第2話
「それあっちいけって言われてるじゃないですか」
彼は、正直者だ
私の裏切られエピソードを話すと、全部マイナスな感想が返ってくる
気を使おうという気がさらさらない
でもそれが、私に妙に刺さった
まるで自分と会話してるかのようだった
本当は心の底で思っていたことを、酷すぎて蓋をして気付かないふりをしていたことを、いとも簡単にズバッと言われた
彼の反応が珍しかったからだろう
私はいろんなことを話した
こんな赤裸々な話をするもんじゃないとわかっていても、彼になら話してもいいと思った
なんと思われても、私が吐き出してしまいたかった
こんなに酷いエピソードを、酷いと心から言ってほしかったから
職場では足りないくらい、裏切られエピソードは止まらなかった
「呑みいきましょう!」
そう私が言ったのは、彼と話すのが盛り上がったからだ
それと同時に、この場ではどんどん酷いエピソードが出てきて、それしか話せないと思ったからだ
名誉挽回
良いエピソードもたくさんある
楽しかったことはなんですかと聞かれて、言葉に詰まって全然出てこなかったけど、ちゃんと考えれば出てくる
職場では全部マイナスエピソードに変換されてしまうから、別の場所でちゃんと話したい
楽しかったあのときを
私の人生にも、ちゃんと楽しい時間はあったのだと、知ってほしかった
もう1人の自分に、覚えていてほしいと思ったからかもしれない
彼は私ではないが、心の底の私に聞かせたかった