第8話 ジョバンニ、バズる
先生、ごめんなさい。
動画を配信しない、という、先生との約束を破り、ネットに投稿した、わたし。
SNSはたいへんな騒ぎとなる。
──投稿。
画面に「公開しました」の文字。
もう、引き返せない。
わたしは改めてスマホの動画を開いた。
ジョバンニとカムパネルラの動画を再生する。
夕焼けと星空をバックに、ふたりが笑っている。
先生──カムパネルラの姿があまりにも美しく、涙が出そうになる。
十回、二十回と見続けて、
ようやく顔を上げたとき、胸の奥で何かが決壊した。
「先生……ごめんなさい。でも、真実を伝えます」
SNSをみると、動画の視聴数がどんどんのびていた。バズっている。
「これ殺人じゃねーの」
「女性教師は自殺した。」
「フェイク動画だろ」
「女子高生の妄想に釣られるな。」
「この学校の屋上、特定!」
「○○市の○○高校だべ」
「AIで加工してんじゃね?」
「バカか、もともとAIアプリだっつーの」
「テレビ見ろ。女性教師は自殺。」
「いやガチのコロシだ、コレ」
「この学校の屋上、特定!」
「もう、わかってるって」
「位置バレしたらやばくね?」
「宮沢賢治作品って悲劇多いよね…」
「愛国者は宮沢賢治など読まぬ。」
「警察呼んだ方がよくね?」
「警察官なら現場にいるぞ。」
「警察を呼ぶな。」
「てか教頭こわ…」
「教頭こそ真の愛国者。」
「だれか現場近い人いないの?」
「配信者、生きて…!」
「これ絶対ニュースになるやつ」
「これはマジだ」
「続報まってる」
「ホントに現場で生配信すんの?」
「正座待機!」
SNSは騒がしくなっていた。
これなら、いける。
現場からの生配信でダメ押しだ。真実はネットで明らかになる。世論が動く。先生、わたしが仇をとります。わたしは思った。
わたしは、覚悟をきめて、制服に着替え、スマホをポケットに入れ、上着を羽織った。両親にないしょで外に出た。
殺人現場の屋上で生配信し、真実を明らかにしようとする、わたし。
無事、先生の仇をうてるのか!?




