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 その後。僕は文子さんと他愛のない世間話をしながら残りのアルバイト時間を過ごした。あれ以来、来客はゼロ。閑古鳥が鳴くという慣用句がピッタリ。そんな昼下がりだ。これで店の経営は大丈夫なのか? そう不安になるほどに。

「うーん。ま、今日はこんなもんでしょ」

 文子さんはそう言って背伸びすると雪駄を突っかけて店先から顔を出した。そして「小町通りの方は混んでるみたいね」と恨めしそうにぼやく。

「まぁ……。あっちがメインストリートですし」

「んなこたぁ分かってるんだけどさぁ。あーあ、もうちょい繁盛してくんないと私食いぱっぐれちゃうよ」

 文子さんはそんな愚痴を吐きながらも暖簾を下ろした。どうやら今日はもう営業終了らしい――。


「ごめんねぇ。せっかくバイト来てくれてるのに何も仕事なくて」

 店じまいがすっかり終わると文子さんにそう謝られた。

「いえいえ。逆にすいません。こっちこそおしゃべりしてただけで給料貰っちゃって……」

「ん? ああ、金のことは気にしないで良いよ。最低賃金でこき使ってるんだからサボって貰って全然OKだからさ」

 文子さんはそんな風に言うと「在原くんにはなんだかんだ助けて貰ってるしね」と付け加えた。おそらく彼女は彼女なりに僕に迷惑を掛けていると思っているのだ。まぁ……。実際に面倒を掛けているのは僕の方なのだけれど――。


 アルバイトを終えると僕はすぐに鎌倉駅に向かった。そしてJR横須賀線に乗り込んだ。行き先は横浜駅。僕が普段過ごしている街だ。

 電車からの景色をぼーっと眺める。すると車窓に小さな雨粒がついた。ぽつり、ぽつり、ぽつり。それは次第に粒を大きくし、やがて窓全体を濡らしていった。

 僕はその雨粒が流れる様を眺めながらあることを思い出していた。そして目に映る車窓の景色とあの日の光景が混ざっていくように感じた――。 

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