第6話 警察署のジョバンニ
わたしは、警察に呼ばれた。
わたしは、叫ぶ。
先生は殺されたのだ。
犯人は教頭だ。
「これを見てください!」
わたしはスマホを取り出し、ジョバンニとカムパネルラの動画を再生した。
先生の笑顔、変換された銀河の背景、そして風の音。
「これは事件の直前に屋上で先生と作ったAI動画です。」
「AI動画?」
「こちらのカムパネルラに変身しているのが先生で、こちらのジョバンニがわたしです。こんなに楽しそうに笑っていた先生がこのあとすぐ自殺するわけがありませんっ!」
刑事はしばらく黙って見ていたが、やがて静かに言った。
「これは……AIで変換された映像ですか?」
「はい。でも、音声はそのままなんです!」
「残念ですが、こうした編集済みの動画は、証拠にはできません。
元の映像、つまり未加工の動画はありますか?」
わたしは言葉を失った。
胸がぎゅっと締めつけられる。
「……プライバシー保護のために、もとの動画は保存しない設定なんです。
AI変換アプリだから……」
刑事は小さくため息をついた。
でも、責めるような口調ではなかった。
「音声だけでも、状況をしめす価値はあります。他に動画や録音は?」
「もうひとつ、AI動画があります。これを見てください。」
わたしは震える指で動画を開いた。
画面の中のサルの将軍が、カムパネルラを掴み上げる。
風の音。
そして、あの瞬間。
刑事と警察官の目が見開かれた。
体を前のめりにして、画面をのぞき込む。
「このデータ、コピーを取らせてもらえますか?」
「先生の……無念を晴らしてください」
気づけば、わたしはそう言っていた。
しかし、刑事は申し訳なさそうに言った。
「事件と決まったわけでは、ありません。先生が悩んでいた、自殺だ、という証言がありますし…」
「それは嘘です!そんなことを言うのは教頭でしょ。その教頭が犯人なんですよ!」
わたしは、叫んだ。いつか頬を涙がつたっていた。
しばらくして、刑事はスマホを返してくれた。
「AI動画は証拠にはなりませんが、音声データは手がかりになるかもしれません。御協力に感謝します。」
「先生は殺されたんです。犯人を捕まえてください!」
「自分で飛び降りた、という証言もありますが、慎重に捜査しています。」
わたしは、目の前が真っ暗になった。
先生は、飛び降りたりなんかしない。先生は、殺されたんだ。
胸の奥で、同じ言葉が何度も反響していた。
AI動画は証拠にはなりませんでした。
先生の仇をとりたい。無念をはらしたい。
真実をみんなに知ってもらいたい。
わたしは、悩みます。




