第13話 電波妨害装置
生配信で悪事が世界にバレたはずなのに、余裕の表情の教頭。
その手には入試で使う、あの装置が握られていた。
スマホを無効にする、あの装置が!
「教頭、それは…」
「そう。スマホの電波を遮断する装置だ。便利なものだよ。いまの若者は、スマホが使えないと何もできないだろう?」
背筋が凍った。
しまった!入試のときに説明された装置だ。カンニング防止のためにスマホの電波を妨害する装置だ。
ああ、ここまですべて配信できていない。教頭に会ってから全部妨害されていたんだ。フォロワーには何も伝わっていない。警察も来ない。
「……っ!」
「残念だったな。君の正義ごっこはここまでだ。」
教頭は、電波妨害装置を片手に掲げたまま、もう1本の腕と体でわたしを フェンスに押し付けた。
風が制服の裾を揺らす。
逃げ道は、もうない。
教頭の生臭い息が顔にかかる。
「フフフ、学校で生配信するようなお転婆娘には、たっぷりお仕置きをしてやるぞ。」
「何がお仕置きだ、このヘンタイ!手を放せ!」
「おお、おお、怖いか?
もっと怒れ、もっと怖がれ。
絶望に震える女性の顔は美しい。
怯える顔、怒る顔にこそ人間の本性が見える。
君の先生の恐怖にひきつった顔も実に美しかったよ。
顔だけで絶頂に達しかけたことは、ないしょだ。ハハハ。」
言葉が出ない。
涙が滲み、喉が焼ける。
先生の無念を思った。
恐怖にひきつる先生の顔が一瞬、脳裏をかすめた。
イヤ!そんなのイヤ!
先生には素敵な笑顔こそふさわしい!
そのとき、ふと、胸の中で先生の笑顔がよみがえった。勇気が胸を満たした。
とにかく、この男は、教頭は、生かしておくわけにいかない!
先生の仇をうつ!
わたしは息を吸い込んだ。
そして、勇気を振り絞って教頭に抱きついた。整髪料のニオイと生臭い体臭がイヤだが、そんなことは気にしない。
そのまま一気にフェンスから身をのり出した。教頭はわたしをフェンスに押しつけていたから、その力で勢いよく上半身を虚空につき出す姿勢となった。
このまま落ちればふたりとも死ぬ!
わたしの捨て身の攻撃!
先生の仇をうつ!
教頭を絶対許さない!




