屋に寄ってもらって買おうと思っていた本を購入して、今は碓氷さんが知っているお店にご飯を食べに来ています。
本屋へ寄った後、家に送ってもらおうと思ったんだけど、ちょうどお母さんから電話があって誰と一緒に居るのか聞かれたと思ったら、碓氷さんに代われと。
素直に代わってみると、お母さんがどう言ったかは不明だけど、夕食を食べに行く羽目に。
夜景の見えるオシャレなホテルレストランへ連れてきてもらった。
キレイな動作で食事する大翔をじーっと見ていたら、ふと思い出した。
ほんと最近“ふと思い出すこと”が多いなぁ。物忘れが激しいのかしら?
いやいや、ここ数日、激動過ぎて脳が付いて行ってないんだわッ!
そうよ、きっとそうだわ。
アレについてだけは訂正をしてもらわないとッ!
そう思って、今日見たTV番組についての話題を出した。
「あ、そうだッ!碓氷さん!今日のTVかなりビックリしたんですけどッ!
碓氷さんって、あの碓氷の御曹司だったんですね!!
しかも婚約なんてしないのに、婚約者がいるって!!
どうやって、全国に“やっぱり結婚はしない”って言うつもりですか?」
突然のこの話題にビックリしたのか、目を丸くして愛梨を見た。
そして、一度目を閉じ、ゆっくりと目を開け、真面目な顔をして愛梨を見た。