囚人
短編です
よく、同じ夢を見る。
長年の付き合いの友人が、目の前で死んでいる夢だ。血だまりの中、目から生気が消えていく。俺の手は真っ赤に染まっていて、同じ色に染まったナイフが、きらりと光る。俺は慌ててアイツの元に駆け寄って、必死に声をかけたけど、目に生気が戻ることは無かった。
あの日俺は、アイツの家に遊びに行ったんだ。新作ゲームを一緒にやろうって約束していたから。
俺を家に招き入れて、アイツは、笑っていた。俺が、近所のコンビニに行くと言って家を出た、ほんの、15分程度の時間の間に、アイツは血まみれになっていた。
「なんで、どうしてっ」
そんなことを叫びながらアイツを起こそうと肩をゆすったけど、アイツは目を覚まさない。俺は気が動転していて、救急車を呼ぶ前に警察を呼んでしまった。
ほどなくして到着した警察に、何故か俺が逮捕された。確かに状況としては怪しいかもしれないけど、俺じゃない、信じてくれ。
そう思ったところで目が覚める、あの日の記憶。人は簡単に死ぬんだと、あの日俺は思い知った。ナイフひとつで?とも思うけど、怪我の場所が悪かったらしい。血が絶え間なく流れていたし、俺が帰ってきたころには、もうアイツの目に生気は宿っていなかった。
「どうですか?」
俺の目の前に座るカウンセリングの先生は、毎回同じようにそう聞く。俺の答えも決まっている。
「相変わらず夢を見ます」
「そうですか」
そこから軽い問答をして、カウンセリングは終わる。
「ではまた明日」
先生に軽く会釈をして、自室に戻った。このカウンセリングには、何の意味があるんだろう。
夜、また同じ夢を見た。
血に染まる友人、手の中に納まるナイフ。生気を失ったアイツの目。
あぁ、またこの夢だ。あの日を何度もループしている。もういい加減、辞めてくれ、俺を解放してくれ。
頭が痛い。頭痛を抑えるべく、血みどろの手を顔に近づけると、ナイフに俺の名前が書いてあった。
あれ、このナイフ・・・どうして。
これは俺が、キャンプ好きだった父親にもらったナイフだ。様々なことに使えるサバイバルナイフ。それこそキャンプでは大活躍で・・・。
あれ、俺、なんでコンビニ行くって言ったんだっけ?なんか、アイツと口論になったんじゃなかったかな・・・。あれ?記憶が、なんだかおかしいな。
俺の掌に残る、人のカラダに突き刺さるナイフの感触。あの時、俺は、こんなにも手に感触が残るのかと感心していたような気がする。
あれ、おかしいな。あれ?あれ?
「うあぁぁぁぁ・・・」
俺は俺の叫び声で目を覚ました。心臓が高鳴っている。そんなはずはない、俺とアイツは親友で、たとえ口論したとしても、殺すなんて・・・。
「ありえない・・・俺は・・・違うっ」
急に浮かんできた妙な考えを消すべく、俺は俺の頭を何度も壁に打ち付けた。
「先輩、あいつまたやってますよ?」
「あぁ、いいんだよ、あいつここに来てからずっとあんな感じなんだよ」
「親友だったんですよね?」
「らしいな、理由はしょうもない口論だったらしいけど、今となってはもうわからん」
「怖いっすね、あんな風に変わっちゃうと」
「まぁ、しばらくしたら落ち着くよ」
先輩の言う通り、あいつの叫び声は、ほどなくしておさまった。様子を見に行くと、壁に頭を打ち付けすぎて、気を失ったみたいだった。
——囚われた男——
囚われる、囚われる。




