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魔王の娘  作者: 秋草
第三章 廻槃福音のエニアグラム
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東都アウラム、ヒゼンの町③

一方その頃、シャーミアたちは――

「おーい。話聞いてきたぞ……、って、どうしたんだィ? 何か神妙な空気じゃねェの?」


 このヒゼンという町で何が起きているのか。何故活気が消えたのか、話しを聞きに行っていたアセビが戻って来て早々に首を傾げた。

 ぐるりとその場の面子を見渡せば、シャーミアにルアト、スズとカピオが微妙な空気を纏っている。


「シリウスさんとリリアちゃんがいねェな。まさか妖に連れてかれちまったか?」


 がははっ、と。冗談めかしてアセビは大笑するが、反して白ける空気にだんだんとその笑いを大人しくさせていった。


「……もしかして、マジかィ?」

「はい、大マジです」


 スズの首肯にアセビは溜息と共に額を押さえた。天を覆っているような、優れない空気が再びその場を満たす。


「何の妖に連れられたんだィ?」

「特徴からしてイッサですね。妖が発した疑問に答えることで、条件を満たして連れて行っちまう力を持ってます。恐らくシリウス殿もリリア殿もどこかに連れられて、閉じ込められちまってるでしょう」

「はァ……そうかィ、どうっすかねェ」


 困惑したようにアセビが頭を搔く。問題に対して答えを見出そうとしていた彼に、シャーミアが言葉を発した。


「大丈夫でしょ。リリア一人ならすぐにでも助けに行くけど、アイツもいるんだし」

「大丈夫ってねェ……。条件を満たした妖の力を破るのってのは、そう簡単なもんじゃねェ。対策を知ってねェとずっと出られねェってのもザラさ」

「そうかもしれないけど、シリウスがちゃんとその遊びに付き合ってくれるかしら? アイツ、意外と大人げないのよね」


 冷静に溜息を吐くシャーミアに、アセビも言葉を失った。まさか連れ去られて、助けに行こうともしないとは思わなかったのだろう。明らかに戸惑った様子で目を泳がせる。


「……なァ、一つ聞きてェんだけどよ、あんたたちにとって、シリウスさんは大事な人なんじゃねェのかィ?」


 旅の仲間にもかかわらず見捨てるのか、と。言外にそう尋ねている。シャーミアはそれに肩を竦めて返した。


「大事な人、と言えばそうだけど、なんかそんな簡単に表せる関係性じゃないのよね。それに、別に心配しなくても待ってれば平気な顔で返ってくるわよ」

「僕にとっては大切な人ですけどね。本当は今すぐにでも助けに向かいたいと、そう思ってます」

「だったらアンタ一人でも助けに行けばいいじゃない」

「僕だって、それができるならそうしてます。ただ残念ながら場所もわかりませんし、下手に動いてシリウス様の迷惑にはなりたくないんです。信頼して帰りを待つのも、従者としての務めでしょう?」

「はあ……、はいはい。勝手にやっててよね」


 大事な人がいなくなったのに悲惨な空気を纏わないルアトを、シャーミアは適当にあしらう。


「もうずっとこんな調子なんです。一応心配ではあるんですが」

「心配したって仕方ないわよ。もしマズい状況なら、ヌイが出てくるし」


 ヌイ? とアセビがそう尋ねるよりも前に、シャーミアの背から小さなシリウスが顔を覗かせた。


「お主とは初めましてだな、アセビ! 余はシリウスの分体にして、シャーミアの用心棒! 名をヌイという! よろしく頼む!」

「え、あ? あァ、よろしくなァ?」


 事態についていけていないアセビに、カピオが苦い笑いを浮かべて説明を付け加える。


「さっき、テンリョウさんが情報を訊きに行ってくれてる間に自己紹介してたんだ。お嬢ちゃんそっくりで、驚いたよ」

「へェ……、ますます、規格外な存在なんだねェ、シリウスさんは」


 アセビが物珍しげに宙に浮かぶヌイを眺め、ヌイはそれに満足そうに頷いている。


「余は、本体(シリウス)の情報を知っておるし、向こうも余の情報を知っておる。リリアの心配も、無用だ!」

「元気だねェ。でも、そういうことなら大丈夫か」


 余程彼女たちの方がシリウスについては詳しいはずだろう。そんな旅の仲間がそう断言するのならば、これ以上アセビが気にする必要はない、と。そう判断して、納得する。


「それで、ひとまずは状況の整理ってことで、テンリョウ殿のことを待ってたんです。何かわかりましたか?」

「ん、おう。酒屋のおやっさんが色々と教えてくれたぜィ。ついでに酒も買ってきた」


 嬉しそうに懐から酒瓶を取り出すアセビに、スズがジトリと睨みを利かせると、諦めたようにまた懐にしまった。

 そして、わざとらしく咳払いをした後、口を開いた。


「この町はいま、ハタン=ギョウヨウってヤツが支配してるらしくてさァ。そいつはどうやら、非道残忍らしくてねェ。少しでも逆らうヤツは問答無用で粛清するってんで、町はこんなにも大人しくなっちまってるらしい」

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