4.再生
初夏の光が差し込むグループホームの庭。
男性は、短時間バイトの後に帰宅し、庭先で深呼吸をしていた。
少しずつ、自分の生活リズムを取り戻している。
支えられながらも、自分で歩く力をつけてきた。
千早はオフィスで資料を整理している。
まだ不安はある。
でも、支えを受けながら患者と向き合う術を学び始めた。
「一人で抱え込まなくていい」
その感覚を少しずつ実感している。
桜は、二人を見守る立場に立っていた。
かつて新人だった自分も成長してきた。
今は先輩として、揺れる後輩を受け止め、導くことができる。
ある日の面談後。
千早がぽつりとつぶやく。
「天瀬さん......自分、少しだけ前より強くなれた気がします」
桜は微笑む。
「私も、同じ。まだ揺れてるけど、歩ける」
男性が遠くから声をかける。
「俺も、迷惑かけながらだけど、ちゃんと歩いてる」
三人は庭の光に包まれながら、静かに笑った。
揺れることは悪くない。
支え合うことは、決して弱さではない。
再生とは、倒れずに立つことでも、完璧に回復することでもない。
迷いながらも、手を取り合い、また歩き出すこと。
その日、桜は深呼吸をした。
支援者も、患者も、後輩も。
それぞれの歩幅で、再生は進む。
そして、今日もまた、誰かの隣で手を差し伸べる自分がいる。
支えること、支えられること。
それが、境界線のワーカーとしての、生きる力だった。
完結です。
ありがとうございました。




