建国
…。
視界が暗い。
…………。
「姫様、姫様!」
「!?おんぎゃあ!」
視界が開けると目の前にネズミが立っていた。
「うわ!ネズミ!?」
「何を言うておられるのですか。あんたもネズミでしょうが」
体から白銀の毛が生えていた。大きな耳にぷにぷにの手。
ネズミになってしまったようだ。
「あー、あなたは?」
「記憶を無くされたのですか?私は姫様の護衛兼執事のホームズです。」
「フム。」
私はネズミの姫のようだ。
いっひっひ。金持ち…。
「姫様はこれから、王国を作られるのです。」
ショックで死にそうになってボーッとしているとホームズが止まった。
「国民達はまだ来ておりません。この国を発展させ、人々を呼び集めましょう。」
「…。こんな所で生きてけないよ〜」
「今は国王様達と合流するために準備をしましょう。ですが、道中の道のりは過酷です。私たちだけで向かっても、ネコ達に狩られてしまいます。」
前世ではゲームが好きだったので、こう言う時は大体、木を切ればなんとかなる。
「木はどうやって切るの?」
「王国から逃げる時、少し物を持ってきております。」
持ち物には斧やツルハシ。少しの食料があった。
「フンヤ!フンヤ!」
斧で近くにあった木を叩いた。
不思議なことに木が小さく分解された。
「ホームズ、家とか作れないかしら?」
「フム。出来ないことは無いのですが…。設計図があればより頑丈で立派な家が建てられるでしょう。それより、今は寝床を確保しましょう。夜になればネコ達が活動し始めます。」
「ネコ?」
「我々の王国を滅亡に追い込んだ種族です。王国の兵士達でも歯が立ちませんでした。隠れるべきでしょう。ネコは汚れることを嫌います。小さな穴を掘って地中に家や寝床を作るべきかと。」
「じゃあ、ホームズは土を掘っといて。私は木を集めるね」
木を切ること数時間。
周りが暗くなってきた。
「ホームズさん?どんな感じですか?」
「2人分の寝床スペースは確保できそうでございます。」
「じゃあ、木を運ぼうか」
私が切った木を穴の中へ運んだ。
もう周りは真っ暗だ。
「ニャーォ!」
「姫様、ネコの目が覚めたようです。もう寝ましょう」
ベッドは木と水で固めた土の質素な物だけど、国が発展したような気がした。
…………………。
昨日の夜は全然寝られなかった。
一日中ネコの鳴き声が聞こえていた。
「ホームズ。ここは私が女王なのよね」
「ええ。もちろん」
「じゃあ、国の名前を決めない?」
「ほうほう。良いことですな」
「じゃあ、私たちはネズミだから…。ネズミーランド!」
ホームズのヒゲが震え始めた。
「!…。よ、良いですな。では、今日はネズミーランドの発展のため、働きましょう。」
「どうしましょうか。やっぱり作業台的なものがいるのかしら?」
「うーむ。何をするにも人手が足りませんな。人々が来れるように国の象徴となる物を建てましょう。」
ホームズはヒゲから紙を出した。
「王国の銅像の設計図でございます。これを建てれば国民も集まることでしょう。」
「石?がいるの?」
「地下の深層へ行けば様々な材料が手に入るでしょう。昨日、石を少し確保しておいたので銅像を建てましょう。」
数十分後。
銅像が建った。
初めての建造物だ。
建てた瞬間、1人のネズミがやって来た。
「姫様、王国の者でございます。久しぶりですね。」
「…フーム?名前は?」
「ロバートです。王国で力仕事をしておりました。腕っぷしには自信があります」
ロバートは見上げるほどの巨体で、筋肉もありそうだ。
「じゃあ、ロバートさんは地下を広げつつ、石も採掘してね」
「もちろんです」
「ホームズ、じゃあ次は何をしましょうか。」
「技術の研究、開発を進めましょう。農業や産業を発展させ、暮らしを豊かにしましょう。」
「そうだね、パンをちびちび食べる生活は早く卒業したいね」
「私は少し王国で農業の経験がありますので、種と道具さえあれば植物は育てられますよ」
「じゃあ、ホームズは農業の準備をしててね。」
「少し探索を進めるので、姫様、これを見て何か作っておいてください。」
ホームズに渡された白い紙には色々なものの絵と作り方が書かれていた。
「作業台やトイレ、研究所などの設計図があります。」
おお。キタキタ。
まずはやっぱり作業台を優先しようとするかな。
作業台をまずは作ろっと。
保管しておいた木を使って…
「セイヤァァ!ホィホィホホホィホイホイ!」
あら不思議。
作業台が出来ました。
「さてと、まずは研究所でも建てるかな」
数時間後。
研究所、トイレ、家、畑が完成した。
「姫様、これで全員分の食料は供給出来るようになったでしょう。生活に最低限のものは揃いました。」
「じゃあ、何をすればいいのかしら。人口を増やしていけばいいの?」
「ええ。その前に税金を発足しましょう」
「は?税金?」
「ええ。王国では当然のこと。と言うか全ての国でも常識的なことでしょう。国に住む以上、その国の王に対価を支払うのは当然。現在は国民は少ないですが、少しずつ資金を貯めておきましょう」
ホームズと話し終わり、地上へ戻るとネズミが2匹来ていた。
「あら、新しい国民。」
「姫様、私は研究家のソフィアです」
「一般市民。特に取り柄はないです…。マイケルです。」
「うっひっひ。金が歩いて来たわい!…おっと失礼。もちろん、労働力としてネズミーランドへ!」
地下からロバートとホームズが登って来た。
「ネズミーランドの人口が増えて来ましたね。そろそろ敵にも認知されるでしょう。研究を進めて、軍事技術を発展させましょう。それに通貨を使っていきましょう」
それから話し合い、ソフィアさんは研究所で研究をしてもらい、マイケルさんは貯蔵庫に石や木を運搬してもらうことにしてもらった。
今日はもう寝よう。