表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日0時更新】魔王の娘  作者: 秋草
第三章 廻槃福音のエニアグラム
316/326

VSフウマ=カザツグ③

 五つの風が舞っている。カザツグの周囲にいるそれらが、扇の指示に合わせて宙を踊り、シャーミアたちへと飛んでくる。

 まずは三本。シャーミア、ルアト、ジセイへと先ほど同様にそれぞれ目掛けて、その首を狙う。

 斬撃は一度弾いた。同じ行動を繰り返されても、全員が対処すればシャーミアたちが崩れる要因はない。

 ならば何か狙いがあると考えるのが自然だ。このまま無策に風を飛ばせば、残数に限りがあるカザツグが明確に不利になる。

 続く追撃を意識しながら、シャーミアが迫り来る斬撃に対処する。短剣を構えて防ぐと、耳障りな金属音が響き渡った。


「――っ」


 相変わらず重い一撃だ。だが、防ぎきれないほどではない。真正面から受けるのではなく、流すように受けきると、さらに目前に白刃が肉薄していた。


「やっぱりね――」


 予想していた通りだ。絶え間なく続く攻撃で、誰か一人が崩れるのを期待しているようだった。だが問題ない。受けられない攻撃ではない。シャーミアは続けて放たれた一撃も短剣で受け止める。


「これで、風はないわね――っ」


 斬撃を弾くと同時にルアトの方を見る。彼の元へも二本目が到達しており、それを躱したところのようだった。


「おどれを守るもんもないなったのお!」


 唯一、二本目の斬撃を受けていないジセイが一足早く飛び込んだ。そしてカザツグへと刀を振るう。

 さらにルアトも躱した流れでジセイへと続いていた。挟撃する形だ。ジセイの一撃の方が早いと言えど、仮に彼の攻撃を躱してもルアトが控えている。

 シャーミアも短剣を構え直して彼らに続こうとした。


「甘いよ」


 その場にはそぐわない、軽やかな声。なおも余裕の表情を崩さないカザツグが、開いた扇で舞うようにして扇ぐ。

 迫るジセイへと、扇を一振り。

 それだけで堪え切れないほどの突風が生み出される。


「ぐっ――」


 ジセイの鍛えられた体であろうとも、その自然の力には抗えない。突き立てる刃と共に、彼の身は遥か後方へと引き剥がされる。


風前斬織(かざきり)の総数がなくなっても、ボク自身が戦える。風に隙はないんだよ」


「ですが、これでその防御手段もなくなりました」


 ジセイを飛ばしたその背後。ルアトが駆け寄り蹴り上げる。避けられない間合いだ。既にルアトは地面を踏み締め、振るう脚に力を乗せている。

 扇を扇ぐ暇もなく、その一撃が直撃する、はずだった。


「――時間だね」


「なっ――!?」


 白刃が、ルアトの体に線を刻む。胴に迫ったその斬撃は、ルアトの腹部を切り裂いて、鮮やかな血を夜に散らした。


「ルアト――っ」


 白刃による一閃を食らったが、彼の体は倒れない。そのまま一足で後退すると、着地と同時に膝を折った。


「カウンター、ですか? まんまとハマってしまいましたね……」


 乱れた呼吸と共に、悔しそうな声を上げる。斬られた腹部からは今もなお血が流れ出ており、致命傷ではないものの動けなくなるのも時間の問題だろう。


「おお、真っ二つにするつもりだったんだけど、存外硬いね。……でも、もう潮時じゃないかい? その傷じゃまともに動けないだろ」


 カザツグの声が響く。憎らしい笑みがさらに濃くなっている。当然だ。一人は最早万全とは言えない状態にまで追い込んだ。それに、また彼の周りに舞う風が復活している。総数は九本だ。


「どうだい? 信頼できる仲間が一人ずつやられていく気分は?」


 会話の余裕すらあるのか。シャーミアを見るその瞳には、狂喜と期待が滲んでいる。先ほど発した言葉への意趣返しだろう。意外と執念深いタイプなのかもしれない。


「そうね。最悪の気分だわ」


 だから、吐き捨てるようにそう告げる。カザツグが勝ちを確信していることも、仲間がもう戦えないと思われていることも。


「確かにアンタの厄介さは認めるわよ。纏う風は囮だった。あからさまな攻撃回数をちらつかせて、隙になると思わせることが目的よね。本命は、その後のカウンターだったんだから。随分、手慣れてるじゃない」


 風の残弾がなくなれば、カザツグの防御手段はその扇だけになる。三人いれば、その防御手段も手数で搔い潜れるだろう。誰もがその隙を突く。そうなるように立ち回るはずだ。

 だが実際は、その隙を突いてくる者を狩る動きを、カザツグはしていたのだ。こちらの読みを、さらに読まれていたということになる。


「でも、最後に勝つのはあたしたちだから」


「思い上がりも甚だしいよ。人間如きが風を攻略できるわけがない」


「どっちが思い上がってるか、教えてあげるわよ」


 飛ばされたジセイも再び戻ってきた。丈夫なその体には、切り傷の一つもない。どうやら彼に放った突風は、距離を離すためのものらしかった。


「シャーミア」


 乱れていた呼吸が、和らいでいた。まだ声は荒れているようだったが、それでもその声音は落ち着いている。


「何よ?」


 膝を折るルアトが立ち上がる。力を籠めたせいで痛ましい紅が飛沫を上げたが、シャーミアの目はただ彼の強く光る瞳を見つめていた。


「――僕の考えに、少し乗ってくれませんか?」

お読みいただきありがとうございました!


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!


していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ