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次代女王  作者: クンスト
プロローグ 今代女王
30/30

誕生日当日

 一地方軍の戦力など高が知れている。ブラウンズの決起軍は僅か半日で降伏してしまったため、私の誕生日に間に合ってしまった。

 戦場となった王都はボロボロ。

 出軍と内乱で内政のほころびは諸国にモロバレ。

 王位継承の儀だというのに、足の遅い王国軍の武官共は皆遅刻。

 最悪の門出と言って良いだろう。


「まぁ、私らしいけど。遷都せんとの口実にはもってこいだし」


「公爵会から統治権を剥奪した途端にそれですか」

「新築マイホームは主の夢らしいわよ。それと、今日は大事な儀式らしいから、クロトは護衛に専念してなさい」

 御意、と一言残してクロトは去っていく。儀式では初めて民衆の前に姿をさらす事になるが、混乱が生じるのは必定だ。護衛騎士の隊長が暢気のんきに私語をしている余裕はない。


「……クーも警備がんばっている?」


「そりゃもうっ! たった数分でスナイパーがダースで見つかるなんて、ガーネット様の人外の人望には惚れ惚れしますよ」

「へー、たった十二人。裏の建物にも弓構えている奴がいるから合わせて十三人かぁー」

「どうして僕やマチカさんよりも敏感なんですかっ。行ってきます!」

 クーを代表に幾人かのハーフデモンは継続して使役していた。

 現地雇用した所為で個人個人の灰汁あくは強いが、私がうまく使いさえすれば新女王体制を支える即戦力となるだろう。



 舞台が整い、私は民衆を見下ろすために足を踏み出す。

 数十万の人間を眺めるのはこれで二度目の経験である。やはり、人間がうごめいている光景は深夜の墓場よりも不気味だ。しかし、不思議と嫌いではない。

 次代女王、いや、今代の女王の登場に対して賛美喝采した後、民衆はゆっくりと静まり返っていく。

 そして私の姿を認めた者から順に、不敬にもどよめき始める。


「……新たなる女王の誕生を疑念の心で迎え入れるとは、流石は私の愛らしい民草。素晴らしい心構えよ」


 これからの統治をどう行うか。民を活かすもなぶるもすべては私の裁量次第。自由度が高過ぎて、答えはまだ見出せない。

「だから最初に宣言しておくわね」

 しかし、この主軸だけは次代女王の頃から決めていた。


「女王にとって大切なモノとは、王国一の財力でも、強大な軍隊でも、ましては男女間主従間の愛でもない。それらを余さず含有する王国そのものが女王にとって大切なモノとなる。財も軍も愛さえも、国内に存在するなら私が愛でるに足るモノとなる。当然、その中には民も含まれているわ。つまり民とは女王のモノなのよ!」


 クロトを含めた護衛騎士は暗殺者に対抗するために求めたモノである。

 ハーフデモン等は王国軍に対抗するために服従させたモノである。

 仮面の暗殺者、グッセル、ブラウンズ公爵は私が女王となるための障害だったモノ共だ。

 どいつもこいつも、私にとっては大切だ。愛でてやるに足るモノ達だ。


「あえて宣言するわ! ヒトは平等ではない。けれども、すべての国民は女王の下でのみ平等に扱われる。私のために生きていれば、安穏でなくとも幸福な暮らしができるわよ」


と、いう訳で完結です。

次代女王は女王となり、面白おかしく国を運営していくのでしょう。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読了しました。 個々人のアクが強かったですねぇ。 (次代)女王の権威が、どう積み重ねられてきたのかなど、 いろいろ知りたくはありましたが、 キリよく一気に読み切れました。 きっとこれから、…
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