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第7話 裏切りのジョバンニ

警察はAI動画は証拠にならないという。

殺人犯の教頭の嘘の証言を、警察は信じている。

真実を知っているのは、わたしだけ。

わたしが真実を訴えるしかない。


でも、先生はAI動画を配信しないで、と言った。

先生と約束した。

あれが先生の遺言になってしまった。


先生との約束を守るのと、

先生の仇をうつのと、

どちらが、正しいのだろうか?

 警察署から家に帰ると、両親は疲れたのか早々と寝てしまった。


 わたしは、自分の部屋で眠れずにスマホをぼんやりと眺めていた。


 警察はちゃんと捜査して、教頭の犯罪に気づいてくれるだろうか?AI動画は証拠にならないと刑事さんは言った。音声データは証拠に採用してくれるだろうか?


 先生は自殺したという証言があると刑事さんは言っていた。あのとき屋上にいたのは先生と教頭だけだ。教頭が嘘の証言をしているのはまちがいない。教頭のでたらめな証言を警察は信じているのだろうか。


 女子高生のスマホのデータと、50代の地位のある男性教頭の証言、どちらを警察は信じるだろうか?

 このままだと、きっと真実は闇に埋もれてしまう。


 部屋の灯りを落とし、スマホだけが淡く光っている。


 わたしは何度も迷った。


「先生、ごめんなさい」


 口の中でその言葉を何度も転がす。

 先生はあのとき、笑いながら言ったのだ。


「この動画は配信しちゃダメよ。」


 確かに約束したのだ。あの声が耳の奥で何度もこだまする。そう、あれは先生の遺言になってしまったのだ。


 先生との約束をやぶるのはつらい。

 でも、先生を殺した犯人が捕まらないのもつらい。


 もう何もかも黙っていられなかった。

 警察は「自殺」と考えているようだ。

 ニュースサイトも「悩む女性教師転落」と決めつけるような書き方をしていた。

 ほんとうのことを知っているのは、わたしだけだ。

 わたしと、そしてあのスマホの中の動画だけ。


 SNSのアカウントを開く。


 このAI配信アプリはSNSツブヤッターと連動している。わたしには数万人のフォロワーがいる。

 ツブヤッターには「特定班」と呼ばれるユーザーたちがいて、なんでも特定してしまうみたいだ。AIアバターの歩き方から年齢、性別、職業を特定したのを見たことがある。写真のボヤけた背景から場所を特定したのも見たことがある。


 警察は証拠にならないと言ったAI動画だけど、ツブヤッターの特定班のみなさんならどうだろう。きっとAI動画から真実にたどり着いて世論を動かしてくれるんじゃないだろうか。


 あの2つのAI動画を投稿して、特定班のみなさんに、先生が殺されたことを特定してもらう。カムパネルラが先生で、猿の将軍が教頭だと特定してもらう。


 そして、わたしが、ジョバンニが、あの屋上から、殺人現場から、生配信して、真実を訴える。これで世論を動かし、警察を動かせるんじゃないだろうか。


 生配信の告知ページに「#真実を見て」という文字を打ち込む。自殺にみせかけた殺人の真実をあばいて!と打ち込む。


 スマホに残った2つの動画、ジョバンニとカムパネルラの美しいAI動画と、猿の将軍がカムパネルラを落とす恐ろしいAI動画を添付する。


 一瞬、指が止まる。

 罪悪感と、恐怖と、正義感が胸の奥でぶつかり合う。

 送信ボタンを押す指が小刻みに震える。

 先生、ごめんなさい!こうするしかないんです!


先生との約束を破っても、

真実を明らかにすると、決意した、わたし。

動画配信のフォロワーは、SNSツブヤッターの「特定班」は、真実にたどりつくのだろうか?


次回、わたしは、ひとり殺人現場にむかう。

無事、生配信で真実を訴えることはできるのか!?

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