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こびとのせかい  作者: 豊田小麦
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第九話 大掃除

 


 ここに来て間もないハルカだが、一つ確かなことを理解した。ロゼットは類い稀なる不器用だ。二人で掃除を始めたのはいいがロゼットが動く度に物が散らかっていく。躓いて転び、物を踏んで壊し、蛇口を閉め忘れて水が溢れ、掃除はいっこうに進まない。


「ロゼットさん、まず荷物外に出しても良いですか?」

「あ、全部好きにして良いよ。掃除道具もそのうち出てくると思う。必要なものがあったら使ってもらって構わないから。……それよりあの、ハルカさん…本当に俺出掛けていいの?」


 その結果、ロゼットは一時的に家を追い出されることとなった。本人が手伝うと言おうとハルカが再度頷くことはない、それ程にロゼットは不器用を極めていた。とぼとぼと鞄を持って出掛けていく彼の背中を見送る。


 そしてようやく本格的な掃除が始まった。家の中だけではどうしようもないために、一度外に荷物を出してそれから綺麗にしていくという大仕事だ。

 ハルカはいちいち引きずる裾を煩わしく思い、タンスから一本腰布を拝借して無理にウエストで固定を計る。すると不格好なことに変わりはないが、何とか引きずらずには済むようになった。


「さっ!バイト頑張ろ!」


 まずはとにかく部屋と外を何往復もし、荷物を運び出していく。商人という職業上ロゼットの部屋は売り残しも含めたくさんの商品と私物に溢れている。


「なんで脱いでそのままにしちゃうかなぁ。」


 先程着替えたばかりのパジャマですら投げてある現状に頭を悩ませる。片付けが苦手なのはわかったがこの癖を直さねばいくら掃除をしてもまた同じことになりかねない。


「タライだ!バケツもある!ていうか木と金物のバケツって職人技っぽいなぁ。」


 部屋を空に近づけていくにつれて様々な道具が見つかる。彼女が見つけた中で何より驚いたのは調理道具だ。1Kの間取りであんなにもキッチンが埋もれていた部屋、そこで料理をする気が微塵でもあったことが凄い。

 その調子で動かせないもの以外をすべて外に出す。明らかになった部屋の全貌を見て驚いた。思っていたより広いのだ。彼女が元いた世界の基準で言うのなら12帖くらいはあるだろうか。


「すごいすごい!広い!……汚い…。」


 ハルカはここまで部屋を露にできたことが嬉しくて床の上を転がる。するとあっという間に埃にまみれてしまった。上がったテンションは一気に下がり再び掃除に取りかかる。見つけた雑巾でワックスらしきものまで塗られ、整えられているフローリングを拭いていく。棚の中は勿論ベッドの下まで潜り込むことも忘れない、お金をもらうからには彼女は妥協を許さないのだ。


「ぴっかぴか…!」


 何度も床を拭き、雑巾を洗いを繰り返した甲斐があった。もう寝転んで埃が付着することはないし、黒ずみもしない。ハルカのテンションは一気に上がっていく。


「次は~…物を所定の場所に!ガラクタは…ここ!」


 一人でも楽しそうに取り仕切り、調理道具をしまい、生活道具は棚の一角に入れていく。ガラクタ呼ばわりされた物は商品なのだが、ロゼットの職業について野宿はお手の物としか情報がないため正しく見られることはない。しかし、呼称は間違っていても次々に整頓されていく。


「お、わ、ったー!」


 数時間の時を使い、とうとう家の中が綺麗になった。床は輝いて歩き放題のスペースを確保している。あとは洗濯をして絨毯を敷くだけだ。ハルカは小人の世界の洗濯の仕方を知らない。ロゼットが帰ってくるまでの間一時休息の時を楽しむことにした。

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