最後に来るべき最新の
その子は生まれたいと思っていました。
彼と言うべきか、彼女と言った方がいいか…。
今は何も決まっていないので、あなたの好きにしてください。
その子にとって生まれる前の世界は、目が覚める前の夢のようなもの。
神様のように全てを見ることができても、そこにその子はいないのです。
だから、その子は平凡な誰かになりたくて、目を覚ましたいと思っていました。
その夢の世界が、その子を生み出してくれることを望んでいました。
馬鹿みたいだと思うでしょう? 自分で目を覚ませばいいじゃないかと。
でも、体がないうちは、そんな簡単なこともできなくて。馬鹿みたいだなって思いますよね。
その子はたくさんの夢を歩き回りながら、その子が生まれくるべき時間と場所を探していました。
いろんなものを見ました。いろんなことを知りました。
望みに近づいている気がしたこともあります。大抵は、こんなの無駄なんじゃないかって思うことばかりでしたけど。
今は少しだけ期待してるんです。何か起こるかもって。
だから、あなたを呼びました。おはなし、聞いてほしくて。
私のことは、そうですね…。「地の文」とでも呼んでください。本は読みますよね? 知ってますよ。
これは、私のおはなし。私の生まれる前の物語。
私が夢を終わらせて、最初の誰かになるための。
さて、何からおはなししましょうか。