風夜、村長に頼まれる。
「ここがワシの家じゃ」
「ここがか?」
着いた先は周りより少し大きいくらいだか違和感なく建っている一軒家だった。
「そうじゃ。建てるときはもう少し小さくても良いと言ったんじゃがの」
「そうはいきません。あなたはここの村の長です。これ以上小さくすると、周りの者たちへの威厳にも関わります」
そう答えたのは、最初に俺たちに話しかけてきた村人だった。
「家の大きさと威厳は関係ないと思うがの」
とぼやきながら村長は家の中に入っていった。一緒に入った俺たちは居間に通された。
「空いているとこに座るが良い」
と言われたので、俺たちは机の近くに適当に座り、机を挟んで向かい側に村長が座った。
「まずは自己紹介でもしようかの。ワシの名前はジルノと申す。一応この村の村長をやっておる」
「一応は余計です」
村長の言葉に対して鋭い指摘をする村人。
「こやつの名はラニアンという。ワシの身の回りの世話、主に仕事を手伝ってもらっとる」
ジルノに紹介されたラニアンは軽く頭を下げた。彼一人だけ立っているのは、ジルノに何かあった時にすぐ動けるようにだろう。
「俺の名はカザヤ・カミヤだ」
「私はセキと申します」
「ふむ、カザヤにセキか。カザヤは貴族なのかの?」
ん?貴族?
「いや、違うが?なぜそう思ったんだ?」
「家名を持つのは貴族や王族た特例のやつのみじゃ。平民でも持つ者もおるが、ほとんどおらぬよ。」
エリスめ、そんなこと一言も聞いてないぞ。
「そうなのか。俺のいた国とは違うんだな。
」
「ちなみにおぬしの国は何と言うんじゃ?」
「俺の国は日本というところだ」
「日本....知らぬな。その日本とやらはどの辺にあるんじゃ?」
「遠くにある国だ」
異世界と言ったら面倒くさいことになりそうだな、と思い、適当に答えた。
「まあ、深くは聞かんがの」
この質問をいくらしても、はぐらかされるだろうと悟ったジルノは別の質問に切り替えた。
「ところで....おぬしたちに頼みがあるんじゃが」
やっとその質問が来たか。ここからが本題だな。
「何かあるとは思ったが....頼みとは何だ?」
「そんな難しいことじゃない。この村の周辺に生息するゴブリンの主がいるはずじゃ。そいつを討伐してもらいたい」
ゴブリンはわかるが、ゴブリンの主だと?
「何で討伐してほしいんだ?」
最近、狩りに出ている若者たちがゴブリンの被害にあうことが多くなっての。その若者たちが言うにはゴブリンの主らしきものを見たそうじゃ。ゴブリンの数もいつもより多くなっているらしい」
「つまりはゴブリンの数を減らしつつ、まとめ役の主を倒せということか? 」
「そういうことじゃ。何か質問はあるかの?」
「どうして俺たちなんだ?第一俺たちが倒せるかわからんだろ?」
これは純粋に思ったことだ。俺たちの服装は見た目戦う格好ではない。ではなぜジルノは俺たちに頼んだのか。
「ワシは若い頃、戦いに身を投じた仕事をしていたのじゃ。だからかの?経験からか相手の力量がだいたいじゃがわかるのじゃ。特に....セキと言ったか、お主はとても強い力を持っておるようじゃの」
この爺っ!セキが普通ではないことに気づいてやがる!
「 そんなことありませんよ。まだまだです」
ばれかけていることがわかっのか、当たり障りのない言葉で答えるセキ。
「セキの力があれば、充分、奴らを倒せるじゃろうて」
そんなこと言ってやがるが、一泊の見返りが大きすぎるだろ!....まあ、セキだけ行かせればいっか♪
「わかった。ならセキにその役目を任せよう。ま、頑張れよ」
とセキに仕事を押しつける風夜。
「え....風夜は来ないのですか?」
「ああ、セキが討伐に行っている間、俺は情報収集しているよ」
「実は倒しに行くのが面倒くさいだけなのでは?」
「何を当たり前のことを。当然ではないか!」
隠さず、堂々と肯定しる風夜。これに対して、呆れたのか、一つため息をつき
「あなたの性格はわかっていましたが、こちらでも変わらないのですね.....わかりました。討伐の方はお任せ下さい」
「そうかそうか!やってくれるか!なら頼んだぞ。....今からじゃけど」
「わざと時期を言わなかったな!」
「聞かなかった方が悪いんじゃ。そういうことで、今から行っていきてくれるか、セキ?」
「わかりました。では、行って参ります」
そう言って、セキはジルノの家を出て、情報にあった場所に向かった。
「で、わざわざセキを追い出して....俺に何か用があるんだろ?」
「ほう、ようわかったの。ゴブリンの話は本当じゃが、おぬしには、まだ聞きたいことがあっての」
やっぱりな。明らかにセキを追い出すような素振りだったからな。多分、俺の戦力を見抜いての行動だろう。
そう言ったジルノは今までのノホホンとした表情が急に真剣になり
「単刀直入に言うが、おぬしら.....何者じゃ?」
とジルノは切り出してきた。