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9 派手な演出?

月曜日の朝。

さて、そろそろ仕事へ行こうかなぁ~と、リビングのソファーから立ち上がると、家のチャイムが鳴った。

チャイムの音が鳴り、志保さんが玄関へ向かう音が聞こえた。


珍しく朝早い訪問客がいるんだね~会社の人かしら?

それとも慧維の朝帰り!?・・・なんて・・・ことないわ。あの子は真面目だもの。

それに、学生なのにもうお父さんの仕事の手伝いだってしてるし。

慧維は過保護を除くとすっごく頭いいし賢いやつだ。



そして、何か話している明るい声が聞こえた。


あれ?会社の人じゃないんだ。

ま、いいか。早く出かけなくちゃ。


志保さんが戻ってきて、愛梨の前に立った。

「お嬢様、大翔様がお迎えに来られましたよ。玄関でお待ちですよ」

「は?・・・え!?碓氷さんが!?」


私はちょっぴり顔が引きつった。

何で朝から来てるわけ・・・絶対面倒な事になりそうだわ。


通勤用のバッグを持ってスタスタと歩いて裏口(・・)へ向かった。


裏口に置いてた予備の靴を履き、ドアを開けた。


「おはよう、愛梨」

「へッ!?・・・おっおはようございます?・・・なぜここに?」

「なぜって、愛梨の送迎だよ?」

「へ?」


愛梨は予想外なことで、目を丸くした。驚いて固まってしまった。

口も半開きで、そうとうおマヌケな顔をしていると思う・・・。

にっこりと笑って挨拶をする大翔は朝から無駄にキラキラしてる。


うそ~・・・。裏口から出ようとしたの、何故バレタ!?

てか碓氷さん、何で裏口に来てんのよ・・・。面倒を避けたつもりが、避けられなかったわ。


「“へ?”じゃなくて、さぁ行こうか。」

大翔はすっと手を出した。


裏口の土間に足を縫いつけられたように動けなかった・・・

というか、動きたくなかったが正解?カモ?


愛梨の顔に影が落ち、耳の横で小さな声で囁かれた。


「また担がれたいの?」


口だけ笑ってイジワルににっこり笑う大翔。

「―――――――~~ッ!」

ムッカ―――!!なんなのこの上から目線!!やっぱり嫌な奴ッ!

顔が赤くなって、キィッと眉を上げた。

文句の一つでも言ってやろうと思ったけど、担がれるのも嫌だし・・・。


プイッと横を向いてボソボソとつぶやいた。

「・・・よろしくお願いします・・・」


すっと手を繋がれ、車まで歩いて行った。

繋がれたことに違和感もなく、手を繋がれていることを愛梨は気付かなかった。


愛梨の頭の中は、別の事でいっぱいだった。


月曜日からツイてないって、今週1週間、絶対いい事なんてないわ・・・。

そもそも、なんでまた送ってもらう様になったのかしら・・・。

会社の人たちに送ってもらったの見られたらたまったもんじゃないわ!!

絶対見られないようにしなくちゃ!!


大翔は、百面相で何やら決心している愛梨を見て笑った。

何を考えているのかは、なんとなく想像つく。どうせ、朝から面倒だとか、会社の人に見られたら面倒だとか、面倒臭いことが起きたとしか思ってないだろう。そして、手を繋いていることなんて意識もしてないのだろう。


大翔はふと不安に思った。


愛梨は・・・男友達だったら誰でも手を繋ぐのか?




相変わらず、この車はいいシートにいい匂いだわ。

心地よい音量で流れる音楽を聴きながら鼻歌を歌っていた。


「あ、この辺りで良いです。停めてください。」

「大丈夫、会社の前まで送ってあげるよ。」

「いえいえ、こちらこそ大丈夫です。会社の前は邪魔になりますので。そのひっそりとした辺りに停めてください。」

「そう言わないで、会社まで送っていくよ。」

愛梨は横を向いて、ガシッと大翔の腕を掴んだ。

「碓氷さん!降りますって!!」

「だ~め~、会社の前まで行くよ」


ぎゃーぎゃーと車を降りる降りないを繰り返し、結局会社のエントランスと言うかなり目立つところで降ろされた。

しかも、助手席のドアを開けてもらうというオプション付きで。

チョー目立つんですけどー。


三白眼になった愛梨は、しぶしぶ会社の目立つところに降ろされた。



会社のエントランスのど真ん中に、ピカピカの高級車が横付けされ、高身長のイケメンが車から颯爽と降りてきたら、通勤途中の社員のみなさんも足が止まっている。

女性社員の皆さま方は、きゃあきゃあと言い始め、人だまりが出来ていた。


そして、社長令嬢の私が降りてきたらどよめきが起こった。

そりゃそうでしょう。

金曜の夜までは普通に電車通勤だったし、こういう男性の噂なんて全くのゼロだったわけだしね。


こんな騒ぎになっている周りを気にしていないのか、大翔は特に変わった様子も見えない。

ん?・・・慣れてる・・・?・・・(ふう)にも見える・・・?


大翔は、ため息をついている愛梨を見て満面の笑みを浮かべた。

「はい、愛梨、いってらっしゃい。今日も頑張ってね。」

大翔は腰を折り、愛梨の頬へキスをした。


「――――――ッ!!」

愛梨の顔は真っ赤になり、勢いよく手を頬に当てた。


「あはは。顔、真っ赤だよ。」

―――あ、この笑顔―――

ちょっと砕けた様なこの笑顔にドキッとした。


心臓がバクバクいってるし、顔真っ赤だし、話題を変えなくちゃっ!と思ってグルグル考えた。

とっさに出てきた質問が・・・。


「碓氷さんは外国人ですか!?」


あ~・・・テンパりすぎてなんてアホな質問を・・・。

今度は頭を抱え項垂れた。


「残念ながら、僕は生粋の日本人だよ。」

大翔が予想していたよりも遥か上を行くの愛梨の質問に吹き出しそうになった。

大笑いしたいのを我慢して、くっくっと笑いながら、愛梨の頭をなでながら質問に答えた。

そして、こんな純粋な反応を見せてくれて嬉しく思った。


何とか自分を落ち着かせたので、愛梨は次の質問は普通にした。


「そういえば、こんな時間にココに居て、碓氷さん、仕事は良いんですか?!」

「仕事?うん、大丈夫だよ。今日は一度出社して朝の仕事を終わらせて、愛梨を迎えに来たから大丈夫。」

「え?出社してきたんですか?」

「そうだよ。愛梨に会いたくて。」

にっこり笑顔とほほ笑まれて、愛梨は恥ずかしくなってまた俯いた。


「わざわざ迎えに来なくていいですか・・・ら!?」


ふと目の端に入ってきた人影をチラッと横目で見た。


げっ!瑠依!?


会社エントランスで、一部始終を見てニヤッとしている瑠依と目があった。

そして、私は、自分たちの周りを見渡すと、ものすごい人だかりになっていた。


うわッ!ここ会社のエントランスだった!!すっかり忘れてたッ!!

うげッ!周りにこんなに人がたくさんいたことも忘れてたッ!!


真っ赤になったり真っ青になったりの愛梨は、ぎゅうぅっと大翔の袖を掴んだ。

大翔は愛梨を見て、そっと背中を押した。

「愛梨。仕事頑張ってね。行ってらっしゃい」

車の横で愛梨に手を振り、周囲の人間には眩しい笑顔で見送った。


愛梨は、大翔にぺこりとお辞儀をして、瑠依の方へ走って行った。

「おはよ~愛梨チャン。さて、今日のランチは愛梨のおごりで、たぁ~っぷりお話を聞かせていただきましょうね」

「お・・・おはよ・・・瑠依サマ。了解しましたデゴザイマス。」


チラッと後ろを振り返って大翔の方を見ると、ゆっくりと発進していくのが見えた。


あ、送ってもらったお礼言ってなかった!

あ~~~~どうしよう。こういうところはちゃんとしておかないとッ!

そっそうだ!ひとまずLINEでお礼を入れて・・・。


あ―――!!連絡先知らないッ!!


大翔の連絡先も、会社も、家も、全く何も知らないわッ。

どうやってお礼を言えばいいの?

碓氷さんが来てくれないとお礼も言えないとか・・・情けない。


そう思って、肩をがっくりと落とした。


仕方ない。後でお父さんに聞こう・・・。いや待てよ、あの父が簡単に教えてくれる?

それは“否”だわ。こういう時は、持つべきは弟よッ!


うん、そうだわ!っと一人浮き沈みしてる愛梨は、瑠依に大声で呼ばれた。


「ほら、愛梨!早くおいで!置いてっちゃうよ~」

「あ、ちょっと待ってー!」


人だまりの間をバタバタと抜けて行った。

その時に、好奇の目を向けられているのがヒシヒシと感じた。




しかしこの後、この朝の出来事以上に、更なる出来事が愛梨を襲った。

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