第1話・・・出会い
この話はペンギン日和の外伝的な話になります。
時系列でみてペンギン日和より前の話となります。
そのメールは、突然送られてきた。
朝起きると、まずマシンへ行き、眠い目をこすりながらメールチェックをして、今日の行動予定を立てるのがあたしの日課だ。
大学から送られてくる休講情報、友人からくる他愛無い雑談メール、どっかの店から送られてきたチラシ……
ふと、友人からきたメールの中に気になるメールを発見した。
タイトル:よろしく頼む。
差出人:なおき
本文:リキをやった。後は頼んだ。
差出人は物心ついたときには一緒にいたづらをしていたような腐れ縁の幼馴染の親友からだ。
めずらしいな、あいつからメールが来るなんて。メールよこすぐらいなら自分でうちに押しかけてくるのに。でもこのメールなんか変だな、どうしてわざわざいくからなんて連絡よこしたんだろう。何を頼まれてるんだ?
この親友は変わり者だが天才と呼ばれるタイプの人間で、「星の愛し子」としてあたしが中学を出るころには博士課程に進んで、今ではノーベル賞にもっとも近い人間だなどと新聞や雑誌に取り上げられているような奴だ。
あたしには「星の愛し子」なんてものはよくわからないが、何をしても必ず成功する「ツイてる人」らしい。テレビなんかでは、遺伝で決まるとか体質なのだとかいろいろ説明していて情報には事欠かないが、いまいち難しくてあたしにはわからない。とりあえず「星の愛し子」と呼ばれる人間は必ず皆同じ脳波を持っているらしい。
ちょうど中学に上がる頃に「星の愛し子」というものが世界に発表されて、親たちはこぞってうちの子こそそうだ、と研究所に押しかけた。なにせ国が「星の愛し子」は全力でバックアップして、セレブ並の生活保障を行うと発表して、認定は発表を行った研究所で行うと直後に発表したからね。まったく、さすがは神風とかいっちゃう国だなとしみじみ思う。昔から運も実力のうちなんて言葉があったけど、まさか科学的に証明されるなんてね。
そんなわけで、もちろんうちの親もあいつの親もうちの子こそはと名乗りをあげた訳さ。結果あいつは見事に「星の愛し子」として認定されて今じゃよくわかんない科学研究所で主任研究員とやらになったらしい。
結局この短すぎるメールの意図がつかめず、気になったので本人に連絡を取る事にした。
・・・・・・トゥルルルルル・トゥルルルルル
電話は呼び出す音を鳴らすばかりで、持ち主が出る気配はなかった。
なおきはずいぶん茶目っ気のあるやつだがこういういたずらをする時は伏線をいつもはる。勝手にいなくなるなんてことはしなくて、何処にいくにしても連絡はつくようにする奴だ。
・・・・・・なにかあったのだろうか。
しばし行方を思案しやめる。まあ近いうちに連絡があるだろう。あいつはあたしの心を読んだかのように、あたしが連絡しようとすると連絡が来るのだ。これもあいつが「星の愛し子」であることと関係があるらしい。まぁ、あたしにはよくわかんないけど。
ところで件のメール、どういう意味だろう。やった、ということは何かがあたしのとこに来る訳か・・・
―――ピンポーン
その時、あたしの思考を邪魔するかのようにチャイムが鳴った。滅多にこない宅急便か、これまた滅多にこない押し売り勧誘しか鳴らさないチャイム…このタイミング、“リキ”とやらががついたのか…?
あたしはそーっと玄関に近づいて外を伺った。うーん、なにか茶色い動く物が見える。
「あのぅ、すいませーん」
なにやら外から声も聞こえてきた。どうやら人のようだ。あたしは思い切ってドアを勢いよく開け放つ。
そこに”彼女”は立っていた。