第14話 カラスの義勇艦隊
配信を妨害され、絶体絶命のわたし。
そこに意外な味方が現れます。
教頭はバカな生徒が自暴自棄になったと思ったのか、無理心中させられると思ったのか、あわてて、身をそらして、わたしから離れた。
しかし、教頭は、わたしの片腕と電波妨害装置はつかんだまま。
わたしはジャンプして装置を奪おうとしたが、体格が違う。届かない。
教頭がニヤリと笑い、何か言おうとした、その瞬間、星空が、北斗七星が、黒く陰った。
バサッ。バサバサッ。
夜空を覆うような黒い影が渦を巻き、羽音が屋上全体に響く。
見上げると、異様な数のカラスが校舎の上空に集まっていた。
カラスたちは一斉に羽を広げ、夜の屋上が、さらに濃い闇に包まれ、風が逆巻き、空気そのものが張りつめていく。
教頭が、わたしから目を離し、空を見上げたそのとき、ガアアッ、と鋭い鳴き声が夜空に跳ねた。カラスの群れに、まるで世界のどこかで“見えない誰か”が合図したかのように、カラスたちは一直線に急降下した。
わたしは、危機一髪の状況も忘れて、カラスの統制のとれたみごとな動きに見とれていた。宮沢賢治の世界だ!烏の北斗七星だ!カラスの義勇艦隊の一斉攻撃だ!
カラスたちは、黒い一本の槍となって、電波妨害装置を持つ教頭の手に突き刺さった!
ギャアアアアァァッッ!
教頭は無様な声を上げて、わたしも電波妨害装置も手放して屋上に転がった。
カラン、と音を立てて、黒い小さな箱、電波妨害装置はフェンスと屋上の縁の隙間にすべり落ちた。
教頭の顔が真っ赤になる。
「くそぉっ……!」
わたしを突き飛ばし、装置の方へ走る。
フェンスの鉄格子の間に腕をねじ込み、なんとか装置を取り戻そうとする教頭。
わたしはその背中に、全身で体当たりした。
――ボキッ。
教頭の腕の骨の折れる音が夜気を裂く。
カラスたちの協力で教頭の腕を折った、わたし。
教頭の電波妨害をやめさせて、生配信でフォロワーと警察を呼べるのか!




