第12話 ジョバンニの激怒
殺人犯の教頭の勝手な話しに、わたしの怒りが爆発!
フォロワーに生配信で呼びかける。
「やめてください!」
気づいたら、声が出ていた。
冷静に時間を稼ぐはずが、どうしたの、わたし。
「教頭先生は特攻隊員の方の気持ちを考えたことがありますか?
死を前にして悩むのがあたりまえですよ。
宮沢賢治ファンの特攻隊員の方の遺書を読んだことがありますか?
平和を祈り、軍の上層部を批判し、それでも国民を守るために、と言って亡くなったんですよ!」
教頭はゆっくりと振り返り、にやりと笑った。
「やっぱり、君もあの女に似ているな。
理想ばかり見て現実を見ない。
特攻隊員のくせに宮沢賢治ファンだと?
そんなのは本当の特攻隊員ではない。
軍神とはいえぬ。
おおかたそんな奴は犬死にしたんだろう。」
わたしのなかの、なにかの掛け金が弾けとんだ。教頭、この男、絶対に許さない。
わたしは、叫んだ。
「フォロワーのみなさん!
この男は!教頭は、殺人犯です!
先生を自殺にみせかけて殺しました!
わたしも殺そうとしています!
警察を呼んでください!」
どうだ。参ったか。もうすぐ警察が来るぞ。
わたしが殺されるか、警察が来るのが早いか、賭けだ!
警察が来るまでフェンスにしがみついてでも生きてやる!
教頭は焦って、わたしをすぐ屋上から投げ落とそうとするに違いない。わたしは身構えた。
しかし、意外にも教頭は、余裕の笑みをニヤリと浮かべていた。
「すばらしい。君は、女優の素質がある。良いものを見せてもらったよ。ますます気に入った。すばらしい生贄だ。」
「何を言ってるんだ!教頭、あんたは終わりだ!すべて、生配信しているぞ。わたしの数万人のフォロワーが警察を呼んでいるんだ!」
「ふむ、最期のセリフは少し荒いかな。もう少し美少女らしいおとなしいセリフのほうがいい。80点だ。」
なにかがおかしい。教頭のやつめ、なんでこんなに余裕なんだ?
「本当に残念だ。こんなにすばらしい、君の生配信の観客が、私たった1人だけだとはね。」
「なにをいってるの?わたしのフォロワーは数万人。配信予告をしたから、もっとたくさんの人が聴いているはず!」
教頭は、ニヤリと笑い、ポケットからなにか小さな黒い装置を取り出した。その装置には赤いランプが点滅していた。
教頭は、わたしをつかんでいる手と反対の手でその装置を高く掲げた。
しまった!あの装置は!
意外にも余裕をみせる教頭。
生配信の視聴者が教頭ひとりとはどういうこと?
教頭が見せた装置とは?




