第二十三話 留守番
「ロゼットー…。ロゼットー!…うぐー、テレビもない、ケータイもない、ゲームもない!暇ー!」
勉強だけでは息が詰まる。読書をしようにも文字が読めない、夕方前にハルカの我慢は限界を越えていた。地面を転がってみるが何も起こらない。家の中にいても気分は下がっていく一方だ。あれだけ注意されたにも関わらず外が気になってしまう。
「洗濯なら外出てもいいかな…。」
即決して外に出るほど危機感がないわけではない。一瞬扉を開いてみるがやはり虫や動物を恐怖して閉めてしまった。しかし興味は尽きずもう一度同じように扉を開け閉めする。それを何度か繰り返していた。その後家主であり恩人のロゼットの言い付けを破るわけにはいかないと思い止まり、鍵を掛けて部屋の中央に戻る。
「早く帰ってこないかなぁ…。」
ロゼットはもうハルカの生活の一部になっていた。居ないだけで心もとなく、そして何より暇だった。一人呟いたところで部屋にノックが響き渡る。
「!?」
先ほどまであれほど暇だと言っていたハルカに一気に緊張が走った。一人の時に来客など恐ろしすぎる。扉に近づくことすら出来ない。そのまま息を潜めて無視をしていると扉がガタガタと大きく揺れた。どうやら無理にでも開こうとしているようだ。
「ロ…ロゼッ…!」
ベッドの中へと潜り最大限自分の身を守ろうとする。夏だというのに歯が震えカチカチと音を立てた。その小さな音で存在を悟られてしまうのではと必死に食い縛るも止まりはしない。
耳だけを頼りに情報を得ようとする。ゴドンッとよく解らない音がしたあと何者かが部屋に入ってきたようだ。床が軋む音がする。一歩、また一歩とこちらに近づいてきた。布団が勢いよく取り去られる。
そこにいたのは巨人だった。とって食われる、そんな感情を抱きながら泡を吹いて倒れ、そこでハルカの意識は途切れた。